柳楽領にて
……… 最上壮真は順調に冒険者として成長していた、すでに冒険者等級は紅になり、今では領主邸の客人ではなく仮住まいではあるが借家を賃貸して住んでいた。
野菜売りの女将「壮さん、今日はお早いお出掛けだね」
壮「やあ、志乃さん。今日は少し遠くの森まで行く依頼があったから受けてきたんだよ」
志「そうかい、道中気を付けてね、帰りにでも寄っとくれ」
壮「一応夕刻には帰ってくる予定だから寄らせて貰うよ、じゃ行ってきます」
志「いってらっしゃい♪」
今日はご先祖様の関係する神社が東の森の先にあるようなので、ついでに受けられる依頼を見つけたので依頼をこなしつつ自分のルーツに迫ろうと思っている。まずは依頼から完遂する、この森に生息しているフクロウが落とす羽根を採取する依頼と密猟がされていないかの見回りも兼ねている、この世界は魔素やマナなどと呼ばれ方は違うが同種の物質があり、薄い魔素は人間が吸収しても魔力へ還元されるらしいが、濃い魔素は一般の人間にはかなりの毒になるのだとか。そして一般的な魔物とは濃い魔素が身体を蝕み正常な精神状態を保てなくなり魔素に支配された動物の事を魔獣だという研究発表が今の所有力なようだった、魔獣として新たに立ち上がると魔素による大幅な強化がなされ、更に魔素を吸収しながら自分以外の魔獣を倒して魔獣としてのレベルが上がると存在進化して、特殊個体となり人語を理解して話すことも可能となるようだ。そして実はこのフクロウは特殊個体の魔獣ではあるが人族などは襲わず一部の人間とは交流もあるようだった、なので定期的に生え替わりの羽根をとあるエリアに落としてくれていると言うわけである。
壮「さて、採取も終わった事だし、神社へ行ってみますか」
当初の目的地である冥魎神社へと歩みを進めると目の前には大きな樹が生えている、太いしめ縄が巻かれているので御神木であろうと思う。
壮「杉の木だな、ご先祖もココを歩いたのだろうか?」
などと想いを馳せながら手を合わせる。するとその後ろに鳥居があり社が奥に見えたので鳥居で一礼して境内へと足を踏み入れた瞬間耳鳴りがしてきて辺りを見回すと社の中から光が漏れ出していたので扉を開ける、するとそこで意識をなくした。
白髪白髭のお爺さん「よく来たな我が子孫よ、儂は久世白檀じゃが、この名はこの國へ来るまでは知らなかったであろう。儂は人族にして超越者と成ったものじゃ、この地では寿命という概念がなくなるわけじゃが、我が子孫が此処に辿り着いたと言う事は儂は天寿を全うしたわけじゃな。儂の血を引く其方は超越者になる可能性はあるがならなくても良いのじゃよ?それはその瞬間がもし来たならば己で決めると良い。しかし儂の因子を受け継いだのであれば時空魔法と鑑定魔法がまず初めに使える魔法じゃな、その二つを極めると未来予知に至る訳じゃが君はまだ来たばかりでまだ未来予知は出来ないようじゃの、何故わかるのかは今まさに未来予知で君の姿形をハッキリと見て話しておるからじゃ、隠しても意味は無いからゆうとくが、君の世界に渡ったのは儂だけではないのじゃよ、それぞれの種族儂を含めて13種が渡った訳じゃが多分みな自然と運命の因子に逆らえず集まったはずじゃが安心せい、この世界に来る事を決めたのは間違いなく己が選択した結果であるからな。では何故因子が呼んだのか、それは今まさにこの世界が危機に晒されておるのじゃ、だが救うも救わないもまた己で選択すればよい、人生とは誰に強制される訳でなく己が歩む道を決めるものじゃからな!長々と話したがこの世界を愉しむがよい、ではな」
因子に反応して精神に作用する魔術式を刻んでいたようだった、目を覚ますと目の前に魔術師が使う杖が浮かんでいたので手を伸ばして掴んでみると杖が輝き光が収束して掴んだ右手の甲にこの杖の持ち主たる紋様が刻まれる。
壮「あっつっ!」
しかしこの世界の危機だと言っていたが、柳楽領にいる間誰からもそのような雰囲気は感じ取れなかった、破滅に向かっている事に気が付いていないのか?それとも滅ぼす側の人間なのか?もしくはご先祖様の未来予知が外れた?原因を突き止めなければ選択のしようもないからな、色々調べてみるしかないなと思った。考えをまとめて帰ろうとしたその時、引き留める声が聞こえてきた。
