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「ハルおいで 」
愛しい人の心地よい声が聞こえる。
初めて名前を貰ったあの日から、僕の名前はただ一つ『ハル』だけだ。腕を広げる彼女に飛び込んむ。
「偉い偉い 」
フワッと鼻腔をくすぐるいい香りがする、彼女の匂いは好きだ。
上を見上げると彼女の顔があった。
泣いているのか?
僕の顔にポタリと水が落ちる。
彼女が言うには辛い気持ちからできる涙と言うものらしい。
ああ、そんな顔するな
僕は君の笑顔が一番好きだ
辛い気持ちは僕が貰う
僕は彼女の顔に近づき流れる涙を舌で拭う。
「ふふっ、ありがとうハル 」
僕を抱きしめる腕が強くなる。
「大丈夫か、美幸 」
「ええ、悠貴さんありがとう 」
彼女の呼ばれる名前はいつも違う。今回はみゆきと呼ばれている。
ゆうきと呼ばれた彼は、彼女の夫とかいう人らしい。
人間は好きな人間と結婚と言うものをする。恋愛と言われるものは僕には正直わからない。
僕は彼女が幸せならそれでいい。
「ハルいつもありがとうな 」
ゆうきは、僕の頭をなでる。
僕はゆうきの事も好きだ。彼女を笑顔にしてくれるから。よく見るとゆうきの目にも涙が溜まっている。
どうした、ゆうきまで大丈夫か
「心配してくれるのか、優しいな 」
「悠貴さんでもハルはあげないわよ 」
「ははっ、それはもう諦めたよ 」
「ふふっ、懸命ね 」
2人とも笑顔になった。
そうだ、それでいい、 君達の笑顔で囲まれる時が1番幸せだ。
ふと周りを見渡す。
そういえば、こうたがいないな
「ああ、ハルにも言わないとね 」
「美幸、きついなら俺が 」
「私が言うよ 」
こうたは、彼女の子供だ。どうしたのだろうか2人はまた苦しいそうな顔をしている。
「幸太はいま病院に居るのよ 」
病院?
すると彼女から止まったと思った涙が零れてくる。
「病気になってね、ちょっと、も、もう駄目かもしれないって 」
どうしんだ2人とも泣くな
「ハル、もしかしたら幸太が死んでしまうって 」
彼女から悲鳴のような泣き声が漏れ、いつも力強く落ち着きのあるゆうきの声も、震えて今にも消えてしまいそうだった。
彼女の涙をこんなに見るのは初めてだ。
死、僕も知っている。
それは、突然現れて全てを奪う悪魔の響き。僕は、もう99万と9999回体験している。いつまで経っても慣れるなんてものじゃない。
そうか、こうたに死が近づいているのか。
ああ、やめてくれ、嫌だ
君達の涙を見ると胸が痛くなる
「どうしたの、ハル 」
なんの為に100万回も彼女の為に生まれ変わったのだろうか。
彼女の涙を見る為じゃないだろ。
彼女が幸せになるならそれでいい。笑顔でいてくれるならそれでいい。
僕がどうにかする、だから笑っていて




