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大和國最強冒険者

 大柄な男「がっはっはっはっはっは」

 お付きの男「今日もご機嫌ですね、東條巌(とうじょういわお)様」

 東條巌は洋風の黒いフルプレートメイルに身を包み黒いマントに左手には大きな縦長の盾に背中には普通の冒険者には両手で装備するような大剣が背負われている、これを巌は片手で軽々振り回す。

 巌「おう!今日も快便じゃ!がっはっはっはっは、三ツ矢は快便じゃったか?堅苦しい言葉はやめろというに」

 三ツ矢迅一(みつやしゅんいち)やや細っそりしているが背丈は百九十センチある中年男性で、扱う武器は双剣である、元は忍び頭であったが後進に頭を譲った為今は冒険者をしている。

 三「いや、女性陣もいらっしゃるので下ネタはお止め下さい。では組合長、お話を始めて下さい」

 ここは大和國首都である武尊(たける)の冒険者組合の一室である。

 組合長の有樹昴(ありきすばる)は女性でありながら漆黒級の冒険者に上り詰めた冒険者であったが、左腕を失い隻腕となった折、冒険者は引退していた。

 昴「はっはっは!相変わらずだねぇ(いわ)ちゃんは、まぁ座っとくれ」

 三「(いわお)様をいわちゃんと呼べるのも昴様だけですね」

 昴「相変わらずカチカチに硬い奴だな三ツ矢は」

 三「それはそうでしょう、大和國で頂点を極めしお二人を前にしていますからね、ですよね静佳さん」

 静「うちに話ふらんといて、はよ要件話したって」

 伽羅夢静佳(きゃらむしずか)黒髪ロングの真っ赤な和風装備を着こなしている、武器は刃渡五十センチの短刀と弓矢を使いこなす、二十代後半の若手有望株である、そして有樹昴の孫でもあり幼少より鍛え上げられてきた強者でもある。

 昴「まぁそうね、じゃあ本題に入ろうか、どうやら最近反魔法組織であるサイマキナ戦線の活動が活発になりつつある、奴等の狙いは皆も知っての通り魔脈の管理を奪い、魔法を絶滅させようと画策しているようでな、今までは五年前の襲撃以降我々の警備も厳重であったからか、本格的な活動は抑えられてきた訳だが、奴等もいつまでも燻ってる訳でもないだろう事は分かっていた訳だが、密偵の報告によるとどうやら少し前に感じた世界の揺らぎ以降活動が活発化し始めたらしい事が報告書に書かれていてな、先手を我々組合側が取れれば奴等の出鼻を挫けると言う話だ、どうかな巌ちゃん?」

 巌「なるほどな、この東條巌の使い所と言う訳じゃな、あいわかった、で?時と場所は何処だ?」

 昴「話が早くて助かるよ、情報漏れを防ぐ為に決行は明朝陽が登ったらすぐ、場所は首都武尊より東へ七里行った周布流(すふる)の町の三番区にある茶色い倉庫で取り引きがあると情報が入ったから、少数精鋭の一気呵成で首謀者諸共縛り上げると言う作戦なのだけども、ここにいる四人と私の部活十五名による捕物でね、巌ちゃんがいないと厳しいからね、頼りにさせてもらうよ」

 巌「がっはっはっはっは、三ツ矢がいりゃ大丈夫じゃろ?静佳もおるしの、儂は頑張って若いもんについていくだけじゃ、がっはっはっはっは」

 静「なにゆうてんねん、あんたがウチの盾になったらんかい」

 静佳が冗談混じりで笑いながら突っ込む。

 巌「そうじゃな、老兵は肉の盾になって………死んでしまうわい、がっはっはっはっは」

 三「いつもの感じで安心しますよ」

 昴「はっはっは、さぁて各々の準備して行くよ!」

 巌「うむ」

 三「はっ!」

 静「あいよ」

 

 周布流の町の宿屋の一室に五十嵐蒼呀(いがらしそうが)とリメルアと宇野塵邪(うのじんじゃ)の三人が話し合っていた。

 蒼「塵邪の話だとあの倉庫にリメルアを攫った奴等の指示役が何かの取り引きをするって事だよな?」

 塵「ええ、間違い無いです!情報の信憑性は確かですよ?」

 宇野塵邪とは蒼呀とリメルアがダンジョンでレベリングをしていた時に、ダンジョン最奥の恐竜の様な魔獣に挑み、塵邪の冒険者仲間が全滅して一人、生命の危機に瀕していた時に蒼呀達が生命を救った事から恩義を感じてから、二人に付いて行くようになった冒険者であった、世間知らずな二人には丁度世の中の動向などに詳しく、各地の情報屋とも連絡の取れるかなりの情報通であったため二人も同行を許可したのだった。

