影の6事 弥栄光圀(やさかみつくに)
時頼雅遊丸は塵邪と配下の者と共にとある屋敷の庭にて膝を付き頭を垂れていた。
光「フォッフォッフォ、主席の獅天流菜颯斗殿には申し訳ないが儂のほうで対処させてもらおうかの、して首尾はどうじゃ時頼よ」
雅「はっ!滞りなく進めておりまする」
光「ふむ、大義であった、約束の褒美を取らせよう、時頼、塵邪下がってよいぞ」
雅遊丸と塵邪は立ち上がり一礼をしてその場を去った。
光「いるか?」
天井から黒装束の顔を覆い隠した者が降りてきた。
忍びの者「はっ!」
光「わかっておるの?」
忍びの者「御意!」
光圀は塵邪の抹殺命令を出していた、孤児として拾われた塵邪には身体の弱い妹がいて、妹の面倒を診る代わりに塵邪が任務をこなすと言う約束の元、塵邪は騙し討ちまがいの任務を多々こなしてきたのだが、光圀は塵邪の様子からこの先の任務つかせた場合の成功率は低くなるであろうと直感で理解していた、その為抹殺命令を暗殺専門の忍びに命令したのだった。
光「さて、儂は龍の血の力を見に行くかの」
リメルアが産まれた直後に誘拐したのは光圀の指示だったようだった。
塵「………病院へ行くので、ここで失礼します」
塵邪は光圀が所有する町の病院へと歩を進めていた。
雅「落ち込んでいらっしゃる所酷かと存じまするが、早く妹さんとお逃げになられた方がよろしいかと存じます」
塵「?」
塵邪は雅遊丸の言っている意味がいまいちわからなかった。
雅「光圀様は貴方の事を始末するつもりでおりますので、お早目の逃亡をお勧め致しまする」
塵「何故忠告を?」
塵邪は雅遊丸の真意を計りかねていた。
雅「ただ無駄な殺生が嫌いなだけでござります、急いだ方が宜しいかと」
五人の影に囲まれた。
雅「暗部の者が何用で御座りましょうか?」
雅遊丸は素知らぬフリをしながら問いかける。
五人は無言で背中の刀を抜いて構えた。
雅「抜いた意味は言わずとも理解してござりますね」
雅遊丸は素早く印を結び分身体が身構える。
雅「参る!」
三体の分身体と一緒に駆け出しクナイで応戦を始める。残された塵邪も最後の一人と対峙していた。
塵「まさかもう用済みだとは思ってなかったんですけど、あからさまに処分しにきてるからには冗談ではないのでしょうね」
手裏剣やクナイなどが飛び交い体術の応酬で暫くは拮抗していた、相手も暗部なだけありかなりの手練れであった。
雅「塵邪そちらは頼み申す」
実力は拮抗していたが、抜かれるとしたら塵邪の所である事は明白であったが、雅遊丸が檄を飛ばした。
リメルアは立ったまま磔にされていた、その腕からは管が伸び、管の中には血が流れていた。
リ「う、う〜ん」
光「目醒めたようじゃな、ようやく我が一族が長年追い求めてきた悲願が成就する瞬間が参ったようじゃな、龍の中でも上位種の真龍の血を取り込めば人種であっても長命種となり、その純粋な力も上がり、魔法の力も上がるはずだと言い伝えられてきたのじゃ、儂がこの大和國を統べる時がもう間も無く訪れるのだ!フォーフォッフォッフォッフォッフォッ」
リ「産まれて間もない時に攫ったのもお爺ちゃんの差し金?」
光「ふむ、そうじゃの、もう十数年前から産まれ落ちるその時を待っておったからのう、そして今回はこの世界に降り立った強者の気配の者と一緒であった為、ある者から制限を受けておった訳じゃが、たまたま我が組織の息のかかった者が懐に入り込んだと聞き及んだ時は運命を感じたのじゃよ、そしてその絶好の機会を逃す訳にはいかんかったから強引に作戦を強行したのじゃ、結果、人智を超えた力が儂の目前に!!」
リ「そっ!お爺ちゃんの研究がなんだか知らないけど僕達の細胞はそんなに単純じゃないけど?それより兄ちゃんは何処?」
