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五百雀のスター

 五百雀領でお世話になっていた三人だったが、主に涼が冒険者として飛び入りで他の冒険者達の助っ人として参加して荒稼ぎしたお金で拠点となる一軒家を手に入れた。

 奏「うちも少しは貢献したけど、やっぱり一番の功労者は涼だね!thank you涼」

 陽「だね、私なんか採取位しかしてないし、ありがとう涼」 

 涼「まぁなんだ、いつまでもキチンと自分の部屋じゃないと落ち着かないでしょ?だから少し頑張っただけだよ」

 奏「おーおーカッコいいじゃん!そういえばさ、明日からお祭りらしいじゃん?陽葵浴衣買いに行かない?エルフのミザリーさんのお店にあるみたいよ?」

 陽「いいね浴衣、ミザリーさんの店何気に品揃え良いと思う。涼は?」

 涼「お祭りとか小学生以来行ってないかも、浴衣も甚平も着た事ないなぁ」

 奏「じゃあうちらと買いに行こうよ、決まりね!」

 涼「奏は相変わらずハイテンションだな、明日の予定は決まりだな」

 そして夕飯の買い出しに陽葵と奏は出掛けた、すると明日の祭りの出演者だろうか?楽器を持った一団が宿屋の前で集合していた。

 陽「この世界にもあんなに色々な楽器あるんだね?」

 奏「そうだね、意外と沢山あって驚いた、陽葵また歌いたくなっちゃったり?」

 陽「そうだね、前は配信とかして嫌な思いして辞めちゃってたけど、また歌いたいなぁ」

 転移前の世界では歌い手をしていた陽葵、それに救われた奏、涼も救われた一人である。しかし悪戯に批判しかしない連中はどこにでも居る中陽葵は辞める決断をして現在に至る。

 奏「ねえ?うちドラムやってみたかったんだよね!涼にギターやらせて陽葵はベースボーカルやってよ」

 陽「うーん、私は一通り楽器できるからいいんだけど、そもそも電気のない世界だから小さい箱じゃ無いと音が消えちゃうよ」

 奏「電気ね、当てはあるよ?多分、涼がさ雷魔法覚えたみたいでさ、それ利用できないかなぁーって!」

 陽「なるほどね、面白そうなアイデアじゃん、でもエレキギターとベースにアンプとスピーカー作らなきゃだよ?フワッとした知識しか無いからあんまり詳しく無いよ?」

 奏「あー、それはうちもわからないな、そういえば涼の専攻が電気工学だったよね?陽葵のフワッと知識と涼がいれば出来るかもよ?まぁ駄目元でやってみようよ」

 陽「そうだね、やってみよー!」

 買い物もそこそこに家に帰り涼に一部始終を話した結果、物はなんとかなりそうだとなった。が魔法の電気化が上手くいくかが問題だそうだったが、奏の圧に負けて特訓する事となる、まぁまずは祭りを楽しむ事で一致して就寝した。


 翌朝ミザリーの店で買い物をして自宅で着替えてから祭りに繰り出す!

 奏「陽葵ぃ〜見て見てたこ焼きとかあるよ?あっ!あっちに水風船ある!こっちにりんご飴も〜」

 涼「奏はしゃぎすぎだろ(笑)迷子になるなよー」

 陽「あはははは、あーこんな日が来るとは思えない日があったの思い出したら小さな事でクヨクヨ悩んでたなぁって思えたら楽しくなってきたよ!奏!涼!ありがとうね、一緒に来てくれて!私はもう大丈夫だよ」

 奏「んー?なんの事かな、今はどれ食べようか悩んでて大変なんだから陽葵と涼も手伝えし!」

 涼「食い意地全開かよ、太るぞ」

 奏「はぁ?喧嘩売ってる?(笑)」

 陽「太っちゃえばいいじゃんか、食べまくろう!」

 一通り屋台を楽しんで広場へ出ると演奏会が始まった。和楽器だけど激しい曲やしっとりとした曲まで8曲を披露していた。

 奏「やっぱりうちらもthree piece bandやろう!」

 涼「まあやりたいけど、まずは準備して調整しないとまだなんとも言えないぞ」

 陽「まぁそうね、私も歌ってなかったから調整しなきゃだし、そもそも完成するかもわからないし、ドラムの皮とシンバルも作らなきゃだし、やる事いっぱいだよ?」

 日も暮れてふと空を見上げると、ヒューーー!と音が聞こえて上空で爆ぜる、ドォーン!!綺麗な花火が打ち上がる、奏はクルクルと踊り出す、涼は静かに見上げている、陽葵はうちわを仰ぎながら奏を見て笑っていた。そこに凛太郎を連れた椛が現れた。