 リ「僕を狙った理由まではまだ分からない感じかな?」

 塵「そうですね、まだはっきりとは………」

 リ「まぁ大体僕の身体が目当てだろうけども」

 蒼「身体って……その幼女体型で言われると違う意味になりそうだけどな」

 リ「違う意味?多分血とか爪とか身体全部狙われる理由があると思うよ?」

 蒼「あー、なるほどな!で?そいつらは何時に取り引き始めるんだ?」

 塵「真夜九つに三番区の茶色い倉庫で始まりますね、それまでゆっくりしましょう」

 蒼「午前零時位か、まぁそうだな、時間は結構余裕あるな」

 リ「はい、はい!僕水浴び行ってきても良い?」

 蒼「ああ、宿に露天風呂があるみたいだぞ?」

 リ「一緒に入る?背中流そうか?」

 蒼「女の子が男と一緒に入らないぞ」

 リ「そうなの?蒼呀はお兄ちゃんだと思ってるから平気でしょ?」

 蒼「本当に妹だとしても駄目だ!とにかく行ってこい」

 リ「兄ちゃんのケチ、いつか後ろから勝手に入ってやるんだから」

 蒼「ん?なんか言ったか?」

 リ「なんてもなーい」

 リメルアは笑いながら露天風呂へ向かっていった。

 塵「じゃあ私は詰めの情報を仕入れてきますね」

 蒼「ああ、頼む」

 塵邪は部屋を後にしてこの町にいる情報屋の元へと出掛けて行った。

 

 横柄な男「おい!周辺の警戒は大丈夫なんだろうなぁ?昨日の夜ドワーフの奴等と揉めて暴れてきたから眠てぇからよぉ、あんまイライラさせるんじゃねぇぞ」

 部下「警備は抜かりありませんライザー様、お食事にしますか?」

 ラ「そうか、キラレスの事は信頼してっから頼むぜ、飯は喰ってきたから時間まで寝るからよ、時間になったら起こせよ」

 キ「わかりました、ではお休み下さい」

 ライザー・マキシミールこと影の3番はサイマキナ戦線幹部である、虎人族であり体躯は筋肉の塊の様だった、ここ周布流で魔脈の活動を科学技術に転嫁する装置の実験に立ち会う為に足を運んだのだった。

 キラレスは豹人族で、ライザーより引き締まった身体をしていた、約九年前に結成したサイマキナ戦線であるが、魔獣と魔法師の激しい戦闘でキラレスの村は復興出来ないほど壊滅して、ライザーに拾われた日から恩を感じて仕えている、魔法は使えないが俊敏な速度と投げナイフが得意な戦法である。


 三番倉庫で準備は着々と進んでいた、魔脈のエネルギーが充満していたダンジョンで採掘できる魔核石を、大型の水蒸気式タービンの中の水を沸騰させ、その水蒸気の力でタービンを回し発電する仕組みである、そう現代世界の原子力発電所の仕組みそのままであった、この世界にも魔道具というものが存在するが、これもまた魔法師に定期的に魔力を補充して貰わないといわゆる電池切れとなってしまう、魔脈や魔核石などからは魔力としての力は抜き取れない為魔法師の地位はかなり高くなり、貧しい平民は相手にされない場合もある。

 ラ「順調かぁ?」

 倉庫の扉からライザーが入ってきた、隣にはキラレスとキラレスの部下二名もいた。

 研究主任の女「あらあら、まさかライザーさんがいらっしゃるとは思ってませんでしたわ」

 キ「で?進捗状況はいかがですか?マリルさん」

 マ「ふふふ、今からお見せするわ、で?そちらは用意できまして?」

 キ「ええ、私の部下の鞄に入っていますよ」

 マ「そう、それは良かったわ、前回は龍の血が手に入らなかったから研究成果を渡せなかったけれども、今回は円満取り引きができそうね」

 ラ「俺が来てんだから、ご希望の品は持ってきてるに決まってんだろ?で?電気ってのは出来たのか?」

 マ「ええ、もちろんよ、この電球と言うものは電気エネルギーによってこのフィラメントと言う部分が発熱と発光をして灯りがともります、他にも冷蔵庫と言う電気の力で冷やす事のできる電化製品もありますが、まだ完成には至っておりませんので次回ですわね」

 マリルの合図でタービンが勢いよく回る音が聞こえてきた、そこから伸びる太いケーブルが変圧器へと繋がれて、そこから更に細い配線がスイッチを介して白熱電球へと繋がっていた。

 マ「さて、勿体つけましたがこれが科学の力で…」

 そこまで喋った所で扉が蹴破られた!

