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僕は早朝、狭く入り組んだ路地の先に足を運んでいた。
「長老 」
「おお、ハルか 」
僕が長老と呼ぶ彼は、猫又と呼ばれる種類の猫であった。
「長老、聞いて欲しい事があるんだ 」
「なんだ 」
「彼女の子供を助けたい 」
「彼女?ああ、その事なら大体知っておるよ 」
長老は、物知りである。僕なんかよりもっともっと長い間の期間を生きていると聞く。
「それよりお主、今何回目だ 」
「何回目?ああ、丁度、100万回目だよ 」
「そうか、そうかついに… 」
長老は、なにか考え込んでいる。少し経つとその重たい口が開き、
「汝、よく100万の時を過ごした 」
「急になんだ? 」
「このまま100万回目を終えると不老不死となり猫又へと生まれ変われるだろう 」
長老の声はいつもと違いどこか機械的で少し神々しさを感じた。
「どういう事だ 」
「100万回生まれ変わった猫にはその権利が与えられる 」
「なぜだ? 」
「それは、神のみぞ知る領域だ 」
神のみぞ知る、か。
ん、待てよ。
「長老 」
「なんだ 」
「その権利の代わりに願いを叶えてはくれないか 」
「願いだと 」
「ああ、もしかすると可能かと思って 」
「まあ無理ではない、しかし願いを叶えるとなるとそれと同等の対価を払わねばならん、それでも汝は望むか 」
「ああ 」
「迷いのないいい返事だ。よかろう、その願いとはなんだ 」
「ある人間の病気を治して欲しい 」
「人間? 」
「はい 、できるか 」
「無論だ、ふむ。なるほど、お主の願いは大体わかった 」
「本当か? 」
「幼き人間の事だろう 」
「ああ 」
「そうか、しかしこれ程となると対価は汝の命になってしまうぞ。それに、生まれ変わる保証もなく全てを失うかもしれぬ。それでも良いのか 」
「…僕の命で助かるなら 」
「迷いはないか、何が汝をそこまでさせる 」
なにが、か…。
ああ、そんなの決まっている。
「彼女の笑顔の為に 」
いつだって僕の世界は彼女を中心に回っている。
「汝のようなものは初めてだ。よかろう。汝の願い聞き届けた 」
「本当か 」
「うむ。汝の思いの強さに敬意を評して、汝の慕う者達これからの平穏を約束しよう 」
「ありがとう 」
「ではすぐ行うぞ 」
「僕の命はいつまでもつ 」
「持ってあと数時間だろう、すまぬ 」
「いや、ありがとう 」
「では行う 」
その声と共に僕は光に包み込まれた。




