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18/30

ワイルドラビット

 月一ライブは毎回満員御礼の成功を納めていた、しかし問題もあったのだった。

 陽葵はギターやベースの弦やバスドラムやハイハットのケーブルについて悩んでいた、この間のライブは一曲だけだったので平気だったが、基本三味線に使っている絹を幾重にも織り込んで強度を出していたが、ギターに至ってはピックで弾く為みるみる切れて駄目になってしまう、他も似たり寄ったりの有様だ、そこで少し遠いが、ある山の火口の奥深くに大きな鳥がいるらしい噂を仕入れていた、あくまで噂なので完全な目撃情報でない所が怪しい感じではあるが、何故鳥かと言うと、その羽根は一つで大人の身長位あるはずだ、との話しなのでその羽根の芯の羽軸という部分を加工して作れないかと思案していたのだった。

 陽「とりあえず羽が無いか探しに行ってみようか」 涼「試行錯誤してみたけど、どれも今ひとつな仕上がりだからね、ザバルさんとも打ち合わせしたけど、本物を触ってるのは俺達だけだからな」

 奏「いよっし!久々に遠出だね、気分上がってきた、バナナはおやつに入りますか?」

 涼「入りますよ、って奏は我が道を行くだな」

 奏「ゴーイングマイウェイね、その山に行きながら出来る依頼あったら受注してくるね」

 陽「はーい、いってらっしゃい」

 奏は冒険者組合へ依頼を確認しに行く、陽葵と涼は黙々と荷造りをしていた。

 涼「陽葵、大丈夫か?」

 陽「んー?何が?」

 涼「うん、冒険出ると敵に遭遇するかもだし、その………」

 陽「あはは、そっか、それね、大丈夫!二人も一緒だし、私もいつまでも弱いままじゃいられないからね、陽葵さんは強くなったのですよ!」

 強がりを言っているのはわかっていた、しかし、次こそ必ず守り抜くと心に誓う涼であった。

 涼「おっ!それは楽しみだな、俺もだいぶ頼れる男だからな、他の冒険者からも頼りにされてるんだぜ、大船に乗った気でいろよな」

 陽「わかった、頼りにしてる」

 奏が鼻唄を歌いながら帰ってきた。

 奏「たっだいまー」

 陽「おっかえりー」

 涼「どうだった?よさげな依頼あった?」

 奏「あったよん、通り道の湿地帯に………」

 涼「もったいつけるなよ」

 陽「湿地帯ってまさか」

 奏「あら、さすが陽葵!勘づいたみたいだね(笑)」

 陽葵は嫌な顔をしている。

 涼「えっ?!チョット待って、何何?」

 奏「おーとっ!涼さんがパニックになっております」

 涼「湿地帯?なんかヒント頂戴」

 奏「えー?しょうがないなぁ、ヌルっとしてる」

 涼「カエルか!」

 奏「ピンポンピンポン!正解!!」

 陽「一気にブルーになったよ」

 涼「それしかなかったの?」

 奏「残念ながら!まぁでもその近辺の村の人達が農作物の被害が出てるんだって、助けたいと思ったからさ、受けてきちゃった」

 陽「奏らしいね」

 涼「まあ今回は素手ではやらないでね、あとは各々準備して明日の朝には出発するよ」

 奏「了解!」

 陽「はーい」

 荷造りをして、みんなで夕飯を囲み、入浴し、普段通りに就寝した。

 

 翌朝、五百雀の馬車乗り場でならんでいた、すると人陰が近づいてきて声を掛けられた、背格好からして中学生位の男女で、銀髪で短髪の少年エルフと、薄碧っぽい長髪の少女エルフだった。

