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三日後、私は一つの賭けに出た。


夢の庭園で、ヴィルに言った。

「交渉の場を、設けたいの。魔王軍の代表と、アルベニア王国の代表が——直接、話し合える場所を」

「……それが可能だと?」

「国が場所を用意する。中立地帯を。そこで、ただ話し合うだけ。剣も、魔法も、なし」

「連絡はどうするつもりだ。私たちしか知らない夢の中で伝えた、では人間は納得しないのではないか」


私はヴィルをまっすぐ見つめた。

「ヴィル——夢の外でも、つながれる方法はある?あなたの助けがいるわ」


彼は沈黙の後、言った。

「……一つ、方法がある」

「教えて」


「この庭園は——私が意図して作ったものではない」とヴィルは言った。

「前に少し聞いたわ。気づいたらあったって」 「そうだ。魔族の王の血には、限界に近づいた時に夢の中へ逃げ場を作る性質があると、後から知った。私が初めてここに来たのは、まだ若い頃だ。魔王としての重責を初めて担わされた夜だった」

「……それから、ずっと一人でいたの」

「そうだ。ここは私だけの場所のはずだった」


彼は少し間を置いた。

「だから——君が初めて来た夜は、意味がわからなかった」

「怖かった?見知らぬ人間が急に現れて」

「怖くはなかった。ただ、困惑した。そして、なぜかと考えた」

「……答えは出たの?」

「時間がかかったが、一つだけ」

ヴィルは静かに私を見た。

「魔族の夢の逃げ場は、主と同じ重さの孤独を持つ魂にだけ——扉を開くと言われている」

「……」

「君はあの頃、ひどく根を失った状態にあったのだろうと思う。どこにも繋がれていない魂は、引力に素直になる。私の庭園の扉が——君を引き寄せた」


私はしばらく黙って、自分の手のひらを見た。

あの頃の私。

名前も役割も全部借り物で、本当の自分がどこにいるかもわからなかった、あの頃の私が。

「じゃあ私が来られたのは、私があの頃ぼろぼろだったから?」

「……そう言うと、語弊がある」とヴィルは言った。

「孤独の重さが、同じでなければ扉は開かない。どれほど根を失っていても、孤独が軽ければ——届かない」

「それって」

「君の孤独が、私のそれと——同じ重さだった、ということだ」

私は何も言えなかった。 否定はできなかった。

でも、なんとも言えない気持ちが胸に広がった。

出会いが必然だったと知ることは——嬉しいような、切ないような。

二人ともそれほど孤独だったのか、と思うような。


「ヴィル」

「何だ」

「最初の夜から椅子が二つあったの、覚えてる?」

彼は少し目を見開いて、それから静かに言った。

「……覚えている」

「あれは、どういうこと?」

「わからない」とヴィルは言った。

「ただ——気づいた時には、そうなっていた」

少しの沈黙があった。


「君が来ることを、私の夢が知っていたのかもしれない」

その言葉を、私はしばらく胸の中で転がした。

夢が知っていた。 意識より深いところで、ずっと前から——誰かを待っていた。


「……ねえ」

「何だ」

「その話、もっと早く教えてくれればよかったのに」

「言えるか」とヴィルは言った。

その声が、少し低くなった。

「君に、「私と同じ重さの孤独を持っている」などと——どうやって言えばいいんだ」

私は、思わず笑ってしまった。

その気遣い方が、あまりにも彼らしかったから。


「魔族の王の血の言い伝えと同じく、王のみに伝わる古い術で——夢の中と現実でそれぞれ特定の術式を描くことで、相手に信号を送ることができるものがある」

「信号?」

「微弱な魔力の波動だ。それに乗せて、場所と日時を伝えることができる」

「やってみる」

「……古い術だ。誤ると反動が大きいんだ。危険ではないか」

「全部が危険よ。でも、やらなければもっと危険」


ヴィルはしばらく私を見て、それから静かに言った。

「……君と話していると、人間と魔族が会って話すことが、当たり前のことのように思えてくる」

「当たり前よ。話し合えるなら、話し合えばいい。それだけのことよ」

「……そうだな」


彼はゆっくりと立ち上がり、私の手を取った。

「術式を教えよう。現実で試してみるといい」


*


翌日、私は神殿の奥の祈りの間で、ヴィルに教わった術式を空中に描いた。

何が起きるかわからなかった。でも。


三日後、神殿の門前に、一人の人物が現れた。

黒いローブを纏い、顔に布を巻いた——明らかに人間ではない存在が、「ヴィルヘルム様より、使者として参った」と言った。

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