 椛「こんばんは、あらあらみなさん、楽しんでらっしゃいますね」

 凛「こんばんは奏お姉ちゃん、陽葵お姉ちゃん、涼お兄ちゃん」

 奏「おー凛君来たか!よく挨拶出来ました、こんばんは」

 陽「こんばんは♪花火綺麗だね」

 涼「凛に椛さんこんばんは、いい夜ですね、楪様と天馬君は一緒じゃなかったんですね」

 椛「ええ、楪様が来て騒ぎになってしまう事を危惧してらっしゃったので、領主邸でご覧になっております」

 涼「不特定多数の人達がいますもんね、凛は僕達も護りますよ」

 椛「ありがとうございます、まぁまずは花火を楽しみましょう」

 凛太郎は既に奏に捕まっていた、陽葵はたこ焼きを凛太郎に食べさせている、至れり尽くせりであった。

 涼「椛さんに丁度聞きたい事があったんで明日にでも伺ってもいいですか?」

 椛「あら、沢山護衛がいますから今でも構いませんよ」

 涼「奏と陽葵がいれば凛は襲われませんからね(笑)では遠慮なく、楽器を作る職人さんを探していまして、あと磁石など細かい材料が手に入るかも調べておきたいところですね」

 椛「楽器ですか、そうですね、今回来ていただいた楽団に職人の方が同行しているので大丈夫ですね、磁石も仕入れは可能ですね、その他の素材も可能だと思います」

 涼「そうですか!ありがとうございます。都合が合えば早めに会いたいのですが」

 椛「わかりました、調整してご連絡しますね」

 祭りの夜は最後に白雲楽団の演奏で盛り上がり終演を迎える。

 奏「めっちゃ楽しかったね」

 陽「だね、凛君も楽しかった?」

 凛「うん!花火も凄かったし、音楽も奏お姉ちゃんの踊りも楽しかった」

 奏「あははは、ありがと!」

 涼「みんなが笑顔になれて良かったよ、俺も楽しかったし収穫もあったしいい事ずくめ」

 椛「みなさん楽しんでいただけたようで何よりです、では凛太郎様参りましょう」

 凛「はい!みなさんおやすみなさい」

 奏「おやすみ!」

 陽「おやすみ、またね!」

 涼「おやすみ、椛さん連絡待ってますね」

 椛「はい、わかりました。ではみなさんおやすみなさいませ」

 

 翌朝早速椛さんからの連絡があり、楽団の職人さんに会わせて貰える事になる。

 奏「ねえ涼、エレキギターとベースとドラムってこの世界で作れるの?」

 涼「うん、まぁ多分作れると思う、ギターはキットでも作ったし、安い中古買ってバラして組み上げた事あるし、ドラムは比較的簡単に出来そうだね、演奏にも太鼓各種あったからね、問題は材料関連かな、あとは魔法を電気に変換できるかどうかだな」

 陽「できればマイクもお願いします(笑)役者さんやオペラ歌手じゃないからマイクなしはキツイよ?」

 涼「材料次第だね、まぁとりあえず行ってくるから留守は頼んだよ」

 奏「ほいほーい」

 涼は職人と打ち合わせをして職人が面白そうだとヤル気になり早速共同で制作を始めるという話になり、制作には早くても一ヶ月掛かるとの事だった。


 一ヶ月半後

 涼「ザバルさん、ようやく完成しましたね、調整が難航しましたね、まぁ俺の魔法がもう少し早く電気に変換できていれば」

 ザ「なぁに、こちらの調整やらヤスリ掛けやら細かくできたから、気にする事はないじゃろ?」

 涼「しかし、今の魔力量だと微弱に出し続けても二十分が限界だな」

 ザ「上出来じゃ、それじゃあワシは大工の棟梁に自宅の防音作業の進捗状況を確認してくるでな」

 涼「わかりました、では運搬準備を進めておきます」 

 拠点としている自宅で十二畳程の広さの部屋を防音仕様に改築している、ザバルさん設計のお抱え大工さんが手際よく作業が進んでいてもう完成するようだった。棟梁と話をしているザバルが最終確認をして完成した!早速リアカーを借りてきて楽器を部屋へ運び入れて色々と調整して、いざ三人が楽器を前にニマニマしている、目の前にはザバルさんを初め棟梁や弟子の大工などが確認のためその時を待っていた。