光「諦めさせようとしておるのか?まあよいわい、ヌシの連れは別の町へ監禁させておる、ヌシら上位の存在は空間断絶系の魔道具を使えば七割の能力を封じられる事は確証済であるからの」
リ「目醒めてからなかなか力が入らないから可笑しいなとは思ってたけど、なるほどそう言う事か、龍化は逆に悪手みたいだね」
空間断絶系の魔道具の効果で精霊はもちろん魔脈から流れ出る魔素なども遮断される為龍化の力の源が断絶した空間に残る僅かな力で龍化していた為それ以上の力が発揮できないでいた。
蒼呀は薄暗い岩をくりぬいたような牢屋のような場所で目が覚めていた、傷は治療されていた。
蒼「ここは何処なんだ」
牢番の男「おっ、目覚めたかい、そこに水と一緒に食いもん置いてあるから喰いな」
蒼「貴方は誰なんだ?リメルアと塵邪が見当たらないが」
牢番の男「オイラは武史ってんだ、アンタの連れについてはオイラも知らん、てゆうか質問されてもなんもわからんぞ」
蒼「そうか………」
まず魔法を試したが発動しなかったが、蒼呀の瞳には空間の綻びが見えていた、魔素を遮断した事により純粋な混沌龍の因子が身体の全面に表れ皮膚も所々鈍色の鱗が見て取れる、その瞳も縦長の瞳孔であった。
蒼「魔道具があるからと完全に俺の事放置だな、拘束も見張も適当な感じだし、なんなら見張は隣の部屋で談笑してるしな、まあとりあえずココが気になるな」
蒼呀は空間の綻びに向かって歩き出し、右手で触れてみるとその綻びが広がって空間を遮断していた魔道具が飛び散り機能を失った。
蒼「解除出来たみたいだな、じゃあリメルアを探しに行くか」
見張りに悟られない様部屋を出ていく。
蒼「警備もザルだな、余程あの魔道具が信頼できるのか安心しすぎだろ?おかげで脱出できたわけだが、さてリメルアはどこだ」
監禁されていた部屋のあった建物から出てきたところに、争っている集団を見つけた、どうやら塵邪と俺達を拘束しにきた忍者とその相手も忍者みたいな奴等だった。
蒼「?味方じゃないのか?なんにせよ塵邪にも聞きたい事があるし、不意打ちじゃなきゃやられないぞ!あの忍者にリメルアの居場所を吐かせないとな」
蒼呀は走り出し雅遊丸と塵邪と敵対している忍者を背後から攻撃していく。
蒼「忍びが卑怯などとは言わないよな」
雅「これはこれは、お久しぶりでごさりまする、聞きたい事は心得ておりまする故、今は何卒!」
蒼呀は静かに頷き敵対している忍びに対峙する。
塵「あの…蒼呀さん………ごめんなさい」
蒼「なんか理由があるんだろ?あとで聞かせろよな」
笑顔で答える蒼呀、その瞬間敵が動き出すと同時に
蒼「烈空次元斬」
手刀で横凪一閃し敵対していた全員の胴が真っ二つになり、その部分が横長に宇宙が見えているようであった。
蒼「なんだこの力は」
塵「なんですかその異様な力は、その姿のせいですか?」
塵邪は蒼呀の身体が鈍色の鱗が所々見えているのと瞳が金色で縦長の瞳孔であることが要因であろうと察していた。
蒼「そうかも知れないな」
烈空次元斬で宇宙化した空間が徐々に元の景色に戻っていく。
蒼「まあそれよりもまずはリメルアの居る場所を教えてくれ」
雅「今貴方と敵対したならば勝てますまい、相棒のお嬢様はあちらの一番高い建物にいらっしゃいまする、弥栄光圀とその配下の方々が待ち受けておりまするが、お一人で向われるおつもりで?」
蒼「ありがとう、まあ何とかなるんじゃないかな」 すぐさま目標の建物に向かい走り出しながら塵邪に声を掛ける。
蒼「またな塵邪!なんか解決しなきゃいけないことがあるんだろ?お前も急げよ!」
塵邪もその言葉を聴き思い出したように顔付きが変わる。
塵「はい!許されようとは思ってませんがあとで必ず説明します!」
塵邪も発言のあとすぐさま逆方向へと走り出す!
