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名刀 二振り

 司、凌久、琴音、ルルミラが宿から出てくると、十蔵と沙月が待っていた。

 司「師匠!戻ってたんだね」

 凌「あのあとまた刺客みたいな奴が現れたんだけど、逃しちゃったよ」

 十「そうかぁ、得体の知れねぇヤツぁ深追いしないのが正解だからよ、よくやったなお前ら。今日は修行の前にチョット遠いんだが、俺の刀を打った鍛治師の親父が遺した刀が二本あってな、娘が持ってるらしいんだがなぁ、最近輩みたいな野郎共が嗅ぎつけたらしくてよ、何度断ってもしつこく嫌がらせを繰り返してる様でな、んで俺の関係者に連絡が来て親父の遺言書にその刀は十蔵に…ってんで、連絡を受けた部下に話を聞きに行ってきたわけだが、ちょっかいをかけて来ている奴等がちと面倒な奴等でな、お前らの修行にもなるかと思って悪者退治してやろうって寸法よ」

 琴「ふむ、良い話に聴こえるが、弟子を良いように使おうと考えてる様にも聴こえるえ、主を信用しておらんわけでは無いが報酬は?」

 凌「ちょい、琴音!教わってるのは俺達だし、それに対しての対価は支払ってないのに、チョット手伝うだけなのに報酬をねだるのは違うんじゃないか?」

 琴「お主ならばそう言ってくるであろうとは思っておったえ、しかし、これは生命の掛かった依頼なはずであろう?」

 十「……まぁそうだな、斬られりゃ死ぬからな。わかった、報酬は二振りの刀でどうだ?」

 琴「まぁ妥当かの、妾は保護者の責任があるからの」

 司「ここは琴音に従っとくか」

 凌「そうだな」

 十「早速向かいてぇんだが、準備はいいか?」

 琴「ルルもええかの?」

 ル「私は構いませんわ、引き際は心得ていますから」

 十「良いようだから行ってみるか、沙月!先頭は頼んだぜ、殿は俺が付くからよ、行くぞ!」

 十蔵の号令で沙月が先頭を走り出し、司、凌久、琴音、ルルミラ、十蔵の順番で走り出す、

 町を出て峠を抜けると深い森へと入って行く。

 沙「この森の魔獣は狡猾な者が多いので、ご注意を」

 森の奥から叫び声が聞こえてきた。

 女性の声「きゃーーー!助けてぇ」

 凌「女性が襲われてるみたいだよ!」

 司「待て待て、沙月さんが言ったばっかで引っ掛かるなよ?」

 琴「うむ、司の言う通りだえ」

 十「はっはっは、凌久ぅまだまだ気配察知が甘ぇな、とりあえずは人の気配はないから放置な」

 凌「うっす、もっと集中しなきゃだな」

 森を駆け抜けるが、魔獣が獲物を素通りさせる事は無く、弱い小鬼を投げつけて斬っている隙に嘴鳥人(がるど)と呼ばれる鳥人種の魔獣が凄い速さで三匹近寄ってきた!

 ル「右を射りますわ!」

 十「左の鳥は任せな!」

 沙月が小鬼を刺し貫き地面に叩き落とすと、司が嘴鳥人へ飛び掛かるが身体をよじられ軽く躱される、しかしほぼ同時に凌久が逃がさないとばかりに突き貫く体制で追撃したが、嘴鳥人の脚に刺さり嘴鳥人が奇声をあげて上昇を始めた。

 琴「どれ、結界術、臨!」

 今まさに空へ浮き上がろうとする嘴鳥人の身体の中心を結界で固定した、その隙に凌久が刃を抜き飛び降りる。

 凌「助かった琴音!」

 琴「なんの、だがまだ終わっとらんえ」

 固定されているが、その場で暴れている、抜け出せないことを感じたのか嘴を大きく開いた!

