不知火
マリノア山脈を見渡せる丘に司と凌久は立っていた。
十「お前ら!いつまでもそんな目立つ場所にいっと見つかっちまうからそろそろこっちにこいよぉ」
十蔵と刹那、琴音とルルミラが岩陰から様子を見ていた。
琴「まったく、強さを手に入れても精神はまだまだ童だえ」
ル「まあまあ、手練れの者でないと二人がそこにいると認識しずらいはずですから」
司と凌久が十蔵達の元に駆け寄る。
司「師匠、二つ目の山の頂上付近に三人見張りが見えたから、入り口はその辺りじゃないかな」
凌「俺もそこが怪しいと思う、沙月さんの資料の情報とも一致してる感じだし」
十「まあそうだな、ここから行くには正面突破しかねぇみてぇだな、入り口だと思われる山の後ろは更に高い山が並んでるからなぁ、一応作戦としてはルルミラに狙撃して貰いながら制圧しようと思ってんけど、多分ワラワラと出てくる可能性が高けぇからよぉ、俺と司と凌久でルルミラは援護、琴音の嬢ちゃんは刹那を頼みてぇ、正直言って前衛だけで制圧可能だと思ってっけど、司、凌久の二人は油断すんなよ!」
司「師匠、俺達もいつまでもお荷物じゃないから安心してよ」
凌「司の言う通りだよ、暴れたくてウズウズしてるんだから」
十「そりゃあ失礼しましたっと、まあそれぞれ己の役割を果たしてくれりゃ俺がなんとかすっから宜しく頼むぜ」
それぞれが黙って頷き、ルルミラは配置につくため狙撃しやすい場所へと移動していった。
凌「さて俺達も行こう」
司「そうだな、琴音、行ってくる」
琴「うむ、油断するなえ」
凌「刹那ちゃんを頼んだよ、琴音」
琴「誰だと思ってるんだえ?こちらは心配せんでもよろしいえ、はよ終いにしてきんしゃい」
刹「その刀の真の力を打った本人の代わりに見届けにきたんだから、死んだら許さないんだから」
司「ああ」
凌「任せてよ、朱音も温度上がってきてるからね」
十「ルルミラが配置についたみてぇだから行くぜ!」
司と凌久は頷き合い走り出す、そのすぐ後ろを十蔵がついて行く。
琴「隠遁結界」
三人が飛び出すと同時に身を隠す為の結界を展開する。
十「そろそろ狙撃が始まるから、始まったら司は右手凌久は左手に別れろ!正面入り口からくるやつは俺がヤルから、もし確認出来てない場所から敵が現れたらお前らに任せるからよ、頼むぜお前ら!」
凌「今までに無い位師匠に信頼されてる感じして嬉しいな」
司「ああ、それだけ俺達も修行してきたからな、信頼を裏切らない働きをするだけだ」
走りながら喋っていると矢が同時に三本凄い速さで頭上を通過した、のち二本は敵の側頭部を貫くが、一本は躱され頬を掠める。
矢が掠めた獣人「ぐおぉぉぉお!」
空気が震える程の雄叫びをあげる、そして両手で扱うような大鉈を構えた!
左右に展開していた司と凌久がその大柄な獣人へ向かいながら変身して刀を抜く!
司「凌久!合わせろよ?」
凌「司がな(笑)」
大柄な獣人は大鉈を横凪しながら司に狙いをつけて回転しながら斜めに斬りかかる!
凌「俺は眼中に無いって事かよ」
凌久は初撃の横凪を潜りながら相手が司へ斬りかかるのを見て一気に突進して突きを繰り出していた。
司「おーけー凌久」
大鉈の袈裟斬りを受け流すつもりでそっと刃を当てると大鉈が真っ二つに切断されてしまう。
司「は?」
凌「流石司だな」
司は受け流して隙を作った所で凌久に攻撃をしてもらうつもりでいたが、司の刃が今まさに相対している者の頸に届くかという所である、凌久は普通に勘違いして司の補助をする為攻撃の軌道を右肩へと変更していた。
司「こうなりゃ自棄だ」
スパッと首が飛び血が噴水のように吹き出す、それと同時に敵のアジトの入り口かと思われる場所からワラワラと魔獣が飛び出してきた。
凌「ははははは!まあそう来るよな」
絶命している敵の右肩から刃を抜き、息を吸い込みながら目を瞑り、己の芯の燃え盛る焔を解放する!