雅「ふむ、放って置く事もよいでしょうが、助けられてそれを知らんふりと言うのも後味が悪うございますね、塵邪の手助けでも致しましょうか」
雅遊丸も塵邪の後を追い走り出す!
病院に到着した塵邪は妹のいる病室へと飛んでいく、それを見ていた雅遊丸も続いて飛ぶ。
塵「紗莉那無事か!」
紗「えっ?!どうしたの?お兄ちゃん」
病室にいた宇野紗莉那が塵邪に驚き叫んだ。
塵「狙われる立場になっちゃったからここを出なきゃいけなくなったんだ、必要な物だけ持って直ぐ脱出するぞ」
雅「早めに支度したほうが宜しいでございますね」
塵「何故貴方が?」
雅「恩知らずとはなりたくはございりませんので」
塵邪は紗莉那を抱えて廊下を走り出す、殿を雅遊丸が警戒しながら付き従う、すると二名の光圀の部下の冒険者が前から武器を構え襲ってきたが雅遊丸が素早く無力化する、雅遊丸の敵ではなかった。
雅「意外と本気で消しにきてござりませぬな」
敵の強さに拍子抜けしたのかボソリと呟く。
塵「いい事じゃないですか、急ぎましょう!」
塵邪の言葉に頷き再び走り出す!病院を抜けて町の出口に到着した!
塵「脱出出来ましたね、ありがとうございました、僕は隠れ家に向かいます!お互い無事であればまた何処かで出会えるでしょう、では」
雅「無事でいられる確率は貴方のほうが低いでござりまするよ?健闘を祈っておりまする」
雅遊丸は笑いながら塵邪を煽りながら姿が消えた、塵邪も自分しか知らない隠れ家へと走り出した。
蒼呀は町の中央に聳える弥栄楼へと到着していた。その門の前には二名の門番が待ち構えていた。
蒼「そこを通してもらおうか」
門番一「そう言われてはいそうですかと通すとおもうのか?」
門番二「んな阿保な質問しとる奴とまともに喋ったってあかんでホンマ、ちゃっちゃと終いにしたらな」
門番二の姿が一瞬で消えて蒼呀の真後ろに現れ、蒼呀に向けて刀を振り下ろしていた。
蒼「遅いな」
蒼呀は振り向きもせず右の人差し指と中指で刀を白刃どりしていた。
門番二「バケモンが!」
刃は動かず蒼呀が振り払うと門番二は刀をもっていられない位振り回されて隣の建物の壁へ激突して意識を失った。
門番一「隙ができるかもと伺っていたが格が違うようだな、だがこちらも仕事だからな全力で挑ませて貰おう!」
門番一は小刀を二本両手に持ち腰を落として構えたが、蒼呀はただ立っていた。
蒼「遊んでる暇は無いから終わらせるよ」
蒼呀の姿が消えて門番一の目の前に現れ腹部を蹴り上げた!
門番一「ぐはっっ!!」
門番一は護っていた門へぶつかり門が開く!
蒼「リメルアの気配を感じるけど弱ってるのか?いつもの雰囲気じゃないな、急がなきゃ」
蒼呀はリメルアの気配がするほうへ走り出した、途中刺客に襲われたが敵ではなかった。
光圀は研究していた規定の量の龍の血液を目の前にしていた。
光「フォッフォッフォ、さあ新しい種族の誕生の瞬間であるぞ!いよいよ永年追い求めてきた瞬間が今まさに辿り着く時が来た」
光圀はリメルアの血の入ったグラスを手に取り一気に飲み干す!!
光「ごくっ、ごくっ、ごくっ」
パリーン!
光「ぐうっ、力が漲る!若かりし頃、否!そんなものの何十倍何百倍の力が……ぐ、ぐぁ」
光圀は膝をつく。
部下「光圀様!大丈夫ですか?」
部下が光圀へ駆け寄るが光圀が部下に襲いかかる!
