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巡業

 ゼライドの元から帰ってエメルとフィラと合流して、五百雀領へと帰ってきた。

 奏「ただいまぁ!やっぱり自宅が安心感半端無いね、そういえばエメルとフィラの部屋を案内してなかったね」

 涼「そうだったな、出発の時間だったからバタバタしてたからな、チョット狭いけど片付ければ寝る場所とちょっとした荷物は置けるからとりあえずココを使ってくれ」

 と荷物置き場になっていた二部屋に案内して軽く荷物を運び出す。

 エ「ありがとうございます、あとは二人で片付けるので大丈夫」

 陽「ご飯は食堂でみんなで食べるからね、あとは色々順番で家事を担当してもらうからね」

 フ「はい!」

 涼「じゃあ俺は早速ザバルさん所に行ってくるわ」

 奏「行ってら〜、私は組合に報告して報酬貰ってくるわ」

 陽「わかった、じゃあご飯作って待ってるよ、エメルとフィラも手伝ってね」

 エメルとフィラは頷く。

 

 涼はザバルの元を訪れていた、持ってきた素材が上手く適合するのかを判断してもらう為である。

 涼「こんにちはザバル師匠居ますか?」

 ザバルの弟子達が対応してきた。

 弟子「涼の兄さんじゃねぇですか、暫くぶりでやすね、旦那様は今日は調律してから工房に来る事になってやして、もうまもなく来ると思いやすよ!」

 涼「そうなんだ、じゃあ中で待たせてもらおうかな」

 工房に入って待つことにした涼の目の前にはエレキギターがズラッと並んでいた、奥の方にはドラムとベースもチラリと見えている。

 涼「えっ!?ちょっと作るの早くない?」

 弟子「へえ!あれから馬車馬のごとく働きやしたからね、そして涼の兄さんから話を聞いて試作機ではありやすが、遂に”ばってり”なる物の原型ができやした!」

 涼「マジかよ!人間電池卒業か!?何処にあるの?」

 すると入り口から見慣れた中年男性が入ってきた。

 ザ「みんなお疲れ!さあ今日も“ばってり”調整していくぞ!ん?なんだ涼!帰ってきてたんじゃな、ワシは遂に涼の説明通りに試作機を作る事ができたんじゃ、今から試運転じゃから見ていくといい!」

 ザバルはそう言うと工房の奥へと涼を連れて行く、するとちょっとした箪笥位ありそうな大きな水槽の様な容器に電極らしい板が何枚も入っていて上部には左右に二つの突起物が出ていて、そこから配線が伸びて電球へと繋がっていた。

 涼「まさにバッテリーだよ、流石師匠だね」

 ザ「うむ、まあまだ運転しとらんからなんとも言えんがな」

 弟子「材料探しが一番大変でやしたよ」

 涼「こんなに早く実現するとは思ってもみなかったよ、早速機能するか確認してみようよ」

 ザ「うむ、ではいくぞ」

 ザバルは電源を入れると、見事に電気がついたのだった!

 ザ「うおー!大発明じゃぞ!魔法や魔石を使わずに電気という新たな力を使えるようになったという事じゃからな、これは世紀の大発見じゃ!」

 涼「そうだよね、魔力に依存している世界に科学という概念が生まれた瞬間だもんな、なんか不味い事したかな」

 ザ「何をゆうとる、お主も体験してわかっとると思うが、電気を魔力で作り出すと言うのは難しい事なんじゃよ、魔石での成功例は一つもないしな、まあそもそも電気を生活に取り入れようなどと言う概念が無かった訳じゃから、この世界に新しい考え方を産んだ主を感謝こそすれ批判などする者はおらんじゃろ」

 涼「あまり俺の功績にしてほしくは無いんだよね、実際俺が産まれる前から存在していた動力源なわけで、発明したのは俺のいた世界の先人達であり俺はその知識と仕組みを勉強してきたから知っていただけで、発明者ではないんだから」

 ザ「お主の気持ちはわかったが、これを発表しないわけにはいかんな、この技術で生命が救われる者がいないとも限らんしな、また逆にこの技術を疎ましく思う輩もおるじゃろう、全ての者の信任を得る事は叶わんであろうが、ワシはこの技術を発表しなければならん責任があると技術者として思っておる、反面未来により良い影響があるのかはワシごときでは判断がつかんのも事実、じゃから世界の者に任せてみたいのじゃ」

