記憶の欠片を辿って
自宅に帰宅した聖恵は、影芝に連絡しようか悩んだが、止めておいた。晩御飯を食べ、お風呂に入り自分の部屋のベッドに寝転んでボーッとしているといつの間にか寝ていた。眠りについた聖恵はピンクの雲の上で目を覚ます。
周りを見渡した聖恵は、ここがすぐに自分の夢の中だと察した。
「愛奈、いるんでしょ?」
「ははは、ばれちゃったか」
狐のお面を付けた女の子が、雲のすき間からひょっこり顔を出す。
「やっとここにこれた。」
聖恵は拳をグッと握りしめる。
「ここに来たかったの?」
「当たり前よ、ずっと来たかったのにこれなかった。けど今日は来れた。お願い私の昔の事を教えて」
愛奈はなるほどっと掌をポンっと叩き、聖恵がここに来たかった理由を理解した。
「昔のことかぁ~」
「知ってるんでしょ?この部屋にあるって言ってたじゃない。」
聖恵は両手を広げて周りのピンクの雲を見渡す。
「私が教えるだけじゃ、貴方はきっと信じないと思うわよ。それに、この部屋にはもちろん素敵な思い出もたくさんあるわ。けどそれと同じくらい辛くて苦しい思い出もあるの。今現在、明るい家庭があって、仲良しの友達がいるんだから、無くした過去よりこれからの未来に目を向けた方がいいんじゃないかしら?」
愛奈はピンクの雲の形を椅子のように変え、座る。
「今日同じことを言われたわ。あなたも知ってるでしょ?」
「もちろん。私は貴女だもの。過去も含めて私です。でしょ?」
コクりと頷く聖恵。なかなか教えてくれない愛奈に少し苛立っている。
「貴女は私なんでしょ!なら私の今の気持ちだってわかってるでしょ?なんで教えてくれないの?」
叫ぶような大声で自分気持ちをぶつける。聖恵の声がピンクの雲しかない部屋に響き渡る。
「分かるわよ。記憶がなかった時の苦しみもノノちゃんが友達になってくれた嬉しさも今貴女がようやく過去を知る人に会えた不安と嬉しさも全部わかってる。」
愛奈は少し寂しそうに過去を振り替えるよう上を向く。
「だったらなんで教えてくれないのよ!」
「聖恵は記憶を無くした意味を考えたことはあるの?」
「無くした意味?そんなの考えたことないわ」
「そう。」
愛奈は少し寂しそうに俯くと雲の椅子から立ち上がる。
「聖恵は心の記憶はほとんど無くしちゃってるけど、体の記憶は消えてないハズよ。それを頼りに自分の記憶を辿ってみるといいわ。また会おうね♪」
愛奈は手を振りながら、消えていった。
「ちょっと待って!体の記憶ってどういうことなのー」
伸ばした手は愛奈を掴むことが出来ず、気が付けばいつもの自分の部屋の天井を眺めていた。時計は目覚ましのなる5分前を指しており、カーテンのすき間から朝陽が射し込む。
「夢覚めちゃったのか。また教えてもらえなかった。体の記憶ってどういうことだろ?学校行ってノノちゃんに聞いてみよ。」
聖恵はベッドから起きると学校の支度をし出した。