 バァーン!!

 リ「僕を誘拐した奴はココだな!」

 蒼「リメルア!先走るなって言ったばかりだろ?」

 塵「………はぁ、せっかくの作戦が、………」

 ラ「手前ぇらは何者だこの野郎、邪魔しに来たならそれなりに覚悟してんだろぉな!」

 キラレスの部下が刀を抜いて走り出している、キラレスは取引の鞄と研究資料を守っている。

 マ「犬か猫か知らないけど、嗅ぎつけられちゃったみたいね、どうします?爆発もさせられるけれども、かなりの爆発になるわよ?」

 キ「少し様子を見ましょう、相手は三人だけなので制圧出来るかもしれませんからね」

 マ「わかったわ、爆発させたきゃ早めに教えてね」

 キ「わかりました、他の研究員の方は避難して下さい」

 リ「爆発ってゆってるよ?兄ちゃん」

 蒼「マジか、そりゃ阻止しなきゃだな、あれだけの物が爆発したら、この町なんて半分無くなるぞ」

 ラ「俺の相手はアイツだなぁ、俺は暫く集中しなきゃなんねぇからよ、キラレス後の判断は任せっからよぉ、んじゃいってくるぜ」

 キ「ご武運を!!お前達もライザー様を補佐しろ!」

 ライザーが一気に蒼呀の目の前へと移動してきた、部下もリメルアと塵邪へと刃を構える。

 蒼呀も刀を抜きライザーと対峙する、ライザーの武器?はさっきまで人に近い姿だったのが、今は虎の要素が強く出ているその手から伸びる爪が妖しく光っている。

 ラ「小僧、お前がこの中じゃあ一番強そうだからなぁ、俺が相手になってやるよ」

 蒼「評価してくれて有難いけど、そんなに強くは無いと思うよ」

 ラ「ぬかせ!!」

 ライザーから先制攻撃が繰り出されると同時に部下達もリメルアと塵邪に襲い掛かる。

 蒼「身体強化(ライカル)

 ライザーの初撃の爪は躱わせたが蹴りを受ける。

 蒼「ぐう!」

 蒼呀は壁まで飛ばされたが、壁を蹴る体制となり一気にライザーへと飛んで戻る、しかしライザーも追撃で此方に向かってきている、蒼呀は刃を振るう!ライザーもわかっていたのか爪で受けながら蹴りを繰り出すが、蒼呀も身体を捻って躱した。

 ラ「なにがそんなに強くねぇだ?ふざけたガキだぜ、今更だがここに何しに来やがった?」

 蒼「ああ、問答無用かと思ったら話は出来るんだ、俺達は龍の血を欲しがる奴にケジメを付けさせにきたんだよ、またやらないとは言えないから、そうゆう組織があるのであれば潰しておこうと思ってね」

 ラ「はっ、この人数でか?あんま世の中舐めてっと痛い目を見るって事を教えてやらなきゃわかんねぇみてぇだな、俺が教えてやるしかねぇな」

 やり取りしてるうちにリメルアの方は終わっていた。塵邪の方は睨み合っている。

 リ「弱過ぎじゃない?僕の相手」

 塵「いや、リメルアが強過ぎるんだよ?」

 ラ「あっちのガキもバケモンかよ?」

 リ「兄ちゃん手伝う?」

 蒼「いや、俺に任せろ」

 リ「わかった、待ってるね」

 やり取りが終わった瞬間二階の窓から何者かが窓を割りながら入ってきた。

 ガッシャーーーン!!ドシンッ!