凌「先に行ってるぜ、司!!」
焔に包まれた凌久が空を蹴り飛んで行く、琰王モードになると重力が無効化し、自在に空を翔けることが出来るようになる為、飛ぶ魔獣にも対処が可能であった。
凌「灼き尽くせ朱音!灼光炎帝紅蓮斬」
手にした朱音を振りかざすと、凌久自身を覆っている焔が朱音へ吸い寄せられるように波打って朱音が赫く輝きを増しながらまるでアフターバーナーの様な手元から切先にかけ集束したエネルギーを掲げて推進力を上げていき、目標へ対し一気にその力を叩きつける超高火力の焔で殲滅する業であった。
コォオオオ
ドゥォォォォオン ブオオオオオオオ
辺り一面が灼き尽くされて魔獣が蒸発していく。
十「出番無しか、しかし参ったなぁ、どえれぇ奴等を拾っちまった感があって不安になってきちまったなぁ」
凌「はぁはぁはぁ」
凌久の身体を覆っていた焔が無くなって膝を付いて滝のような汗を流し息を切らせていた。
司「大業使って隙だらけになってたら世話ねぇぞ凌久、まぁかなりの数を減らしたのは事実だからな、あとは任せとけ」
凌「はぁはぁはぁ、ああ、あとは頼んだ」
司もその姿を変えていた。
司「凌久の業が動なら俺のは静だな、目覚めろ雪月花」
冷やりとした空気が辺りを支配し始めた。
入り口から凌久の攻撃を免れた炎の耐性がある魔獣が出てきた。
司「凌久は少し休んでろよな」
凌「ああ悪い、ちょっと調子に乗ってやりすぎたわ」
凌久は汗だくになりながらも笑いながら返事を返した、その様子をみて司は少し安心したように前を向いた。
司「さて、お前らは操られてるのか、自分の意思で来てるのか知らないけど、殺意を向けて向かってきてるんだから容赦はしないよ、せめて苦しく無いよう努めようかな」
司は雪月花の切先を真っ直ぐに天に突き瞳を閉じる。
司「さあ雪月花いくよ?深々と降り積もり目にする景色は凍りつき、生命の灯火消えゆる月夜、とわの眠りへ誘わん、まるで夢幻の如し、幽玄凍氷夢幻陣」
詩を詩い終わると同時に目を見開き雪月花を己の前へと突き出すと、そこから入り口へ向かい一気に白い世界へと変わり魔獣達がピタリと動かなくなった。
十「何が起きたかもわからず逝ったみてぇだな、見事だったぜ司」
司「ありがとう師匠、魔獣自体は多分もう出てこないだろうけど、これから出てくる奴等はもっと強いだろうからまだ油断はできないよ」
十「まぁそうゆうなよ、俺はまだなんもやってねぇわけだし、司も大技ぶっ放した割には元気みてぇだからな、みんなも呼んで中へ進むか」
後ろに控えていた三人を呼び寄せて、いよいよ入り口を潜って入っていくと、さっき敵対していた魔獣を捕獲していたであろう檻がズラッと並んでいた。
凌「壮観だな、こいつら凄い資金源があるんだろうか?」
十「そうだな、これだけの施設と魔獣の捕獲、他の施設などの運営を考えるに何処かの領主か何かの組織が関わっているのは間違いないだろうな」
琴「なんにせよ最奥にいる者に聞き出せばよいえ、もたもたしとると逃亡されてしまうじゃろ」
ル「ここは嫌な雰囲気ね、さっきまで精霊達が騒いでいたのにここに入った途端精霊の力が感じられないわ、ここからはあまり役に立てないかもしれないわ」
主に風の精霊の力を借りていたルルミラがポツリと呟いた。
凌「そういえば朱音もいつもより大人しくなっちゃったな」
司「雪月花もだな」