 少年「ワイルドラビットの皆さんですよね、はじめまして、僕がエメルでコイツがフィラって言います、突然ですがメンバーは募集してますか?」

 突然の出来事に固まる三人、奏がはっとして言葉を返す。

 奏「あっ!ゴメンゴメン、えっと演奏見てくれたのかな?」

 エ「はい、皆さんの演奏で身体の芯から震えました!」

 フィ「うん、色んな音が混ざって弾けてあっちこっち飛んでた!夜空の星みたいだったよ」

 涼「そっか、君達は何か楽器出来たりするのかな?」

 フ「うん、お母さんにマンドリン習った」

 エ「僕はコントラバスってゆう楽器やってたよ」

 涼「へぇ〜、こりゃあツインギターいけちゃう感じじゃない?陽葵どう思う?」

 陽「そうだね、ツインギターだと音に厚みがでていいね!コントラバスかぁ、ベース任せられるね!でもさぁ両親はなんて言ってるの?」

 エ「僕達の親は去年町に流行り病が蔓延して死んじゃって、大人は殆ど居なくなっちゃったんだよ、子供だけで生きて行けるほど甘い世界じゃなくて、狩りに出ても魔獣に殺されるか、近くの町に行ったら差別にあって働き口もなく餓死したり、たまたま僕達はこの町に辿り着いて恵んでくれる人がいたりしたから、今日までなんとか困った人達のお手伝いで稼がせて貰ってたんだ」

 陽「………そっか、大変な想いしてきたんだね」

 涼「エメルとフィラ、まずはテストさせてくれ、二人がどれだけ演れるのか、自宅のスタジオでまず弾いてもらおうかな」

 奏「テストとかいるの?一緒に練習してればそのうち………」

 涼「いや、疑ってる訳じゃ無いけど、この先こういうやりたい人が居て、全員を採用する訳にもいかなくなるから、オーディションするのは前の世界でもあった事だし、俺はこの方針が良いと思うけどどう思う?」

 奏「涼なりの考えがあるって事なんだね、わかったうちはそれでいいよ」

 陽「私もそれで良いよ、早速行こうか」

 涼「ありがとう、じゃあ二人とも付いてきて」

 奏「そうくるよね、馬車あと少しだったのにしょうがないか、エメル、フィラおいで」

 涼は陽葵や奏を危険な目に合わせたく無い一心で、即採用などは敬遠するべきであると考えていた、自分の過去と照らし合わせて、入院生活で本当に治るのかもわからない病に押し潰されそうになっていた子供の頃の自分が不安な毎日を過ごしていた日々を重ね合わせて、この子供達の話を信じてあげたい気持ちも勿論ある、しかしもしこの子達の話が嘘でこの三人を貶めようとしている人間がいて、刺客として送り込まれている可能性もあるかも知れないと、考えすぎかもしれないが二人を守る為には色々と考える事は間違いではないと思っている。

 奏も涼の考えが分からないでも無かった、陽葵の姿を思い出すと胸が締め付けられる想いであった、しかし自分も子供の頃両親を事故で亡くし、この子達の力になりたい気持ちも勿論ある、オーディション形式にして、取捨選別していく事には葛藤する気持ちもありモヤモヤしていた。

 陽「じゃあ早速このギターとベースでまずは練習して弾けるようならオーディション始めようか」

 自宅の演奏部屋で二人に楽器を渡して、涼には電源になってもらう。

 奏「涼はすっかり電池人間だね、ウケる」

 涼「それな!でも当てはあるんだよな、雷白鹿(らしか)の角ってゆうのが可能性があるらしいんだよ、ただレアな魔獣らしくてな、しかも肉はだいぶ美味いから冒険者がその場で捌いて食べちゃうらしくて、素材自体がなかなか回収対象になりずらくて出回らないから、手に入らないみたいで実験もできないんだ」

