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14/30

17年前

 赤子「おぎゃぁおぎゃぁおぎゃぁ」

 (あれ、私死んだと思ったけど赤ちゃん?)

 父「おお、元気な女の子だな、二人とも頑張ったな、ありがとう」

 母「ええ、お腹の中から元気いっぱいだったからね、生まれてくれてありがとう」

 (どうやら私は転生したらしいが、産んでくれてこうゆうのもなんだが、親ガチャ外したみたいだな、見渡すがなんとなく貧しさが見て取れる、匂いもカビ臭いし、思ってた中世の洋風の貴族の家とかじゃないわけ?てゆうかまずは神様にあってからチート貰って楽々持て囃されながら主人公まっしぐらじゃないの?)

 

 不満だらけの異世界転移生活が始まり、一応順調に成長していき五歳となる。

 瑠夏(るか)「お父さん、魔法とか使えないの?」

 父「ああ、この前村長が魔獣を倒したアレかい?誰でも使える訳じゃ無いんだよ、瑠夏ももう5歳だから使えるならそろそろ兆候が出るらしいんだけど、父さんも母さんも使えないからどうだろうな?」

 (驚愕の事実だよ?誰でも使える訳じゃ無いですって?はぁ?しかも口ぶりだと血縁じゃないと無理って事?前世でも惨めったらしい人生だったのに、今世でも惨めに生きなきゃいけない訳?何か考えなくちゃ不味いね、そう言えばラノベだとこんな時はステータス見れたんだっけ、後でやってみるか。)


 瑠夏は辺りに人が居ない事を確認して“ステータス”と唱えてみる。


 瑠夏      Lv1

 種族      天狗

 職業      なし

 身体能力    Lv0/10

 魔力      Lv0/10

 風魔法     適性/10

 

 地球負荷経験値 1752463ポイント

 

 (あれ?魔法の欄があるじゃん、天狗?ポイントって何よ?)

 ポイント部分を指でなぞると

 【地球での肉体が存在しないので、すぐにポイントを振ることが可能です。】

 (ポイントを振る?ステータス強化出来るって事じゃない?これよこれ!転生特典でしょ?早くステータス画面出せば良かったな、でも何を上げるか、迷うな)

 母「瑠夏ー、どこに行ったの?」

 瑠「やばっ、まずは良い子を演じないと、一人で生きていけるまでは」

 ポイントの事はこれ以来スッカリ忘れてしまう事となる。


 瑠夏七歳

 貧しいながらもこの村でなんとか生きてきた、友達も出来、楽しい毎日を過ごしていた。その時までは………。

 村の男衆は週に一度の狩りに出ていた、空模様もさっきまで晴れていたのに不気味な暗雲が立ち込めていた。

 瑠「絢音(あやね)ちゃん、あっち行ってみようよ」

 絢「うん、あっ!瑠夏ちゃんこっちにお花咲いてるよ!」

 瑠「あー、なんだか嗅いだことのない甘い香りだね」

 普段は村の出入り口にいるはずの見張り役の男衆がたまたま目を離した隙に、森の奥へと絢音が走っていってしまった為、瑠夏もついていってしまう。

 瑠「チョット待ってよ絢音ちゃん、はあはあ」

 絢「あはは、こっちこっち、あはは」

 はしゃぎながら走っていると絢音は何かにぶつかる。

 絢「痛っ!」

 絢音の前には異形の人型が立っていた。

 瑠「絢音ちゃん!逃げて!!」

 次の瞬間絢音の声は二度と聴けない状態となってしまった。

 その人型は全身が深緑の筋肉質で、鋭い爪から絢音の血が滴り落ちていて、顔は恐ろしい牙が見え、ツノが生えた身の丈二メートル位のいわゆる鬼のようだった。

 瑠「ひっ!もう死ぬの?嫌、いやーーーー!」

 鬼が瑠夏へと迫る!