 涼「わかった、何も考えずに教えちゃった俺も責任あるし師匠に任せるよ」

 ザ「まああれだ、あんまり難しく考えるでない、なるようになるじゃろ」

 涼はザバルの短絡的な考えに不安を覚えたが、深くは考えないようにした。

 涼「さて、俺が今日来た本題なんだけど、コレが例の素材なんだけど、どうかな?」

 ザ「む?コレは!!流石涼じゃな、こんなに早く持ってくるとは思ってなかったぞ、早速今から取り掛かるとするかの、三日位時間を貰えるか?」

 涼「わかった、急いではいないから大丈夫だよ」

 ザ「では作業場へ行ってくる、またな」

 ザバルは忙しなく作業場へ消えていった。

 弟子「あー、ああなると集中して何を話し掛けても上の空になりやすんで、終わった頃にきてくだせい」

 涼は頷き工房をあとにした。


 陽「エメルこの鍋見てて、フィラはこの野菜切ってくれるかな」

 陽葵は台所を駆け回っていた。

 奏「陽葵ぃ〜、薪割り終わったよー!」

 陽「ありがとう奏!じゃあそのままお風呂沸かしちゃう?」

 奏「そうだね、そろそろ涼も帰って来るだろうしいいんじゃない?」

 水を張り薪を焚べる奏、すると見知らぬ男が敷地内に入って来た。

 商会の下っ端「こんにちは!こちらはワイルドラビットの方達のお宅だと伺ったんやけど、ちゃいまっか?あっワテは銀次いいますねん、代表いてますやろか?」

 奏は少し警戒しながら応える。

 奏「話しがあるならウチがきくけど?」

 銀「あちゃあ、警戒されてもうたか、ワシそんなに怪しいやろか?ショクやでホンマ、こんなエエ男他におらんよ?ホンマに!しかも丸腰やねんからそんなに警戒せんでもええんとちゃうやろか?落ち込むでホンマに」

 奏は久しぶりに関西弁で捲し立てられ思わず笑ってしまった。

 奏「あはははは、お兄さんめっちゃ面白いね、まあそうね、武器も無さそうだしちゃんと話し聞くよ、で?私達になんの用なの?」

 銀「ホンマに!?はぁこれで兄さんにどつかれんで済みそうやわ、ほな早速本題やねんけどなんや喉カラッカラやねん、茶もらえんやろか?」

 奏「自分から茶よこせとかなかなか図太いな、やっぱり話し聞くの止めようかな」

 銀「ちょっ!待ってぇな、それはホンマに困ってまうから考え直してくれへんやろか、土下座ならいくらでもするさかい、話しだけでも聞いたってくれへんやろか」

 銀次はすぐさま土下座の体勢をとる。

 奏「ふぅん、これ以上は面倒くさそうだからとりあえず付いてきて」

 奏は振り返り客間へと向かう、銀次も立ち上がり大人しくついて行き客間の椅子へ腰掛ける、そして奏は陽葵の所へ話を通しに行く。

 奏「と言う事なんだけど、どう思う?」

 陽「う〜ん、私達も強くなってるし問題無いんじゃないかな?」

 奏「それはそうなんだけど、涼に怒られないかなと」

 陽「あー、そうだよね、でもあの銀次って人からは悪意みたいなのは感じないんだよね、なのでとりあえず話はしよう!変な話なら断ればいいし、力づくなら二人で対処すれば大丈夫だと思うし、まあお茶淹れるからそれ持って二人で行ってみよう」

 奏「わかった、じゃあ警戒しつついってみるか」

 二人はお茶と陽葵手作りのお菓子をお盆に載せて客間へと入る。

 奏「待たせちゃったかな?とりあえず私が奏でこっちが陽葵、ご所望のお茶と待たせたお詫びにお茶菓子でもどうぞ」

 銀「これはこれはご丁寧にありがとう、もう喉が萎れて喋られんようになってまう所やってん、では遠慮のう頂きまっせ!」

 銀次はお茶とお菓子を口にすると目を見開いた!

