真精聖女ユリミラ
飛鳥は薄っすら光る聖堂の前に立っていた。
飛「ここが精神世界って事かぁ、なんかわくわくしちゃうなぁ」
飛鳥はキョロキョロしながら聖堂とは反対側に走り出す。すると何処からともなく声が聞こえてきた。
女性の声「はいはーい、そう来ると思ってたよ、でもそっちに行っても何にも無いよ」
飛「そうなの?面白そうな空間だからなんかあると思ったんだけど、貴女は誰?」
女性の声「あはははは、流石はわたしの因子を継いだ女の子だね、わたしはユリミラだよ?」
飛「貴女がバルザとエフィメロの話していたユリミラさんね、でもなんか聞いてたイメージと少し違うかも、もっとお淑やかと言うかザ聖女みたいなイメージだったけど、大分砕けた感じがする」
ユ「あぁ、バルちゃんとエフィね、あの子達はちょっとわたしの事を神聖視し過ぎてるからね、わたしはこんな感じだよ?だから聖堂の大司教にはいつも小言言われたっけ、懐かしいなぁ」
飛「なんか安心したかも、凄い人過ぎたらどうしようって不安だったんだけど、話しやすそうなお姉ちゃんって感じでホッとした」
ユ「うんうん、早く奥までおいで、わたしが手取り足取り教えちゃうから、まずは大聖女の能力を完璧にしちゃおうね、今までは飛鳥がなんとなく遊び感覚でひょいひょい出来ちゃってたけど、キチンと神聖なる光を司る精霊の力を自在に操れないとだから、まずはこの聖堂の中央の祭壇まで来てね」
飛鳥は聖堂を真っ直ぐ進むと大きな扉の部屋へ到着し、扉を開け放つ。
飛「はじめまして、真精聖女ユリミラ様」
ユ「そんな堅い言葉普段使ってないんだから無理しなくてもいいよ、さっき言ってたお姉ちゃんでもいいからね、まぁ挨拶はこれ位にして早速始めようか、まずは私達聖女や司教の扱う神聖魔法ってのは厳密には魔法じゃないの、これはこの世界の慈愛の女神ロネールちゃんの加護と神聖なる精霊の力を事象にしているのが私達なの、基本この三つの意思が一つにならないと扱えないんだよね、魔法は大地の魔脈と本人の魔力あとは事象を起こす為の魔法陣や詠唱、創造力と本人の素質によって起こる現象なの、ここまではわかるかな?」
飛「今まで考えた事もなかったけど、言われてみれば神聖魔法と普通の魔法の感覚の違いは確かにあったかも」
ユ「そそ、これから教えるのはね、ココ!おいで」
ユリミラがそう言葉にすると、ユリミラの隣の空間がボンヤリと光出し身長三十センチ位の羽根の生えた桃色の髪が綺麗な翡翠の瞳の女の子が現れた。
コ「ユリミラ、貴女肉体は?」
ユ「んふふ、あっちで死んじゃった(笑)」
コ「あんたねぇ、あっけらかんと言う事じゃないでしょうに、まぁいつもの事だけど、で?私を呼んだ理由はこの娘の事ね」
ココは飛鳥の周りを飛び回る。
ユ「なんたって私の因子を色濃く受け継いだ娘だからね、わかるでしょ?溢れるチカラと慈愛の女神ロネールちゃんの加護の光が」
コ「ロネール様をちゃん付けで呼ばない!でもロネール様もこの娘の事気に入ってるって事だから、まぁ資格はある訳ね、貴女お名前は?」
飛「ココちゃん可愛いね、特にその桃色の綺麗な髪の毛、触っても良い?」
コ「ちょっ、おだてても何もないわよ?って話し聞いてる?」
触ろうとする飛鳥、しかし飛び回り躱すココ。
ユ「飛鳥、ココの弱点はね……」
コ「ちょっ!ユリミラ余計な事は言わない!!」
ユ「そう?仲良しになれちゃうトコだったのに」
コ「遊ぶ為に呼んだわけじゃ無いでしょ?」
ユ「えぇ、少し位は遊びたいよね?飛鳥!」
飛「ねー、お姉ちゃん」
コ「私帰るけどいいの?」
ココが低めに脅す。
ユ「帰っちゃヤ!わたしとココの仲でしょ?」
コ「わかったからそんな顔しない」
ユリミラは泣きそうな顔をしていたが、許された瞬間笑顔に戻る。
ユ「あー、良かった、まぁおふざけはこの辺にして、飛鳥にも相棒を生み出す所から始めようか」
飛「相棒?」
ユ「そそ、わたしの相棒はココ、飛鳥にも飛鳥だけの相棒を今から生み出してもらうから」
飛「お姉ちゃん、言いにくいけどまだしたこと無くて、そうゆう事少し興味はあるんだけど、チョット怖いかな?」
ユ「そうか?じゃあおれに任せとけば優しくするからな」
コ「はい!話が逸れました!」