 瑠夏は身体中から湧き上がる何かを感じていた!

 瑠「嵐槍乱舞(らんそうらんぶ)

 収束した風が無数の槍となり鬼へ襲いかかる、周りの木々を薙ぎ倒しながら鬼も貫き危機を脱した、が何やら燃えている匂いがして振り返ると、村の方から煙が上がっている!

 瑠「え?どうゆうこと?」 

 瑠夏は絢音の遺体にごめんねと一言言った後、村へ向かい走り出した。


 村人「きゃー!」

 男「ぐわぁ」

 どうやら先程倒した鬼の仲間が村を襲っているようであった、圧倒的な数の鬼がおり瑠夏は見ているしか出来ないでいた。

 瑠「なんでよ?なんなの?魔法だけじゃあ守りきれないよこんなの!もっと文明的な世界じゃなきゃ」

 男衆が戻ってくるも力の差は明らかであり、村長の魔法も多勢に無勢であり最期は囲まれて殺されていた、瑠夏は物陰から見ているしかできず震えていた。


 気がつくと静けさが辺り一面を包んでいた、虫や鳥などの声も聞こえないまさに静寂であった。

 瑠「………」

 自分の家へ歩き出す、村長や近所のおばさん、おじさんの遺体が転がっている、そして自宅が見えたが破壊されていて原型はない、そして自宅前にて母は絶命していた、父も母の後ろで倒れていたが、こちらはまだ少し息があった。

 父「る…瑠夏か、……ごめ…な、父さ……か……んで元……る…を」

 瑠「父さん!嫌ーーー!」

 父も絶命した、全てを失いぼーっとしていると刀を腰に差した青年達が現れた。

 青年1「くそっ!遅かったか、まだ息のある者はいないか探すぞ」

 青年2「ああ、しかしこれは………」

 女性1「いいからさっさと動く!ギリギリな人もいるかもしれないでしょ」

 女性2「こっちに少女がたってるわ、瀬奈(せな)回復お願い」 

 瀬「わかった寧々はあっち見てきて、勇次郎はあの火を消してきて」

 勇「わかった、剣之介も手伝ってくれ」

 剣「おう、ここに井戸があるから今汲み上げるよ」

 瀬奈という女性が瑠夏の側へと歩いてきた、が瑠夏は立ち尽くしている。

 瀬「………お名前、言えるかな?」

 瀬奈は間近で瑠夏を見て言葉をかけづらかったが一息飲んで話し掛ける。

 瑠夏は視線を落として喋り出す。

 瑠「瑠夏………」

 瀬「瑠夏ちゃん、怪我は無い?」

 瑠夏は無言で頷く。

 瀬「私達がもう少し早く着いてれば、違った未来があったかもだけど、ごめんね」

 瑠夏は横に首を振る。この人達が来ていても多分無理だっただろうと思っていた。

 瀬「お父さんかお母さんは?」

 瑠夏は二人を指さす。

 瀬「………そっか」

 瀬奈は二人に目を瞑り手を合わせた。

 瀬「まずは村の中央に行こう」

 瀬奈と手を繋ぎ村の広場へと歩き出した。

 謎の男性「瑠夏ちゃん!生きていたんだね」 

 それは村長の息子の山雀玄次(やまからげんじ)であった、表情は何故か半笑いであった。

 瑠夏は無言で頷き瀬奈の陰に隠れるように振る舞う。

 玄「おいおい、村の唯一の生き残り同士仲良くしようぜ?でもまさか、これだけの襲撃で瑠夏ちゃんが生きてるなんて思ってもみなかったな」

 瀬「これは大鬼の仕業ですか?」

 玄「あ?瑠夏と話してんのに何割り込んでんだ?お前らは何だ?」

 玄次は苛立ったように話し掛ける。

 瀬「これは失礼しました、潤香の町の冒険者組合に、大鬼が山雀村へ集団で向かっているとの目撃情報が入ってきまして、たまたま私達がいたので先遣隊としてきました。全部で四名です」