琴「嫌な予感がするが、刹那や他の精霊の為にも先を急ぐえ」
皆が頷き先へ進んで行き、受け取った地図に載っていない下層へ降りてきた途端に大きな分岐路へ差し掛かった。
十「ここまで雑魚が何人か襲ってきたが、ここからが本番てぇ雰囲気が両方からしてきやがるな、左は俺と刹那と琴音の嬢ちゃんで行くから右は頼んでもいいかぁ?」
凌「うっす!じゃあ司、ルル早速行こうぜ!」
司「あんまり入れ込み過ぎるなよ?」
ル「そうね、今の凌久は視野が狭くなってるわよ?刹那さんの為に張り切るのはわかるけど、落ち着いてね」
凌「な、何言ってるんだよ、さぁ早く行くよ」
凌久は顔を赤らめながらそそくさと先へ進む、司とルルミラも警戒しながら着いていく。
十「嬢ちゃん、あいつらが心配か?」
琴音が司と凌久の背中を見つめていたので十蔵があいつらなら大丈夫だと無言で頷く。
琴「可愛い子には旅をさせろとでもいいたげだえ、まあそうじゃな、先に進むかえ」
十蔵達も奥へと進んで行った。
十蔵達の通路は何の罠もなく、また待ち伏せなどもおらず進むと通路の先から真っ赤な光が溢れているのが見えた、近づくにつれ禍々しい気配が溢れてきた。
琴「こりゃあこちらが当たりかえ?」
刹「なんだか寒気がしてきたわ」
十「当たりっつーか、この気配は………」
通路からその光の元である広場へ入ると一人の男が生け贄として捕らえてきた精霊を儀式の燭台に捧げ、今まさに召喚の儀式が完了したようであった。
男「ふっふっふ、ははははははは!やっと、ようやく儀式を完全にやりきれたぞ、我が王となる日が叶うのかと思うとたまらんなぁ」
男が狂気に満ちた表情で笑っていた。
十「こりゃあ厄介なのが出てきやがったな」
十蔵の目の前の精霊の血溜まりが一箇所に集まっていき、髪の長い女性の姿にかたどって行き、まだ姿形が確定していないが、口が開き喋り出す。
女性「うふふふふ、はあ〜久しぶりの肉体だわぁ〜〜〜、久しぶりだと言うのに嫌な顔が目の前に居るなんて最悪の気分だわ〜だけど随分と時間が経ったのね、一緒にいた黒鉄だっけ?あんたがいつもくっついて歩いてた男は何処かしら?」
十「俺の方こそ折角あの時俺が止めを刺して一件落着したってのに、まぁた手前のツラを拝むことになるとはな、先生はお前とやり合った時の傷が治らず暫くののち死んじまったぜ、敵討ちってな柄じゃねぇけど二度とコッチにこれねぇよぉに削りきってやるから覚悟しろや、なぁライラ・ロナ・クーゼ」
ラ「あら折角私を追い返せたのに死んでしまったのね、いい気味だわ〜はぁ少しは溜飲も下がったかしら、次は貴方よ?十蔵」
ライラの身体が完全顕現した、真っ赤なドレスを着た腰まで伸びた銀髪の紅の瞳の麗しい女性てあったが、妖しい笑みと不吉なオーラで辺りを包んでいた。
十「ふっ、相変わらずの強さみてぇだが俺もボサっと生きてきた訳じゃねぇからな、行くぜ」
男「おのれ!何者か知らんが最初の礎となれることを誇りに思いながら召されるがよい!ふっひっひっひっひ」
琴「刹那、入り口までさがっておれよ」
刹那は急いでこの広間の入り口まで走って行った、そこで琴音が結界を展開した。
琴「七里結界」
琴音が唱えると刹那の周りを青白い光が包み込んだ。
琴「何があってもそこから出てはいかんえ」
刹「わかった」
ラ「ふぅ〜ん、狐が一匹いるのねぇ〜、少し面倒ね」
ライラは呼び出した男の胸を左手で貫き心臓を引き抜く!