ユ「んふふ、でも飛鳥のボケに乗っかっただけだけど………ボケじゃなさそうね」
飛「ん?」
ユ「産むって言ってもエッチするわけじゃないの、飛鳥の生命の根幹の精力と、この空間に充満している神聖なる微精霊が掛け合わさって、飛鳥を完全に補助出来る超位精霊を生み出す事が出来るの、ここまでわかった?」
飛「じゃあココはお姉ちゃんが生み出したの?」
ユ「まぁそうゆう事になるわね」
飛「なるほど、ただ使役するじゃなく、相棒なのね」
コ「理解は早いようね、私は微精霊を飛鳥の周りに集めるから、ユリミラと手を握って導いて貰ってね」
ココが聖堂を飛び回ると、ココの飛んだ軌跡に光が集まっているようであった。
ユ「じゃあわたし達も始めよっか」
ユリミラは両手を飛鳥の両手に繋ぎ聖句を詠唱し始める。
ユ「我らを見守り、幾重もの試練を与えて下さる慈愛の女神ロネール、ここに新たに慈悲なる心を携えた者に祝福と、これからの旅の共を授け給へ。アーハニャラーセリローセミテーネ」
すると聖堂の天井の真ん中から一筋の光が飛鳥を照らし始めた。
ユ「自己化身顕現」
ココが飛鳥に近づくと、微精霊が飛鳥の周りを埋め尽くし、飛鳥の胸部から拳大の光の珠が出てくると、一つの微精霊が光の珠に吸い寄せられ、青白く発光し徐々に人型へなって行く。
ユ「さあ、名前を付けてあげて」
ユリミラは手を離し、祈りの姿勢に入り、天井を見上げる。
飛鳥は生まれたての精霊を眺めながら、キラキラしてて綺麗だなぁと思う。
飛「キララ!おいで」
名付けた瞬間髪の色が藤色となり瞳は黄色く輝いている。
キ「ふぁ〜あ、おはよう飛鳥」
キララは飛鳥の肩に乗り、あくびをしながら挨拶をしてきた、ユリミラはその様子を確認して祈りを解き飛鳥へと近づく。
ユ「無事に生まれたようね、キララ、良い名前ね、ココ、キララに色々教えてあげて」
コ「先に飛鳥との連携じゃなくてもいいの?」
ユ「うん、先にわたしが教えたい事あるから、お願いね」
コ「そう、わかった、キララおいで」
ユ「飛鳥、今の貴女の銀髪と緑と青の混ざった瞳はわたしと同じなんだけど、それは例のポイント使ったんだよね?でも基礎能力が上がっただけで新しい力は得られてないよね、自分で無理に上げたからわたしの力が使えてないから使えるようにするからね」
飛「お姉ちゃんに任せる、なんだか眠気が」
ユ「そうね、飛鳥は精力だいぶ使ってるからあとはわたしに任せてそのまま横になってなさい」
飛鳥は瞼が開けてられない程睡魔に襲われていた為、ユリミラに言われるがまま安心して眠りについた。
ユリミラは飛鳥の中にある因子へと働きかけ、大幅な能力の増強を果たす。
ユ「よし、とりあえず今日はこんなトコか、明日からはキララと一緒に特訓だからね、ゆっくりおやすみ」
飛鳥は11ヶ月の間ユリミラとココの特訓の日々を乗り越えて現実世界へと帰還する当日。
ユ「飛鳥、この世界は死が近いから貴女を強く導いたけれど、聖女だからって人助けに人生を捧げなくてもロネールちゃんは怒らないから大丈夫だよ?」
飛「うん、わかった」
ユ「わかってればヨシ!じゃ、行っておいで」
飛「お姉ちゃんありがとう、またね」
そう言うと飛鳥の身体は透けていき完全に消えた。
キュウルはシャキに淹れて貰った紅茶を楽しんでいた。
キュ「ん〜今日の紅茶も美味しいわ、シャキ」
シャ「キュウル姉ちゃま、そんな事よりもう二日っちゅけど、あの娘大丈夫っちゅ?」
キュ「あら、珍しいのねシャキが人間の心配するなんて」
シャ「わたちは………、そうでちゅね、子供の頃ユリミラ様にたちゅけられまちたからね、あの頃の姿のままでちたので」
キュ「そうね、わちしも最初は驚いたもの、しかも連れてるフェンリルはあの仔の子供だし、楓からは魔王の気配を感じるわね」
シャ「精霊達が騒ぎ始めまちたっちゅ」
キュ「そうね、飛鳥が目を覚ますようね、楓達に知らせてきて頂戴」
シャ「わかりまちたっちゅ」
シャキは外にある納屋に楓達を呼びに行ったのだが、何やら揉めていた。
胡「ちょっと芹香、姐様に夜這いしに行こうとしてたでしょ?抜け駆けは許さないからね」
芹「今が最大の好機なんだから見逃す手はないでしょ?」
胡「じゃあ今夜二人で……」
