まさかの…
蒼呀とリメルアと塵邪は首都武尊にて着々と冒険者としての実績を上げて行った、一方でその力を我が物にせんとする権力者達のオドロオドロしい誘いにウンザリしていた。
塵「次から次へと毎日相手にしてるのも疲れてきちゃいましたね」
リ「うん、人間ってどうして自分が!自分が!って欲を制御できないんだろ?」
蒼「そうだな、弱い存在だからだろうな、弱いからこそ集団で身を寄せて護っているのだろう、その集団の上位者は恩恵があり、まるで狭い壺の中で蠢く毒蛇の如く獲物を見定めているのだろう、その獲物こそ俺達って訳だ」
リ「ふ〜ん、人間って大変なんだね、僕達も一応序列はあるけどだからと言って従わせるなんて事も無いし上位者が護らなければならないなんて事もないからね、ただ序列の低い者が好んで従っている事はあるけどね」
蒼「そうだな、前の世界でも嫌って程欲望渦巻いている世の中を見てきたからな、口蜜腹剣の如しだな」
リ「何それ?」
蒼「ん?ああ、口では心地いい事を言いながら心では悪意のある人間の事だな、あまり関わりを持ちたく無い人間ではある」
リ「ふぅ〜ん、まぁ僕達に害を為すなら焼き尽くすしかないけどね」
笑顔で宣言するリメルア。
蒼「冗談に聞こえないから怖いな、まあ政治に関わる気がないから放置でいいだろ、それよりダンジョン行ってきたみたいだな」
塵「ええ、また行くと思ってたので準備は万全ですよ」
蒼「流石塵邪だな、何かに集中した方が余計なこと考えなくて済むから早速行こうか」
三人は早速辻巳ヶ丘へと向かい中へ進んで行く。
蒼「ははっ!身体が軽くて魔獣が遅く感じるな」
十階層まで駆け足で一気に降りてきた。
リ「兄ちゃんお腹が空いてきたから休憩しよ?」
蒼「ああ、そうだな夢中になりすぎてたな、ゴメンゴメン!」
塵邪の準備した軽食を摂りゆっくりとしていると、何者かの気配が近づくのを感じ取った。
蒼「二人とも警戒してくれ」
影の者「フフフ流石でごさいますね、三ツ矢が居なくなったので油断して影隠蔽が甘かったでしょうか、私もまだまだですね」
黒い頭巾で顔を覆い背中に刀を背負った忍者のような格好をした男が目の前の空間にボンヤリと存在している。
蒼「なんだかハッキリ見えないな、俺の目がおかしいのか?」
リ「いや、僕もしっかり見てないと見失いそうだよ、それより確実に僕達が標的になってるから気を付けて」
塵邪は足手纏いになる事を避ける為後方へ下がっている。
蒼「お前は何者で俺達に何の用だ?」
影の者「其方らの生命を貰いに参った時頼雅遊丸と申す者、この世の最期に出会った人間になりまする」
雅遊丸が喋り終えたと同時にクナイが二本蒼呀とリメルアに向けて飛んできたが、雅遊丸は既にそこには居なかった。
蒼「リメルア気を付けろよ、かなりの敵だぞ」
リ「わかったよ」
二人は左右に別れた、次の瞬間火花が散る!
ギィイィィィインっ!
蒼呀の刀から刃が交わる音が響く。
蒼「くっ!オラァ!!」
鍔迫り合いに発展したが蒼呀が押し返す!そこへリメルアが背後から蹴りを雅遊丸の頭部へ繰り出すが空をきる。
リ「ありゃ、避けられちゃった」
すかさず蒼呀が時空魔法を詠唱した。
蒼「空間演算」
蒼呀の目には相手の微細な動きからかなりの確率で相手の動きの先読みが可能になる魔法を発動した。
雅「なるほど、あの方の仰った通りなかなかの強者であるな、しかしその程度で勝ったと思っておるならば少々的外れであるな」
雅遊丸は素早く印を結ぶ。
雅「分身の術」
雅遊丸が四人になる。
リ「二人は僕に任せてよ」
リメルアの身体が人から龍になり始める、今までは尻尾以外は人間となんら変わらない容姿であったが、肌は赤い鱗が生えており、手は爪が伸び頭には二本のツノも生えていた。目で追えない速度で分身体の雅遊丸の一人の頭を鷲掴みにして地に頭を伏していた。
雅「まさかいきなりやられるとはかなりの手練れであったか」
もう一人の雅遊丸がリメルアへ太刀の一閃を繰り出しリメルアがたまらす離して後退した。
リ「うはっ今の一太刀は危なかったね、その刀の特性かな?」
雅「ほう、今のを躱すか龍の硬い鱗をも貫通する数少ない素材のうちの一つである銀虎の剛爪を鍛え上げた業物、銀氷煌の一撃を」
リ「背中がゾクゾクしたからね、他の分身はその刀持ってないって事は本物は君なのかな、だとしたら君を倒せば良いって事かな」
雅「………」
雅遊丸は二人がかりでリメルアに襲いかかった。
蒼呀は魔法の補助と巌に鍛えて貰っていたので対応できていた。
蒼「まさか巌師匠並に強い人間がいるとはね、俺も強くなれたと思ったけどやっぱり上には上が居るって事か」
雅「其方らの強さは事前に調べたはずでありますが、実際の戦闘の実力はかなりの齟齬がありますね、それともたった数日でお変わりになられたとでも?」
雅遊丸二人を相手どり躱しながら虚実織り交ぜた攻撃で牽制する蒼呀、その戦いは拮抗しているかに見えていたが、突然その時が訪れる。
蒼「ん?何かがおかしい、思考が遅れる?身体が考えとズレる?なんだ?」
リ「兄ちゃん気を付けて!気付くの遅くて僕もだいぶ吸ったけど、何かがこの空間に蔓延してるよ!」
雅「ようやく効いてきたようですな、即効性がこのように時間がかかるとは予期できませんでしたが、流石と言わざるを得ませぬ」
蒼「ぐう!!塵邪何故!」
背後から塵邪に小刀で脇腹を刺されていた。
塵「ようやく隙をみせて貰えましたね、急所は外していますが刃には麻痺と睡眠の薬品を塗ってありますのでそろそろ眠気に襲われますが、殺害が目的では無いので安心して意識を手放して下さい。目覚めの時まで一時お別れです、おやすみなさい」
その言葉を最期に意識を失う蒼呀、リメルアは蒼呀が刺された瞬間に全力で蒼呀の元へ走り出したが、雅遊丸の魔道具に捕まってしまった。
雅「戦いながら仕掛けさせて頂きました、無事冷静さを欠いて罠へ入っていただいて助かり申した、その縛鎖拘束魔道具は今の貴女では解けませぬよ?」
リ「くっ!さっきから姑息な手ばかり使って僕達を捕まえて一体何が目的なんだ!」
雅「我々影の者には姑息と言われる事は賞賛と同義でありまする故、このまま最後の仕上げと参りましょう」
雅遊丸は懐から液体の入った筒を取り出しリメルアへと振りかける、すると龍化が解けて尻尾以外は完全に人型形態へとなっていた。
リ「くそ…眠気が………」
リメルアの耐性が人型になり低下した為意識が保てず落ちてしまった。
雅「さて塵邪拘束具を念入りに装着して給へ、後は我が配下の者に任せて我々は参りましょう」
いつの間にか雅遊丸の配下らしき者達が複数人蒼呀とリメルアの周りに集まり担ぎ出している。
二人は意識を失い忍びの集団に攫われてしまったのだった。




