4
僕は朦朧とする意識の中、ある公園に来ていた。先ほどから胸の動機がひどく息をするのも正直苦しい。
これが最後か
嫌だな、もっと彼女の隣で笑顔を見たかった
気づくと視界は歪み地面には水が染み込んでいた。
ああ、辛いのか僕は
そっと目を閉じその時を待とうとする。
「ハル 」
声のする方へ向くが上手く立つことができない。
正直こんな姿は見せたくなかった。
「幸太の容態が急に良くなってそれを伝えようとしたらハルが居なくて、嫌な予感がして探してみたら… 」
こうたは助かったのか、良かった
「幸太が助かったのはハルのお陰なの? 」
わかるのか?
「そうなんだ、わかるよ。私はハルの事ならなんでも 」
なぜ笑わないんだ、こうたは助かった。なのになぜ涙目なんだ。
「嫌だよ、ハルがいなくなるのは 」
ごめん
彼女から涙がポロポロと零れる。
「ハルは、いつもそう、急に現れたと思ったら急にいなくなる 」
どうした?
「私が覚えてないと思ったの。これで100万回目だよ 」
覚えていたのか、いやそんなはずはないだって人間にそんな事…
「バカね、私がずっと『ハル』って呼び続けたのが偶然だったとでも思うの 」
それもそうか
「そうだよ、ハルはずっと私だけのハルなんだから 」
そうだ僕は、うっ
形容できない痛みが体中を襲う。
「ハル、ハル。大丈夫?なんだか胸騒ぎがするのもう会えないようなそんな気がする 」
するどいなぁ
「嫌よ。置いていかないで 」
すると、僕達の周りが一瞬眩しく光る。
「ハル、ハル 」
「ああ、どうした 」
「声が、どうして 」
粋なことをする神様もいるものだ。
「ごめん、もう会いに行けそうにない 」
「なんでよ、ハルはいつも勝手なのよ 」
「泣かないで、最後くらい笑ってよ僕は君の笑顔が一番好きなんだ 」
「そんなの無理よ 」
僕の体がどんどん薄くなっている気がする。これは初めての死に方だな。
ああ、もう終わる。
「僕は幸せだった、君と出会えて何度も生きられて。君が好きだよ 」
「私だって… 」
彼女は、自分の頬をパンっと叩いた。
「今度は私がハルに会いに行く。だから、約束 」
「約束? 」
「私は絶対に会いに行く、そのかわり絶対にまた生まれ変わって、そして100万と1回目を私に頂戴 」
「…ははっ。君らしい。もちろんだよ 」
もう体の半分が消えていた。
「もういくよ 」
「うん 」
「泣くな、笑って 」
「うん 」
涙を流しながらくしゃっと笑う彼女の顔はただただ愛おしいかった。
光が僕達をだき抱えるように包み込む。
「好きだよ 」
「私も好き、今までもこれからも 」
彼女の香りと温もりに包まれ、春の終わりを告げる蝉の合唱を耳に僕の100万回目が終りを告げた。