 玄「そりゃご苦労でした、俺も疲れたから適当に休んでるから、用があったら呼んでくれ」

 瀬「私達は特に無いでしょうが、あとで組合職員に事情を話して頂くとおもいます」

 玄「あっそ」

 玄次はそう言うと自分の自宅へと帰って行った。

 瑠夏は何か違和感を感じていた、玄次とは仲良くも無いし、接点もたまの祭りなどで顔を合わせる程度で名前を呼ばれた事も無い、玄次の名は父から聞いていたので知っていた程度の仲なのに、半笑いで瑠夏ちゃん?通常の七歳児であれば、こんな観察も考察もするわけが無いのだが、前世で十八年生きてきた瑠夏だから、なんとなく怪しいと思えたのだった。

 瀬奈は瑠夏にここで待っててと言い残し、村人の埋葬やら火事の後始末などをして回っていた。

 瑠夏は自身の直感なりに動き始めた、思い返すと七歳になるまで嗅いだことの無い甘い香りがしていたのを思い出した。

 絢音の遺体があった場所へ行ってみるとその匂いがしている、地面に青い液体があり、それが甘い香りの正体だと判明する、そう言えばさっきも同じ匂いしてたな、玄次が話しかけてきた時だな、一応液体のついた葉っぱを採取しておく。 

 剣「瀬奈から聞いたけど瑠夏ちゃんだっけ?一人で出歩いたら危ないよ?」

 瑠「あの、これ」

 液体のついた葉を渡すと剣之介の顔色が変わる。

 剣「これは!大鬼を興奮状態にする薬品じゃないか、じゃあなにか?これは人為的にこの村に誘い込まれたって事か?俺だけじゃ判断できないな、瑠夏ちゃんこれを何処で?」

 瑠夏は最初にあった場所や先程玄次と対峙した際に同じ甘い香りがしていた事を思い出して剣之介に話した。そして勇次郎、瀬奈、寧々、剣之介の四人で話し合っている、確かに瀬奈が先刻話していた際に甘い香りがしていたのは気にはなっていたが、証拠固めが不十分だと逃げられてしまうのでは?という事でまとまり、追加で冒険者が来るか、組合員が来てくれるまで待つ事とした。

 

 組合員の円華(まどか)「なるほど、話はわかりました、後発隊で容疑者宅を包囲し、逃亡を阻止しながら確保致しましょう」

 山雀宅を囲むように組合員が配置し、円華が扉を叩く。

 ドンドンドンドンッ!

 円「山雀玄次さん、いらっしゃいますよね?」

 すると奥から床を走っている音が聞こえてくる、ドッドッドッドッドッ!!バァン!

 玄関の扉を蹴破り玄次が飛び出してきた、両手に日本刀を携えて!

 走って来る音が聞こえていたので、円華は扉から離れて臨戦体制へと移行していた。

 円「何故武器を持ってでてきましたか?」

 円華の問いに少し沈黙が流れたのち

 玄「お客様にはおもてなしをしてやらなきゃならねぇからな」 

 玄次はいつもの半笑いの表情で舌舐めずりをしている。

 円「なるほど、ご自分のした事の意味が分かっていてのこの行動でしたか、大人しく連行される気は無いという事ですね」

 玄「何故俺が連行されなきゃならねぇんだ?あぁ姉ちゃんよぉ、俺が何をしたってんだ?」

 玄次が苛立ちの表情に変わる、包囲している冒険者達にも緊張が走る。

 円「貴方が大鬼をこの村に引き入れたのはわかっているのですよ?なんの罪もない人々を悪意に晒した貴方のような秩序を乱すものは放って置けません、ですので大人しくしてくれるとお互い楽なのですが、それは叶いそうにもありませんね」