男「ぐゔゔゔゔゔゔゔ、なびをずるのだ………」
叫びながら目を見開き絶命した。
十「相変わらずイカれた婆あだな、手前を呼び出す為に俺達のような者から追われたり、捕らえられたりしながらやっとの思いで手前を顕現させたと思ったら、その本人に殺されようとはなぁ」
ラ「相変わらずの減らず口だな糞餓鬼が〜、私を婆あなどとほざいていられるのも今のうちだわ〜、そもそも勘違いしてるみたいだから死ぬ前に教えといてあげるけど、この現界世界の生命はすべからず我々悪魔貴族の餌にすぎないのだから〜、さあお前らもその生命私に捧げるがいいわ〜〜〜」
ライラは左手の心臓に喰らい付き、その口から血を滴らせ薄ら笑いを浮かべている。
十「醜悪な糞ババアが!絶対に手前ぇはこれ以上この世の空気を吸わせちゃなんねぇって事を思い出させて貰ったぜ!」
琴「また面倒な相手じゃな、本気で行かんと駄目みたいだえ」
琴音は服を脱ぎ出した。
刹「ちょっ、琴音ちゃん!?」
後ろで見ていた刹那が全裸になる琴音を制止しようと声をかけるが、すでに全裸になっていた」
琴「お気に入りじゃから大事に持っておれよ刹那」
刹「えっ?」
琴音は服を刹那へ投げ飛ばし変身する、黄金に銀のメッシュの毛並みの美しい大きな狐となった。
刹「わわっ」
刹那が尻餅をつく。
刹「獣人でも最上位だったんだね、ちゃん付けしてたけど失礼だったかな」
琴「そんな事は気にしとらんえ、今まで通りでよいからの」
軽く言葉を交わしライラへと向き直す、刹那も邪魔にならない様に結界中央でじっとしていた。
ラ「まあまあの毛並みだわね〜〜、殺して私が着てあげるわね、うふふふふふ、魔界だとお洒落もろくに出来ないから楽しみだわぁ〜〜〜、あら二人ともそんなに睨んで怖いわぁ〜久しぶりに思いっきり暴れられる相手だから興奮してきちゃうわ〜〜〜」
ライラは自身の影から戟の様な槍に鉤形の刃のついた武器を取り出す。
ラ「うふふふふふ、また美味しい血を吸わせてあげるからね」
妖しい笑みを浮かべ飛びかかってきた。
十「ふっ相変わらず戦闘狂なババアだな」
ラ「いい加減その減らず口を黙らせてあげるわよ〜坊や」
十「天ヶ崎流風嵐木枯らし斬り」
ライラが持つ戟は長槍よりも長さは短く刀よりも長いいわゆる短槍のような長さで踊るように上下左右斜めと、変幻自在な軌道を描きながら時には真っ直ぐ素早い突きから返す鉤型の刃で引き斬ろうとしながら、その表情はニヤニヤと笑っているが、十蔵も足運びで躱しながら幾つもの刃がライラへ向けて飛んでいっているさまが見える。
ラ「あらあらどうしたのかしら〜?大きな事を言っていたからどれだけ強くなったかと思っていたけれど、これじゃあ貴方の師匠の方が強かったわよ〜〜〜、ほらほら、頑張って楽しませて〜」
十「はっ、存分に楽しめや!上げてくぜ、琴音は刹那を頼んだぜ」
琴「………ふむ」
琴音はライラがかなりの強者であるとわかっていたが、戦いが始まればその力量が識れると思っていたが、ライラの底知れぬ圧倒的な強さにその場を動けずにいた、顕現したばかりで測れぬとは思っていなかったので、刹那を護る事に重きを置いている為十蔵に手助けが出来ずにいた。
ラ「な〜んだつまんないわね、狐ちゃんとも遊べると思っていたのに、十蔵だけじゃ私は止められないわよ?」
戦いながら余裕をみせるライラ。
十「強さの桁が違うのは認めっけどよぉ、あんま舐めてっと痛い目みるぜぇ」
風嵐木枯らし斬りで受け流していた十蔵は様子見が終わったとばかりに言い放った。
ライラは自身も回転しながら十蔵の周りを廻っていた。
十「天ヶ崎流不知火」
剣速を常人のそれをはるかに凌駕する速度で振り抜き空気との摩擦で刀自体を真っ赤になる程にしてから、火の精霊の力を借りて刀の周りを七つの火の玉がぐるぐる回っている。
ラ「大道芸でも見せてくれるのかしら〜、でも残念ねその前に貴方の首を狩らせてもらうわね」
琴「精領域結界」
琴音が攻撃に参加出来ないとみるや、十蔵の補助に徹する事に切り替え十蔵が火の精霊の力を呼ぶ事を察して、精霊弱体化の文字が壁のあちらこちらに描かれていた事を確認していた琴音は、限定的にこの戦闘空間だけ精霊の力を余す事なく振るえる結界を構築したのだった。
ラ「ちっ畜生が余計な事してくれちゃって、やっぱり初めの人型のうちに始末しとくんだったわね」
悪魔にとって精霊の血は顕現する為の力になるが、精霊自体の攻撃は効果てきめんでもある、ライラを召喚した者達は精霊を弱体化させる為に入り口から最深部まで弱体化の文字をそこかしこに書き込んでいたのを琴音により邪魔をされた事をライラは苛つきを隠せずにいた。
十「よそ見たぁ俺の事舐めすぎだろ」
七つの不知火の火はまず四方に一つづつ飛んでいき、一つは刀へ、一つは十蔵の身体へと入っていった、最後の一つは十蔵の背後でふわふわと浮いていた。
十「不知火奥義『七耀烈火煉獄』」
七つの火の玉から業火が立ち登り四方に配置された火柱より内側が高温となり十蔵自身は後ろに浮いている火に護られており、自身に憑いた火により身体能力が活性化し、刀に憑いた火により火剣として能力が上がっている。
ラ「確かに油断したわね〜でも貴方にこの身体が斬れるのかしら〜〜〜?」
十「ライラ〜〜〜!!」
ギィイン!ガッガッ!