 巌「がっはっはっは、足がジーンとしとるわ年には勝てんの」

 三ツ矢は素早くリメルアへと双剣の一撃を繰り出していたが、躱された。

 三「今のを躱しますか」

 静佳はライザーに向けて矢を放っているが、ライザーの爪で防がれる。

 静「あかん、一本目防がれてもうた」

 昴は矢を防いだ隙をついてライザーに蹴りを繰り出しているが、素早く躱されてしまった。

 昴「こいつはなかなかの化物だね」

 蒼「リメルア、塵邪!」

 蒼呀は二人と目をあわせる。

 巌は背中から大剣を抜き、その巨体からは想像できない素早さで蒼呀へと上段からの振り下ろしを繰り出すが、身体強化(ライカル)のおかげかなんとか躱すことができた。

 巌「おお、儂の初見の一撃を躱しおったわい、身体の使い方は(つたな)いのに動きは凄いの」

 一連の流れを見てキラレスはマリルへ爆破の指示を出してマリルを脱出させていた。

 キ「ボス!」

 と一言だけ叫びながら部下にも目で合図を送る。

 部下は倒れていた方の部下を抱えて脱出をして行く、ライザーが援護していたので容易に逃げ切る。

 静「逃すと思ってるん」

 矢を放つがライザーは完全に見切っていた、そのままライザーも逃走した、それを確認してキラレスも逃走した。

 三ツ矢はリメルアとジリジリと距離を詰めている、三ツ矢の背後から昴も様子を伺っている、静佳はライザーを逃してしまってからは塵邪と対峙している、巌は戦況を確認しながら蒼呀を逃すまいと重圧をかけている。

 蒼「貴方達が何者か知りませんが、あの装置爆発したら少なくともこの町の半分は無くなりますよ?下手したら町全部無くなるかもしれないけど」

 昴「油断させようとしたって無駄だよ、あたしらはあんた達を逃がさないからね」

 リ「おばさん、兄ちゃんの言ってることは本当だよ?アイツらの逃げる時間考えたらもう残り時間少ないよ?」

 静「あかん!ゆうてる事ほんまかも知れん、なんやあの物体おかしいで」

 巌「そうじゃな、殺気も無いし、おばさん呼ばわりの次はお爺ちゃんと呼ばれてしまうかも知れんからな、どれ」

 巌は素早く目の前の大きな機械の真下に走った、おもむろに大剣で切り裂いた!

 三「いきなり斬ったら危ないですよ、何事も起きなかったから良かったですが、たまに巌様はやらかしますからね」

 昴「まったくだよ?おばさん呼びはそのまま知らんぷりしようとしてたのに、巌ちゃんがぶり返すから突っ込まなきゃいけなくなっちまったじゃないか」

 静「ほんまこの人らと任務に出るとこうなるんよな」

 蒼呀達は武器をしまい戦闘体制は解いていた。

 昴「で?あんたらはさっきの奴等とは敵対していたのかい?」

 蒼「そうですね、ある事情でこの組織を潰しておかないとならない事情がありまして、戦っている最中に貴方達が入ってきたので敵の増援かとも思ったのですが、すぐに違うとわかったので受けに回らせてもらいました」

 巌「まさか首都武尊から程近い周布流の町でこんな代物が出来ておるとはな、この町には結構立ち寄っておったが気付きもせんかったわ」

 三「そうですね、私も昔馴染みの情報網でも耳に入ってきませんでしたね、こんな大掛かりな設備を隠し通していたとなると、かなり厄介な組織になっていると言わざるを得ないでしょう」

 静「その子らはどないするん?拘束しとこかぁ?」

 昴「いや、素直に武尊まで来てもらって詳しい話を聞ければ拘束はしなくていいんだけど、協力してくれるかい?」

 蒼「ええ、構いませんよ?でも喋れない事もありますけど」

 昴「まあそうだろうね、喋れる範囲でいいからお願いできるかい?」

 蒼「そう言う事なら行きましょうか」

 巌「儂は東條巌じゃ、ヌシはなかなかのチカラを宿しておるの、天ヶ崎の倅の十蔵以来じゃな、嫌じゃなければ儂が暫く剣術をみてやろうかの?才能を埋もれさせる事が勿体無いからの?どうじゃやるか?」

 三「巌様は大和國最強冒険者ですので有意義な時間となる事は私が保証しますよ」

 蒼呀はリメルアと塵邪を見てから返事をした。

 蒼「ではお言葉に甘えたいと思います。俺は五十嵐蒼呀、こっちがリメルア、こっちが宇野塵邪です、暫くお世話になります」

 昴「私が有樹昴で孫娘の伽羅夢静佳と巌ちゃんといつも一緒にいる三ツ矢迅一だよ、しかし巌ちゃんが教えるなんて何年振りだい?迅一以来かい?」

 巌「ふむ、どうじゃったかな、三ツ矢のあとは三人位いたかの?」

 三「そうですね………、三名いましたかね」

 昴「まぁあとは武尊に戻ってから話そうかね」

 蒼「わかりました、ではいきましょう」

 昴「あとの事は静佳に指示してあるから、お前達頼んだよ」

 昴の部下達「はっ!お任せください」

 後始末は静佳を先頭に部下達に任せて一路武尊へと向かう。

 

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