 玄「あぁ?ふざけるなよ、なんの罪も無い?俺はよぉ村長の次男坊だからって理由で魔法が使えて当然みたいな奴らがどうなろうが知ったこっちゃねぇんだよ!小さい頃に魔法が出来ないとわかった時の親父の落胆した顔!母親の冷たい瞳!兄貴の嫌がらせ!村人の白い目!それの何処が罪が無いってんだぁ?んな奴等は死罪で当然だろうがよ!そしてそんな奴等の味方をするお前らも勿論俺の敵なんだから大人しくするわきゃねぇんだよ、馬ぁ鹿!」

 円「だからと言って今回の事をなかった事には出来ません、魔法は今の世にとっても特別な能力であり、それを行使出来る人物は貴重である事にはかわりありません、貴方の受けた仕打ちに関しては貴方にしかわからない嫌な想いもしたのかもしれませんが、だから殺すとは貴方の我儘にすぎないでしょう、そして抵抗するのであればそれなりに対処させて頂きます」

 このやりとりを遠くで聞いていた瑠夏は自分の中の矛盾を抱え始めていた、特別な力を持ってたら偉い?選民思想みたいな世の中が正しいの?でも両親を殺された怒りは何処へぶつければいいの?と。

 玄「別に許されようとか思ってもいねぇよ、ただこんな糞みてぇな魔法至上主義な世の中ならよ、俺がぶっ壊してやろうと思っただけだからよ、手加減はいらねぇぜ、俺も手加減しねぇからよ?」

 円「そうですか。では粛々と使命を果たしましょうか皆さん」

 冒険者は頷き、攻撃体制へと移行した瞬間、玄次が素早く木々の陰を利用しながら冒険者を一人斬る、すぐさま移動してまた一人、地形を利用して魔法対策もしている、玄次はだいぶ近接戦闘に長けていた、村長一家で唯一魔法が使えず蔑まれていた幼少期に気持ちが折れることも無く反骨精神で独自に剣術を学び、魔獣とも渡り合い最終的には大鬼ともサシであれば勝利を手に出来る実力は有していた。

 円「油断しないで下さい!近接はかなりの実力がありそうです」

 玄「ヒッヒッヒ、早く俺を止めねぇと死体が増えちまうぜ」

 玄次はまた一人斬り伏せた後、煙玉を投げ込んで視界を遮る

 円「不味いですね」

 それを見た瑠夏が魔法を発動させた。

 瑠「風刃列破(ふうじんれっぱ)

 風の刃が玄次に襲い掛かり、避けきれなかった右脚が切断された。

 玄「ぐあぁっ!糞っ脚がぁっ」

 円「今です!畳み掛けましょう」

 冒険者「おう!」

 一気に距離を詰めて玄次の身体を刃が貫いていく!

 玄「ぶふっ!ぐぅうう」

 刺してくる冒険者を睨みつけながら大量に血を吐く。

 円「終わりましたね、最後は炎魔法の魔法師の方お願いします」

 魔法師二名が炎の魔法を唱える「炎火然炎(えんかねんえん)」玄次の身体が燃え上がりたちまち黒焦げとなる。

 瑠夏はとりあえず仇がうてた事で、少し落ち着いたようだった、その様子を見ていた寧々が声を掛けてきた。

 寧「瑠夏ちゃん、私達と潤香の町で一緒に暮らさない?その歳ではまだ一人では生きれないだろうから、まずは私達が色々教えてあげるから」

 瑠「………うん」

 瑠夏は静かに頷く、瀬奈や勇次郎、剣之介らが瑠夏の両親や絢音やおじさん、おばさんを丁重に埋葬してくれてあったので、墓前にて手を合わせる。

 瑠「みんな、さようなら、私は行くね」

 そこに円華が話を聞きにきたようだが、事情を察したのか風の魔法については見なかった事となった。

 こうして山雀村(やまからむら)という村は事実上消滅してしまったのだった。

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