そこに楓が現れた。
楓「チョット!怪しい行動したらわかってるでしょうね」
芹「いや、なかなか起きないから心配で見に行こうとしていただけで」
胡「そう!それ!!もー心配で心配で」
楓「まぁ、もう起きると思うけど」
芹「ちっ」
楓「今舌打ちした?」
芹「いや、気のせいじゃないかなぁ」
そこにシャキが入ってきた。
シャ「何を揉めてるでちゅか」
楓「怪しい事しようとしてたから、ちょっとね」
シャ「そうでちゅか、飛鳥が目覚めたっちゅ」
楓「本当に?」
飛「本当だよー、ただいま。みんな」
楓「おかえり飛鳥、起きたばっかりなら無理しちゃ駄目だよ?」
飛「うん、わかってる。みんなは何してたの?」
ベ「お、おかえり飛鳥。ベネはみんなと稽古してたよ」
飛鳥はベネの頭を撫でながら、うんうんと頷いてる。
胡「姐様はどうだったの?」
飛「色々楽しかったよ、望む強さも手に出来たけど、簡単に解放は出来ないんだよね、まぁ基礎能力が上がってるから余程の事が無い限り解放しないけど」
芹「では以前より格段にお強くなったのであれば次はどちらへ向かうのでしょう」
飛「まずはキュウルちゃんの困り事から解決する約束になってるから、シャキちゃん案内頼めるかな」
シャ「まあ急がずとも二日はゆっくりした方がいいっちゅ、それを伝えにきたでちゅから」
飛「それは助かるね、お言葉に甘えて二日後にキュウルちゃんの元へ行くから、伝えておいてね」
飛鳥は現実との誤差とこちらの感覚を取り戻すべく、休養を過ごしキュウルの元へと向かう。
扉を叩く。コンコンコン
飛「きたよ〜」
シャ「きたでちゅか」
ガチャッ、扉を開けてシャキとキュウルが出てきた。
キュ「もう身体はいいのかしら?」
飛「うん、だいぶゆっくりできたから」
キュ「そう、じゃ早速だけど困り事の件をシャキから説明して貰うわね」
シャ「では説明するっちゅ、キュウルお姉ちゃんの弟君が家出をしてしまったちゅ、居る場所はわかってるっちゅけど、わたち達の説得は聞いてくれないっちゅ、なので飛鳥達には説得して家へ帰るように促して欲しいっちゅ」
飛「困り事って言うから鬼退治的なものかと思ってたけど、私達に解決できる案件じゃないと思うし、保証もできないけどそれでもいいの?」
キュ「そうね、もちろん解決出来なくてもいいのよ、少し特殊な環境で育った子だからわちしの言葉では届かなくてね、でも弟には自分でよく考えて自分で未来を選んで欲しいから、流された感情でいる事が可哀想でね、そこだけ説得して欲しいのだわ」
飛「なるほど、私も人の事言えないけど経験値が足りないと狭い世界での考えに囚われちゃうものだからね、なんとなくわかったよ」
シャ「じゃあお願いするっちゅ、場所はこの先にある洞窟に護衛付きでいるっちゅ」
キュ「これを持っていけば弟のミレギスに会えるはずよ」
キュウルは自分が着けていた首飾りを外し、飛鳥へ手渡す、飛鳥は受け取り首からさげた。
飛「わかった、じゃあとりあえず行ってみるね」
飛鳥は楓達の元に戻り次の目的地を説明して支度をし、いよいよ出発となる。
シャ「この先は魔獣も一段と強いっちゅ、油断禁物っちゅよ」
キュ「わちしが精霊力を編み込んだ腕輪を着けていって頂戴、植物系の精霊の加護を付与してあるからお役にたてて頂戴」
楓「何から何までありがとう、お世話になりっぱなしで助かったよ」
ベ「ご飯も美味しかった、沢山作ってくれてありがとう」
シャ「バルザとエフィメロがいたらあんなものじゃ足りないっちゅ、また来た時は沢山作ってあげるっちゅ」
雷「僕の好物も良くわかったね」
シャ「よかったっちゅ、昔を思い出しながら作ったっちゅからね」
雷「昔?」
シャ「貴方のお母さんの好物っちゅよ」
雷「知り合いだったのか、納得したよ」
キュ「そう言えば騒がしい二人の姿が見えないようだけど、どこに行ったのかしら」
楓「ああ、騒がしいから斥候に出したの」
飛「うん、休みたいのにいつまでも騒いでるから」
シャ「そうゆう事でちたか、配下だと言うのでちゅから色々仕事を押し付けて丁度良いっちゅね」
キュ「では良い旅を」
飛「キュウルちゃん達も元気でね」
飛鳥達は目的の洞窟に向け出発した。