 奏「その魔獣は危険な魔獣なの?」

 涼「らしいな、一番の出現エリアは普通の人が近寄れない魔力濃度の高い森か、危険度の高いダンジョンみたいなんだよね、気まぐれに出てきて結構暴れ回るらしいよ?」

 陽「さっ!そろそろ準備はいいかな?」

 エ「じゃあ、僕から」

 ベンベベベンベベ、べべべべべべべべ、ベンべべべべドベダベベベン

 陽「うん、即戦力でいけそうだね、譜面は大丈夫かな?」

 エ「うん、大丈夫だよ」

 陽「そっか、じゃあ次はフィラ準備はいい?」

 フ「うん、いくよ!」 

 ジャジャジャン、ギュオ〜〜〜ン、ギャギャギャキュイ〜ンギャギャギャクゥ〜ン

 涼「いやぁ、エレキ初心者とは思えないな」

 奏「そうだね、思わず聴き入っちゃった」

 陽「うん、いいね!色々作曲の幅が広がってきたよ、二人共問題なく合格だね」

 涼「ああ、そうだね、エメル、フィラ!改めて桜庭涼です宜しくね!」

 奏「早乙女奏だよぉ〜ヨロ〜!」

 陽「石川陽葵だよ、宜しくお願いします」

 涼「さて、俺達の素材探しの旅に連れて行くかどうするか」

 奏「うちは別に良いんじゃ無いかなって思うよ?目的地近くの村か町で待たせても良いし」

 陽「二人はここで待つのと、一緒に行くのとどっちが良いかな?」

 フ「一緒に行きたい」

 エ「僕も」

 陽「わかった、涼も奏もいいかな?」

 涼「了解!」

 奏「楽しくなりそうじゃん?」

 

 五人で馬車に乗り込み、一路、不破領にある(くるわ)山に向かっていた、不破領全体を円で囲うようにそびえ立つ山々の一番南側の山が、常に活火山となっており、その火口付近に住んでいると言う鳥の羽根を拾いに行く、と言うのが今回の旅の目的であった。

 涼「凄いな!天然の要塞みたいだな」

 奏「うわっ、谷底深そうだね、バンジーできるんじゃない?」

 陽「フィラとエメルは平気?」

 フ「うん、大丈夫、故郷を出る時同じ位の山越えしてきたから」

 エ「そうそう、しかも馬車で山越えだから楽ちんだよね」

 陽「そっか、気分悪かったら遠慮なく言ってね」

 馬車に揺られながら不破領の鱈丘(たらおか)と言う町に到着した。

 涼「まずは宿探してから夕飯食べて情報収集しようか」

 奏「オッケー!あっ、あれ宿じゃない?」

 涼「流石奏」

 宿に部屋を取り、荷物を置いて組合へ向かい依頼の湿地帯の場所を確認してから食事にする。

 ニナリ亭

 奏「で?火山の鳥ちゃんは実在するの?」

 涼「ああ、いるはいるらしいんだけど、ここ一年位鳴き声が聴こえないらしいんだよ、しかもどんな鳥なのか誰も姿を見た事ないみたいで、俺もその話が本当か嘘かわかんないんだよな」

 陽「鳴き声だけで鳥ってわかってる?それとも箝口令(かんこうれい)でも敷かれているのかもね」

 涼「可能性はあるな、鳴き声してるのに姿を見た事ないとか、可笑しいからな、だが自分達で探すしかないのは来る前から決めていた事だから、火口を調査しながら麓の湿地帯のカエルを討伐してこよう」

 奏「陽葵は無理しなくていいから、涼がメインで戦うから」

 涼「おいおい、奏が持ってきた依頼なんだから奏がメインだろ?」

 奏「なあフィラ、女の子にカエル押し付ける男ってどう思う?」

 フ「………」 

 涼「わかったわかった、フィラも困ってるだろ?俺がメインでやってやるよ!」

 奏は舌を出しながら笑っていた。

 陽「奏もあんまり涼をイジメないの。エメルも微妙な顔しちゃってるじゃんか」

 エ「ん?ああ、久しぶりに大勢でご飯を食べて色々想ってただけだよ」

 奏「よしよし」

 奏はエメルの頭をなでなでしている。

 涼「とにかく明日はフィラとエメルは宿で待機な、俺達三人は魔獣討伐と楽器の素材探しをしてくるからな、日帰りの予定だけど何があるかわからないからな、宿は前金で一週間とってあるから心配するなよ、よし!明日も早いから今日は解散だな」