 銀「なんやこれは!こないな複雑な味はじめてやで、うちの商会でもこんなん取り扱ったことあらへんで、こりゃ本題と同じ位銭が動くんとちゃいまっか」

 奏「そんな事より本題は?」

 銀「これは失礼。うちの商会でワイルドラビットのみなさんの興行を後援させてもろて、出資と営業も任せて欲しいねん」

 陽「マネジメント契約したいって事かな?」

 銀「マネジメントってのはわからへんけど、キチンと契約書を交わしておたくらを売り込んで、会場の交渉から準備、宣伝から衣装、楽器、全てを商会に任せてもろおて、ワイルドラビットのみなさんには煩わしい事はせんで巡業を楽しんで欲しいんですわ」

 陽「なるほどね、銀次さんっていいましたっけ?銀次さんの所の商会で芸能事務所の分野を担いたいって話だよね?ノルマ……んーと期間を決められた仕事とかは出来ませんよ?」

 銀「みなさんは楽しんで演奏してくれたらそれでええですわ、どうか前向きに検討してもらえへんでっしゃろか?」

 奏「うん、かなり条件はイイと思うんだけど、相談しなきゃいけない人がいるから即答はできないんだよね、すぐ返事欲しい系?」

 銀「いやいや、暫く宿にいてますさかい皆さんで検討してもろてからでええですよ?」

 奏「そっか、じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな、用事はそれだけ?」

 銀「もう一個ええですか?」

 陽「どうぞ」

 銀「このお茶菓子も商会で扱わせてもろてもええでっか?」

 奏「流石商売人だね、それも検討させてもらうわ」

 銀「ホンマでっか、そしたら今日はこれくらいでおいとまさせてもらいますわ、色良い返事まってますわ」

 陽「連絡は宿にすれば良いですか?」

 銀「たのんます、ほな失礼しますわ」

 銀次は一礼して帰って行った。

 奏「なんだか抜け目の無い男だったね」

 陽「うん、一見ふざけてる様に見えてこっちを観察してる感じがしてたよ、こっちがお見通しだと見るや否や素直に交渉してきたみたいだからよかったけど、修行前だったら普通に騙されてたかもね」

 奏「そうだね、今なら手品師が何かしても見破れる位の感覚が備わってるからね、でもおそらくあの男は強いよ、これからは気を付けないと」

 陽「そうだね、まああとは涼と話し合ってどうするか決めれば良いでしょ」

 陽葵はテーブルを片付けながら部屋をあとにする。

 

 涼「ただいま〜、??なんかあった?」

 なんとなく陽葵と奏がいつもと違う雰囲気だったので聞いてみた。

 奏「うん、まあ深刻な話じゃ無いから後で話すわ、それよりお腹空いたから皆んなでご飯にしよ!エメルとフィラも座って!」

 涼「………」

 涼も席に着く。

 陽「うちでは食べる前にいただきますってするからエメルとフィラも真似てみてね、それじゃ、いただきます!」

 皆んな「いただきます!」

 一旦皆んなで楽しい食卓を囲む、食事終わりに陽葵、奏、涼の三人でまずは話し合い。

 涼「で?何があったんだ?」

 奏が経緯を涼へ話した。

 涼「なるほど、契約諸々はまだなんだな、少しザバルさんとも話してみるよ、まあ悪い話では無いみたいだけどな」

 陽「うん、正直デメリットは感じなかったよ」

 奏「ウチは上手い話には裏があるって考えちゃうタイプだから少し怪しんでるけどね、で?涼は用事は済んだの?」

 涼「ああ、そうだな、素材に関しては少し時間が欲しいって言われたけど、張り切ってたから大丈夫そうだったよ、それとは別に朗報があってな、どうやら電気人間は卒業かもしれないってな」

 奏「ついに完成したんだ、バッテリーが」

 陽「前からゆってたヤツだね、こんなに早くできるなんてザバルさんって凄い人すぎない?」

 涼「正直俺も驚いてるよ、説明だけですぐ試作品を完成させちまうんだから、凄え人だよまったく」

 そんな話をしながら夜は更けていく。


 涼はザバルへ相談しに出掛けて帰ってきた。

 涼「ただいま、早速相談してきたぞ」

 奏「おつかれ、で?どうだった?」

 涼「ああ、契約書の注意点と大体の相場みたいなのを聞いてきたから、それだけ気を付けてれば平気だろうって言ってたよ」

 奏「概ね悪く無い条件だったって事かな」

 涼「まあそうゆうことだな」

 陽「じゃあエメルとフィラにも説明してから銀次さんに連絡してみようか」

 全員でこれからの事を話し合い銀次へ連絡して契約をかわし正式にウァラクラ商会所属のアーティストとなり、定期的に各地で演奏会をする巡業する事となった。

 

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