ズバァーーー!
ラ「ぎゃあぁぁぁあ、おのれぇえ!私の右腕をよくも!」
十「くそがぁ、右腕だけか………」
すれ違いざま十蔵も右目を引っ掛けられ失っていた。
ラ「まったくしつこい一族だねお前らは、お前の祖父もその親もそのまた親もいつまで付き纏うつもりだい、お前もいい加減この身体の事諦めるんだね!」
十「ふざけてんじゃねぇぞ糞婆が!菖蒲の顔で汚ねえ言葉使ってんじゃねぇぞ、いい加減その身体から出て行きやがれ」
ラ「出た途端お前に滅殺されるのは御免だね、しかし愛した女の腕を斬るとは思ってなかったけどね〜、自分じゃ斬れないからって、祖父に泣きついてその祖父にお前が頼ったせいで死んじまったんだからなあ〜、愉快で仕方がないよ」
十「手前ぇ調子に乗りやがって」
十蔵は走り出しライラに斬りかかる!
菖「十蔵たすけて………」
菖蒲の声が十蔵の動きを一瞬鈍らせる、次の瞬間!
十「ぐはっ」
十蔵の腹部から鮮血が飛び散り両膝を地面へついた。
ラ「あらあらどうしたのかしら?非情になれないのは昔から変わらないのね、まあそうねこの依代の身体の魂の欠片は実際まだ息づいているけれど、自我は無いわ〜私の演技よ」
十「ごほっ、はぁ……解放してやれなくて御免な菖蒲、どうやらここまでみてぇだな……」
刹「………十ぞ……そんな……」
刹那は泣き崩れていた。
十「泣くな……刹那、親父とまた酒が呑めるってもんだぜ、嬢ちゃん、司と凌久には仇とかは考えるなって……ごほっ!伝えてくれ」
琴音はライラを睨みながら頷いた。
琴「わかったえ、で?ライラとやらは次は妾かえ?」
ラ「いや、やらないわ〜そこの足枷気にしなくなったら私でも危ないでしょう〜、そんな危ない橋は渡らないわよ?大人しくこの場を後にさせてもらえるならこのまま消えるけれどどうかしら〜」
琴「さっさっと去ね!!」
ラ「うふふ、そんな怖い顔しないで欲しいわ〜、じゃあね十蔵、もう会えないなんてちょっぴり寂しいけどもさようなら、私を追い詰めたのは誇って逝きなさい」
ライラは自身の陰へと沈むように消えていった。
十「ごはっ、くそ、もう……目もみえねぇや」
刹「うっうっう〜………」
刹那は泣きじゃくっていた。
琴「………………」
十「あぁ泡沫の〜希望も消えて〜脚本の無い………演目の幕がぁ〜仕舞いを迎え〜無念のうちに〜舞台を降りる………明日の陽の目は見れねぇが〜悪くない奴等が紡いで行くだろぅ……………………………」
十蔵の表情は笑みを浮かべそのまま逝ってしまった。
琴「見事であったえ、琴世空外界結界の中で安らかに眠っておるえ」
琴音が自身の空間世界を構築している結界内へと十蔵の遺体を安置した。
刹「さよなら、先に行って待っててよね、出来る事はしたいから怒らないでよね」
琴音は人型に戻りながら来た道を引き返そうと歩き出す。
琴「さぁ刹那、いくえ」
刹那も琴音が司と凌久が心配なんだと察して小走りで琴音について行った。