 奏「陽葵、フィラお風呂いこ!」

 涼「俺達も行こうぜ、エメル!やっと一人風呂じゃなくなったな」

 奏「うんうん、まずは裸の付き合いだね」

 五人は大衆浴場へと向かう、涼は奏に耳打ちする。

 涼「町に入ってからつけられてるみたいだな、風呂でも油断するなよ?」

 奏「わかってるって、うちにまかしとき!」

 涼「頼んだぜ」


 浴場に到着して男女に別れると、どうやらつけてきた人物は女性だと判明した、奏は敢えて他の二人にはつけられている事は伝えずにいた。

 奏「奏ちゃ〜んチェック!」

 陽「何それは?」

 奏「これから隅々までうちが陽葵とフィラをチェックするって事」

 陽「うっ、今背中がゾワッてしたよ」

 フ「わたしもなんだか寒気がしました」

 奏「まあまあ、三人で楽しく、キャッキャウフフしようね」

 脱衣所で服と荷物を預けるタイプのシステムであった、つけていた女性も服と荷物を預けて一緒に浴場に入ってきた。

 陽「いや、奏の目が怖いんだけど?」

 フ「鼻息が背中に当たってますよ?」

 奏「あはははは、気のせい気のせい、それよりフィラ身体洗ってあげるからおいで」

 フ「………」

 奏はフィラの全身をくまなく洗う、洗いながら警戒は怠らなかった、陽葵は奏の雰囲気から察していたのであまり喋らずにいた。

 奏「んーーー!若い身体を堪能したよ!凄いスベスベで、うちは嫉妬しちゃうな」

 フ「奏ちゃんはお胸が大きいし、わたしのほうが負けてるよ」

 奏「次はあそこで無関係を決め込んでる陽葵を堪能してくるから待ってて」

 陽葵はバレたかと表情に出てしまっていた。

 奏「さぁ背中流しにきたよん」

 陽「ねえ、奏、さっきの店で…」

 奏は陽葵の唇に奏の右人差し指でいわゆるしー!として、言葉を遮る、ふざけたフリをして言葉を繋ぐ。

 奏「んん?チュウしちゃうぞ」

 陽葵は顔を真っ赤にしながら目を瞑る。

 奏は普通に陽葵が嫌がる反応をするであろうと思っていたが、予想外の出来事に困惑しながらキスをしてしまった。

 陽「んっ」

 その様子を見ていたフィラは顔を赤らめ、手のひらで顔を隠しながら指の間からことの成り行きを見つめていた。

 奏「んんっ」

 まあまあ長めのキスを終わらせ、気まずい空気が流れるが、つけてきていた女性は既に風呂から上がっていたようだった、奏は演技の延長のつもりでいたが、陽葵は流されるままキスをしていた。

 陽「欲求不満だったの?解消した?」

 少し俯きながら耳を赤くして奏に語りかけた。

 奏「そ、そ…そうだね、ありがとう?で良いのかな」

 気まずい雰囲気であったが、逃げる訳でもなく一緒に湯船に浸かり一緒に上がった、フィラもトテトテと着いていく。

 陽「いい湯だったね」

 奏「うん」

 フ「身体熱くなっちゃったね」

 無自覚のツッコミに顔を赤らめる二人

 陽「男子には内緒でね」

 奏「そうだね」

 フ「そうなの?」

 奏「そうなの」

 服を着て暖簾を潜ると涼とエメルは既に上がって待っていた。

 涼「遅かったね、何かあった?」

 奏「んー、どうかな?特に無かったと思うけど」

 涼「なんか歯切れが悪いな、なんかされたって事?」

 奏「あっ!そっちは何も無い」

 涼「そっち?!」

 奏「この話はおしまい!もう寝るよ」

 揃って宿へ帰りギクシャクしながら就寝した。

 

 翌朝、奏や陽葵はいつも通り元気に目覚めた!