声の主「そこのお主チョイと待ってくれんか、代々伝えられてきた『本殿光に包まれ伝説の杖を手にした者現れる時の為に従者を育て続けよ』と伝えられてきたがまさか本当に現れるとは思わなかったよ、名乗りが遅れたが私は神主をしとる柴崎と言う者じゃ」
神主の格好をした背の小さいお爺さんが語りかけてきた。
壮「柴崎さんですか、初めまして最上と申します。伝説の杖とはこれの事でしょうか?」
柴「そうである、本来は御神木を植える前にその杖を地下へ祀り御神木となる苗木を植え時空魔法により100年程育ててから現在に至るまで誰も地下など知らずに我らの直系にのみ代々言い伝えられてきた事なのじゃ」
壮「なるほど、そんな地下にあったものが目の前に現れた事も魔法式が関係しているという事ですか」
柴「ふむ、そうゆう事じゃな、そして継承者であるならばその手の甲には印が刻まれるであろうともあるのじゃ、なので帰る前に一度この先の村までいらしてはくれんかの?」
ついて行っても大丈夫かな?と思いつつ素直について行くと、みるからに獣人が沢山いた、小さい可愛い感じの子から雄々しい大人の男性の獣人から色っぽい女性の獣人など獣人と一括りにしているが種族はバラバラであった、そのなかでも長のような獣人に連れられて一人の少女が目の前まで来て挨拶をする。
獣人少女「こんにちは、賢者様のお孫様私は黒猫族のミル・ミジアーレと言います、どうぞ宜しくお願いします」
長「我が名はザビア・ナバールである、このミルが賢者様の補佐をする為の教育を受けてきた娘であるので、役に立てて欲しい」
壮「最上壮真です、話が進みすぎてまだ追いつけてないから少し時間貰っても?」
ザ「ああ、構わんとも」
軽い気持ちでご先祖様の軌跡を追えたら楽しそうだなぁ、なんて思ってた時期もありました。
神主に呼ばれ美男美女の獣人に囲まれて撫でたい気持ちを我慢して、いつくるかわからない俺なんかの為に従者教育なんかしてて、あれ?未来予知出来たならいつ来るか分かったんじゃないのかな?時期まではわからないのか?まあそれは置いといて、従者とか本当に必要なのか?まあ右も左もわからない世界だからいた方が断然いいだろうが少女を連れ回す事を想像するとなんかこう日本社会では犯罪だから気が引けるというか、でも折角この娘が勉強してきた事を無かった事にするのも違うからな、しょうがない連れて行くか。
壮「わかりました、ではミルこれから宜しくお願いしますね、わからない事だらけだから常に頼りにさせてもらうよ?」
ミ「お任せ下さい、その為に頑張りました」
壮「ああ、では行こうか?荷物はある?時空魔法の収納術があるから手ぶらでかえれるよ?」
ミ「存じています、お言葉に甘えてコレをお願いします」
とミルはタンスとベットなどを引きずってきた。
壮「ん、家財一式に見えるけど、これ全部持って行くの?」
ミ「はい賢者様、宜しくお願いします!私寝床が変わると眠れないのですよ」
壮「そっか、まぁ睡眠は大事だよね、タンスは?」
ミ「はい、これは私の下着が入っています」
壮「そっか、下着も大事だよな………大量に、ね」
黙々と空間収納と手をかざしながら仕舞い込んで行く壮真は、俺は黒猫〇〇○の宅急便じゃないぞ。と思いながら作業した。
壮「もうないかな?」
ミ「はい、おかげさまで身軽になりました、ではお父様、お母様、村長、みんな、行ってきますね」
みんな「ああ、身体に気を付けてな」
「賢者様に迷惑をかけないようにな」
「元気でね」
「この日の為に頑張ったんだから気合い入れてけよな」
「お姉ちゃーん元気でねー」
ミ「参りましょう賢者様!」
壮「皆さん、ミルをお預かりします、では」
獣人の村を後にした、ミルはあまり村の遠くへは出た事がないらしく色々な事に興味津々であった。
ミ「賢者様は違う世界から来たのですよね?」
壮「ああ、そうだよ。 ミル、その、賢者様ってのは無しにしようか、壮真でいいよ?」