 琴「不味い事になるえ」

 と言いながら、琴音が嘴鳥人に飛び掛かり、扇の一閃で首をはねる、首から噴水の様に血が溢れ折角のフリルの可愛い服が血だらけになる。

 琴「ぬかったのだな、妾の服が………」

 凌「また買ってやるから落ち込むなよ、お陰で助かったよ琴音」

 琴「うむ、今度はあの迷っていた黒い方の服が欲しいえ」

 ルルは四本の矢を同時に引き放った、二本が風の気流で小鬼を躱して嘴鳥人の眉間へ刺さり、真っ直ぐ飛んだ矢も小鬼の心臓を射抜いていた。

 ル「終わったわ」

 十「ああ、こっちもな」

 十蔵はどうやら斬撃を飛ばして二匹を一太刀で倒したようだった、辺りの大木まで斜めに切れて倒れている。

 沙「では、急ぎましょう」

 沙月はすぐさま走り出す、皆も沙月を追う。

 凌「素材とかよかったの?」

 司「俺も剥ぎ取ろうとしちゃった」

 沙「急がないと間に合わないかもしれませんので、あしからず」

 夕刻まで走り続け辺りが暗くなってきた所で右前方の崖の上から声が聴こえてきた。

 輩「おう!餓鬼の使いじゃねぇんだぞ、早く隠し場所を教えろや」

 娘「はぁ?ふざけんなよ糞共が!また蹴り上げんぞ」

 凌久は思わず自分の股間を押さえる!

 凌「うわっ!怖い事言ってるな、俺達こなくてもごっつい女の子なら平気だったんじゃない?」

 司「おい、まだ見てもないのにごっついとか失礼だぞ!」

 ル「そうですわよ」

 そのまま崖を目指してラストスパートで一気に駆け上がる!

 十「よう!待たせたな、刹那!」

 刹「えっ?!十蔵さん?」

 ごついどころか可愛らしい女の子が立っていた、凌久は一人足を止めて見惚れていた、他の面子は臨戦体制へと移行していた。

 輩「んだぁ?手前ら俺達に逆らってもいいことねぇぞ!コラぁ」

 輩は全部で五人、すでに腰の獲物を抜いている。

 司「複数結界魔法(ガローラ)

 相手の身体の中心を結界で固定した。

 十「ほう、司の魔法は初めて見たなぁ、だがこの位だとコイツらなら効くけどょ、俺には効かねえぞ」

 司「わかってます!」

 十「わかってりゃいいけどよ?んで?お前らは抜いたって事はよぉ、自分も斬って捨てられる覚悟があるって事でいいんだよなぁ?」

 輩「くっ、どうなってんだ?」

 司「暴れても無駄だよ」

 司は言いながら刀を抜く。

 輩「帰ったところで消されるんだから、最期まであがいてやるよ!あれをやれ!」

 後ろにいた別の輩がズボンから何かを取り出し、こちらに投げ込んできた!

 琴「壇上結界!」

 投げ込んだものを琴音が結界で封じると、結界の中で爆発した!

 司「ナイス、琴音」

 十「ほぉ、司のとは訳が違うな」

 琴音はえっへん!とポーズをとってドヤっていた。

 十「喋れる口は一つありゃいいだろ?」

 沙月と十蔵は四人を斬り伏せた。

 刹「ありがとう、助かったよ十蔵さん」

 十「あぁ、だがまだ終わった訳じゃねぇんだわ」

 刹「どうゆう事?」

 沙月は残った輩を縛り上げ森の奥へと消えて行った、凌久は刹那に見惚れている、十蔵が仕入れた情報を刹那へ説明する。

 刹「そんな………、魔神教が」

 魔神教とは所謂別次元にいるとされる悪魔の上位種達を祭り上げ、別次元からこの世界に召喚しようとしている団体の事であった、触媒として精霊の上位種の力を捧げる事で、この世に顕現させようと試みようとしているらしいのだ。