 奏「おはよー!」

 陽「おはよう」

 涼「おはよ」

 エ「おはようございます」

 フ「おはよう」

 涼「じゃあ早速行ってみようか、二人は昨日言った通り待っててくれよ」

 エ「はい!」

 フ「は〜い」


 廓山の麓に到着して、涼がカエルの討伐に勤しんでいる。

 涼「こらこら、奏さん?俺だけがカエルちゃんの討伐してる気がするんだけど?」

 奏「うちの役目は陽葵を護る事だから」

 陽「涼頑張って」

 結局涼がカエル三十六匹討伐した。

 涼「あーもう、ヌルヌルすぎるな」

 奏「うわっ!経験者だから言うけど、洗わないと落ちないよ?」

 陽「うん、こっちには来ないでね」

 涼「チョット酷くないかな、二人共!まずは労いの言葉を掛けるのが優しさでしょ?」

 奏「言葉じゃそのキモち悪いの綺麗にならないよ?」

 涼「そうゆうんじゃ無くて、まぁいいや、あの池で洗ってくるわ、それから本命に向かおうか」

 涼は身体を洗い二人の元に戻りながらまた監視されている事を確認して奏にアイコンタクトをして頷く。

 涼「コソコソしてないで、そろそろ出てきて貰えるかな?」

 奏「そうそう、もうずっとバレてるからね」

 すると木の陰から色白碧眼金髪耳長の白い生地に蒼いラインをあしらった服を纏って腰には細剣を装備している美少女が現れた。

 涼「やっと出てくる気になったか、で?ここの鳥の正体をバラされたく無いとかそんな理由?」

 少女「いえ、私の連れの世界樹の精霊がハイエルフ様の力を感じると言っていましたので暫く側で観察させて貰いましたの」

 奏「ハイエルフねぇ、………」

 涼「まぁ理由はわかったけど、あんたは何者なんだ?」

 少女「これは失礼。エルオ・ハミニールと言いますエルとお呼び下さい、そしてこの世界樹の精霊がミロリアと言いますわ、以後お見知り置きを」

 奏「うちは奏、こっちが陽葵、あっちが涼」

 涼「で、結局ハイエルフってのは何なんだ?」

 エ「ミロリアは世界樹の精霊だから基本この大陸の樹々と繋がれるのだけれど、魔脈の力の強い所はあまり繋がれないわ、しかも時間差も生じるわね、だけど確かに貴方達から我々エルフの祖にして精霊達の王たるハイエルフ様のお力を確認したと私に教えてくれたから、それを確認しにきたと言う所かしら」

 奏「で?結果は?」

 少し空気がピリつく。

 エ「ええ、その陽葵様から確かにハイエルフ様のお力を感じる事ができたわ、不思議な事に何故か身体がヒューマンその物ですが」

 涼「陽葵をどうするつもりだ?」

 エ「是非我々の大里であるニュグリースへと招待したい所ですが、エルフである私が指図できるはずもなく、ご提案差し上げる事しかできませんわ、ですので強制力も何もありませんので敵意を向けるのをやめて頂きたいですね」

 奏「そう」

 奏と涼は胸を撫で下ろす。

 エ「と言う事ですが、陽葵様いかがでしょうか?お手隙であればご案内させて頂きたいのですが」

 陽葵が沈黙を破る。

 陽「正直言ってハイエルフと言われても、つい最近知った事実だから、イマイチ実感が沸かないのと、祖先だと崇められても私が産んだ訳ではないので、困るという事でしょうか、そのニュグリースへ行ってもなんのお役に立てないと思いますよ?」