光「グオォ」
部下「ひっ!化け物!た、助け…ぎゃあぁぁあ」
光圀の姿が龍人形態に変わっていくが自我はなく部下を食い殺した!
光「ウォォォォオオオ」
咆哮で建物が揺れていた!
リ「まあそうなるよね、ついでに魔道具壊してくれないかな?」
光圀は外からくる強者の気配に気が付き不気味な笑みを浮かべているようであった、リメルアは魔道具の範囲内にいる為光圀も反応しなかった、リメルアからも外から来る蒼呀の気配はわからずにいた、しかし蒼呀はリメルアの血の気配を感じていた為真っ直ぐ向かってきていた。
蒼「ここだな!何か異様な雰囲気もあるが」
蒼呀は最期の扉を開く!
光「オォォォオン」
蒼呀の姿を捉えた瞬間光圀が突進してくる。
蒼「やるってんなら容赦はしねぇぞ」
ガッツリ首相撲の状態となり地面と建物が激しく揺れる!
光「グァァァァァア」
光圀が口を開き紫色の光の玉を集束させていく!
蒼「おいおい、そんな力の塊放ったら町が半分無くなるぞ!」
首相撲をしている手に意識を集中する。
蒼「次元超重力黒虚」
光圀の顔の左に小さい黒い球体が出来、徐々に大きくなっていき周りの空間が歪みだし吸い込まれていく、術者である蒼呀も引き寄せられる、光圀の顔がとうとう穴へ吸われ初め、蒼呀を掴んでいた手の力が緩んだ、その隙を見逃さず素早く離脱する蒼呀!
光「ぐぅ…オォォ」
踏ん張りが効かず身体が浮き出し、溜め込んだ紫色の玉を蒼呀に向けている、その目はうすら笑いを浮かべているようだった、次の瞬間蒼呀に向けて放たれる!
光「ぐぉお…………」
光圀は黒い球に吸い込まれていった、しかし紫色の玉は吸われる力に反発して蒼呀へと加速していく!蒼呀は紫色の玉を見ていたが視界の端にリメルアを確認して安心していた、光圀を吸い込んだ黒い玉はそのまま消滅した!
蒼「ふぅ、なんとかしてまたリメルアと冒険しなきゃなんねぇんだ、やってやるさ!」
蒼呀はさっきの魔法で効かなかったので魔法では対抗出来ないと直感で感じていた、だからと言って蒼呀が大きな口を開けても同じようなエネルギー弾のようなものは出せそうになかった、なので力業でなんとかしようと考えていた、両手を広げて前に突き出し受け止める!
蒼「くっ、イギギギギ!」
鱗が生えて強化されているであろう蒼呀の手から血が吹き出す!
蒼「くそ!小さいのに凄いエネルギーだな!どうする、避ければ罪の無い人が沢山死ぬことになる!」
衝撃が強くなり腕からも出血が飛び散る!
蒼「ぐあっ!くそ!どうする、どうする!」
血を噴き出しながら考えを張り巡らせる!
蒼「くそぉぉお!上ならどうだ!!」
ありったけの力を込めて上に向けて押し出す!
蒼「ゔおおおお!!飛んでけぇぇぇぇぇえ!!」
少しづつ蒼呀の手を離れて逆へ加速していく!
蒼「くあっ!はぁはぁはぁ」
天井を突き破りどんどん加速し弥栄楼が砕けて行く!
蒼「ヤバいな!リメルアと脱出しないと生き埋めだな」
蒼呀は走って魔道具を握り潰し弱っているリメルアを抱えて急いで脱出した!
リ「やあ、兄ちゃん、きてくれると思ってたよ」
リメルアは堕ちる前に蒼呀へニヤケながら感謝して瞳を閉じた。
蒼「これはフィルメイアの所へ一度戻らなきゃ駄目だな」
蒼呀自身も龍人化の事を聞きたかったので一度フィルメイアと出会った山へと向かう事にしたのだった。