 十「だからよ、父一人娘一人でやってきて、親父さんが逝っちまったからには、俺が刹那の事を守ってやるからよぉ、安心しろよ!」

 刹「うん、頼りにしてるよおにぃ!」

 十蔵若かりし頃からこの鍛冶場に出入りしており、勿論刹那の母親も知っていた、残念ながら病に侵されてしまい帰らぬ人となってしまったが、美しい人だった。

 凌「あの!俺はり、凌、凌久っていいます、俺も刹那さんの事守りますから!」

 刹那はきょとんとしている。

 十「くぅ〜、青春ってやつか?凌久!刹那、こいつとあっちの司ってのは一応俺の弟子で、あの幼女が琴音って、コイツらの保護者で、ルルミラはエルフの………エルフさんだ、沙月は知ってるよな?じゃあ暫くここで様子を見てから町に行ってみるか」

 鍛冶場のあるこの家で暫く過ごす事となる。

 十「刹那、ところであれは何処あんだ?」

 刹「ああ、ここにしまってあるよ」

 両親の仏壇の前の床が細工してあり所々の床を叩くと取手のような突起が飛び出してきた、それを摘み上げると二振りの刀が出てきた。

 刹「こっちが燃え盛る獄炎の刀、銘を『朱音』と言うわ、そしてこれが、凍てつく氷冷の刀、銘を『雪月花』よ、でも使い手を選ぶ太刀だから未だわたしも刀身を見た事がないの」

 十「まぁた親父も凄え刀を鍛えちまったかよ、で親父は俺に託すっつったのか?」

 刹「そう、お父が死ぬ二日前に私に直接言ってきたの、十蔵に任せときゃ正しい使い手の手に渡るだろうからなって」

 十「そうか、早速だが司!凌久!ピンと来た方を抜いてみろ!」

 刹「お父の知り合いの侍の誰も抜けなかったんだよ、わたしと年も変わらないこの人た………」

 刹那が喋っている途中で二人は抜いていた、司は雪月花を、凌久は朱音をそれぞれ抜きその刀身の妖しい光を眺めている。

 司「凄い刀だと言うのは、持った瞬間わかったけどこの蒼く輝く刀身が喜んでいる様に見えるよ」

 凌「うん、凄さが伝わってくるよね、こっちの赫い刀身は早く暴れたがっているみたいだよ」

 十「こりゃたまげたな、親父の奴最期にこんな(もん)遺して逝きやがって、んで責任は全部俺に任せるとか、やってくれたな」

 笑いながら話す十蔵を皆が気持ちを汲んでくれている、司と凌久が十蔵の盃に酒を注ぐ。

 琴音は二振りの刀が只の名刀では無いと思っていた、確かにそのまま振るっても普通の刀よりも切れ味、付与されている属性なども相まってある程度のレベルの相手であれば敵無しであろうが、どうやらその先があるのは琴音にも、十蔵にもわかっていたがあえて口にはしなかったのだった、琴音は二人の成長具合で精神世界での覚醒を促すことは、予定に組み込んでいたのだが、この刀を見るまではまだまだ先の話であると思っていたが、覚醒させなければこの子らの生命に関わると思い決心する。

 琴音は就寝前に司、凌久の三人で話をする事にした、ルルには席を外してもらった。

 琴「司、凌久、主らは修行の時間だえ」

 司「ん?」

 凌「どうゆう事?」

 琴「司は妾の父の因子が継がれておってな、凌久には炎の超位精霊であるディアーラの因子が継がれておるえ、それぞれが受け継いだ潜在能力を引き出せば、更に成熟した強さを手にする事が可能でな、今から精神世界で修行をして貰うのじゃ」

 凌「あんまり意味分かってないけど、更に強くなれるって事は刹那を守る力が手に入るって事だよね?」

 琴「うむ、まぁそうだえ、身体を楽にして横になるえ」 

 二人は横になり目を瞑る。

 琴「精神世界での時間は引き伸ばされた時間でな、現実だと割と一瞬じゃから、安心して行ってくるえ」

 二人の意識は落ちて行った。

 

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