 エ「私達が陽葵様を頼りたいとか、崇め奉りたいとか、そういった意味でお誘いしている訳ではありませんので、一度でもただ立ち寄って頂けないかと思案しただけですので、無理にお誘いは致しませんわ」

 奏「やんわりと誘ってくれてるだけで、敵意も無いのはわかったんだけど、今は目的があってその素材を手に入れたいから、この山にきたんだよね。話は用事が終わってからでもいいかな?」

 エ「その、失礼を承知で伺いますが、用事と言うのはどういった用件ですか?私でよければ是非お手伝いさせていただければ」

 涼「まぁ話しても問題ないよな」

 二人の顔を見て頷きあう。

 涼「実は………」

 ギターの素材を取りに火山の火口へ行く予定である事をエルオに伝える。

 エ「わかりました、これでも里では五つある騎士団の蒼零騎士団(シャローセ)の副団長の腕前ですので、足は引っ張らないかと」

 奏「いいんじゃない?悪意があるわけじゃ無さそうだし」

 涼「奏はいつも判断早過ぎるとは思うけど、今回は賛同しとくかな」

 奏「はぁ?なんか上からじゃない?」

 涼「そんな事ないだろ?褒めてるんだよ」

 涼はなんとか誤魔化す。

 奏「怪しいんだけど。まあいっか、陽葵はいいかな?」

 陽「うん、別に構わないよ?」

 奏「じゃあ決まりだね、宜しくエル」

 エ「ありがとうございます、因みにこの火山に棲息している大きな鳥だと多分不死鳥の事だと思いますわ」

 涼「え?火の鳥って事?」

 奏「羽根燃えてるんじゃない?」

 陽「採取不可能なの?」

 エ「いえ、まず不死鳥は常に燃えてる訳ではありませんわ、そしてその辺りの獣や魔獣と違い知的で話も出来るはずですわ、でも精霊からの声を聴くとどうやら数百年ぶりの子を成したとの事ですので、今は話を聴いてくれるかは不明ですの」

 奏「当たって砕けろじゃない?折角ここまで来たわけだし、話し出来る可能性があるなら行く一択でしょ?」

 涼「そうだな、生え替わりの羽根でもいいわけだからな、落ちてるのを貰えれば」

 陽「エメルとフィラも楽しみに待ってるからね、行こう!」

 エ「わかりました、私も助力させていただきます」


 山を登り始めて二時間がたった。身体能力が飛躍的に上がっている為、苦もなく頂上へと辿り着き火口を見下ろしていた。

 奏「流石に暑いね」

 涼「そうだな、降りられるかな」

 エ「お任せ下さい、水包冷護(ブリスコール)

 四人は冷たい水蒸気の様なものに包まれていた。

 陽「あー真夏の日本にこの魔法欲しかったなぁ」

 奏「エル、マジ有能じゃんか」

 涼「凄い良いね!エアコンみたいだな」

 エ「さて、降りるのが難易度高いようですので、風移転動(エラネシウェル)

 地面からフワッと浮き上がりフワフワしている。

 涼「有能な魔法師過ぎるな」

 奏「これはどうゆう魔法なの?」

 エ「これはあくまで少し浮遊させるだけの魔法なので、高く飛べる訳でも、落とし穴のような場所で浮いては居られない魔法ですわ、なので溶岩の方へは行かないでですわ」

 陽「なるほど、エル凄いですね、私も色々出来たら楽しいだろうな」

 エ「私などまだまだのエルフにございますわ、陽葵様の周りには沢山の精霊が楽しそうに踊っていますので、すぐに使えるようになりますわ、羽根の採取の用件が終わりましたら、それ以降の急ぎの用事がなければ私お教え致しますわ」

 陽「エルちゃんが忙しくなければお願いしようかな」

 エ「お任せなのですわ」

 仲も深まりいよいよ火口へと降りて行くのであった。

 

 

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