ミ「そうですか?では壮真様で!」
壮「人族との親交は神主だけなのかな?」
ミ「そうですね、村の近くまでは商隊の方達がいらっしゃってたみたいなのですが、村の一部の者が対応していましたのでほとんどの村人は人族には出会ってませんね、逆にエルフやドワーフ、などは普通に村へ来ますね」
壮「何故人族だけ対応が違うんだ?」
ミ「我々獣人種の子供を狙う輩が後を断たないからですね」
壮「そうか、だから俺に対して何か緊張感があったのか、なんか悪い事したな事情も知らずに」
ミ「いえ、壮真様は悪くは無いですよ、気にしないでください、それよりも最初に壮真様に出会った時からずっと木の上から監視されてる方は知り合いでしょうか壮真様?」
壮「えっ?」
ミ「その様子ですと護衛ではなさそうなので撃退させて頂きます」
ミルは素早く地面を蹴り上げ木々を右に左に飛び上がり人影を襲いにいく!すると、
影「ちっ」
影は素早く逃げの体制をとり木の上を飛んで逃げていった。
ミ「逃げられてしまいました、スミマセン」
壮「いや、そもそも気が付いてなかったし、ミルは凄いな」
ミ「ミルは索敵が得意なのです、他にも罠などを見抜くことができますよ?あとはご飯は沢山たべます」
壮「凄いなと思ってたらいきなりご飯の話か、お腹すいたの?」
ミ「バレましたか?」
壮「う、うん。」
壮真は持ってきていたおにぎりを取り出しミルへあげると、一瞬でなくなる。
壮「早っ!じゃ陽が暮れる前に帰りたいから急ぐよ」
ミ「その前に壮真様、その杖はまだ隠していたほうが良いと思います、あきらかに目立ちますので一旦収納なさって下さい。先程の刺客に知識があればバレている可能性がありますが、少し距離がありましたのでギリギリ大丈夫かも知れません、今後もあまり表だって見せない方が良いと思います」
壮「ご忠告どーも、じゃあ仕舞っておこうかな」
そして自分の部屋に到着したのは夕陽が綺麗な時間になった。
壮「ところでミルは何処に寝泊まりするの?」
ベットやタンスを持ってきた時点で気がつくべきだったのだが。
ミ「勿論壮真様のお宅で寝泊まりさせていただきますよ?側仕えとして当たり前だと存じますが、何か問題でも?」
壮「うん、そうだと思ってたけど聞いてみたよ、それと問題と言われるとミルは可愛い女の子だからなんというか………」
ミ「いゃあ可愛いだなんて、てゆうか壮真様に襲われるという事でしょうか?大丈夫です、来る道でも言いましたが索敵は得意ですから!」
壮「あっはっは、俺が敵って事か!」
そう言いながら本が少し散らかった部屋へと入り少し片付けてから預かっていた荷を出していく。
壮「今のトコこの部屋しか空いてなくて、ここで良いかな?」
ミ「はい、充分です、ご配慮感謝します」
壮「一応、風呂と調理場とお手洗いはここ、帰りしな野菜貰ったからなんか作るよ。」
ミ「壮真様はゆっくりなさって下さい。壮真様の手は煩わさせません、お任せあれ」
壮「わかった、任せるよ」
ミルの作る料理は大変美味しかった、それからお風呂へ入っていると、ミルが背中を流すと食い下がってきたが却下した、色々あったので布団に入るとすぐ寝てしまったのだった。
翌朝ミルに全國にある白檀の書物を見に行きましょうと提案された、少し迷ったが旅に出る決意を固めて唏娌さんに報告した、引き留められたが大事な用だと伝えるとすんなりと引き下がってくれた、護衛などの話もでたが丁重にお断りして借家も契約解除していよいよ出発の日に領主邸へ呼ばれた。
柳「出発前にすまぬな最上殿、旅の足しに支度金を用意したので是非役に立てて頂きたい」
最初は断ろうかとも考えたが折角用意していただいたのでありがたく頂戴する事としたが、結構な重さの箱だった、中身を確認するのが怖かったのでそのまま収納してしまった。
壮「この領に来てからお世話になりっぱなしで本当に感謝しています!右も左もわからなかった私を助けて頂いたうえ支度金まで、柳楽様唏娌さんありがとう御座いました。では行ってまいります」
ご先祖の久世白檀著の書物を探す旅へと出発した。




