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その夜、私は急ぐ気持ちを抑えて夢の庭園に入った。


ヴィルはもう来ていた。

テーブルの上に、紅茶が二つ。いつも通りの夜。でも、何かが決定的に違っていた。


「……現実で、会ったな」と彼は言った。

「うん」

「声も、顔も——夢と同じだった」

「そうね」

「君は、「大聖女」ではなかった。ただの人間だった。外見も、立場も——私が想像していたより、ずっと小さかった」

「ひどい言い方ね」

「そうではない」とヴィルは言った。

「私が言いたいのは——それでも、君は誰よりも大きく見えた、ということだ」


私は何も言えなかった。


「……交渉の場を、君が作った。偽者の聖女が、百年の戦争を動かした」

「偽者が、ね」

「カオリ」


ヴィルが、私の名前を呼んだ。

現実の声と、全く同じ響きで。

「はやく夢の外で、また会いたい」


私の心臓が、今まで経験したことがない速さで跳ねた。


「……私も」

「それだけではなく」

「……え?」

「三ヶ月後の話し合いが無事終わったら——君に名前を呼んでほしい」

「ヴィル、って?」

「そうだ。現実で君に名前を呼ばれるのは、どんな心地だろう」


私は胸の奥が、じんと温かくなるのを感じた。

「……わかった。約束する」

「私も、約束する」

胸の中に、温かいものが溢れてきた。

「……ヴィル」

「何だ」

「夢の外でも、大好きよ」


彼は、ゆっくりと笑った。

庭園の端に広がっていた黒ずんだ影が、今夜は——ほとんど消えていた。

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