 涼「さあて、いよいよだぜ、二人とも準備はいいか?」

 涼の背中にちょっとした四角い小箱を背負い、そこからチューブが何本か伸びて電源となっていた。

 奏「凄いねコレ、ザバルさん、棟梁、ありがとう」

 陽「まさかまた歌える日がくるなんて、ありがとうみなさん!涼もお疲れ様」

 涼「何言ってんだ、まだスタートもしてないんだから、今からだろ!」

 涼はエレキギター、奏はドラム、陽葵はベースボーカル、それぞれが目配せして奏がドラムスティックでカウントを始める。まずはドラムが先行した、ザバルらもバスドラムの空気を震わせる感覚を全身に感じていた、続けてベースを弾いていく低くてドラムに見え隠れしているが確かなベースラインを弾きこなしている、そこからエレキギターが空気を切り裂いていく、ザバルは上から下まで色々な音色を一気に混ぜ合わせたなんとも言えない感情になっていた。一通りの演奏が終わった。

 奏「いぇーい!」

 両の手のひらを二人に向けてピンと伸ばすと、涼と陽葵がハイタッチをした。

 陽「凄いよ涼、この世界でこれだけの楽器が作れるなんて、マジ感動したよ」

 奏「うちも感動したよ、まさかこれ程の音にまた出会えるなんて思ってもなかった」

 涼「まずはありがとう、でもまだまだ詰めなきゃいけない所は正直あるよ、二人も少し違和感あったんじゃない?でもまあ及第点かな、はぁ〜やっとちゃんとねむれるな」

 陽「お疲れ様、でも出来ちゃったからには練習しないとだよ?」

 奏「おお、珍しい!陽葵が涼を煽りよる」

 涼「ははは、奏には言われるとは思ってたけど、まさか陽葵に煽られるとは思ってなかったわ」

 陽「だって、また歌えちゃうと思ったらウズウズしてきちゃったんだもん、とりあえず曲作るか!」

 ザ「いやはや凄い楽器を作らせて貰っていたようじゃの、曲調も今まであまり聞いたことのないような素晴らしいものじゃった!これからこの、ぎたー、べーす、どらむ、この楽器は必ず流行るでな、こうしちゃおれん、ワシは材料確保して工房に籠るでな、売上の一部は涼の組合銀行に入るようにしてあるからな、では」

 とザバルはそそくさと走り去ってしまった。棟梁達も演奏が終わり、放心状態であったがザバルと共に一礼してその場を後にする。


 一週間後、曲が出来それぞれが練習をして一つの曲になったので、椛さん経由で許可を貰いゲリラライブを決行する!現代でいうところの大型トラックのウイング車は用意出来ないので、六畳程の床に車輪を付けて簡単な屋根を付けて垂れ幕で隠しながら馬に引かせて広場へ繰り出す!そこで垂れ幕を一気に降ろしてライブスタートである。

 陽「皆さーん、初めまして!私達【ワイルドラビット】です!今日は新しい音楽を皆さんにお届けしたいと思います。では聴いてください、さくら」

 まだ風も冷たい日々に 迷いなく晴れ渡る蒼い空

 新たな生命が歩み出し あなたのかけがえのない

 家族に囲まれて 走り出すあの季節

 時には喧嘩もして 罵り合い

 でもお互いを 気にし合い

 そんな毎日を 繰り返す

 思い出せさくら

 いつものあの場所で いつも通りだよ

 思い合えさくら

 いつでもその瞳に 焼きつく景色よ

 花びらとなり 空へ駆け上がれ

 

 成長して色々な人達に支えられ生きてきた

 あの頃の自分を反省しながら進み続ける

 頑固な性格も やがて溶け出して

 変化を受け入れ 花開くだろう

 そんな毎日を 踊り出す

 思い出せさくら

 あの時の場面へ 飛び出したい気持ち

 思い合えさくら

 貴方を想い出す この景色が

 僕を大人へと 変えて行くのさ

 

 ゲリラライブなので祭りの時程ではないお客さんだったが、歌い終わりには大歓声だった!

 商会の下働き「会長、凄い音楽でしたね、頭の中を突き抜けるような彼の楽器と後ろの太鼓でしょうか?空気を丸ごと振動させるような楽器と歌っている彼女の楽器は導くような旋律でしたね」

 会長「ふむ、銭の匂いがするの、儂の勘が大金を嗅ぎつけたわけじゃが、しかしのぉ、これは会議の話題の人物か?少し様子をみんとなんとも言えんのぅ」

 大商会の会長と下働きのお付きの者がライブの様子をじっくりと見定めている。

 これを機にワイルドラビットは月一でライブをする事となり、すっかり五百雀領のスターとなるのであった。

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