↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/9

第7夢「帰還」


ボクの意識はどんどん深い闇の中へと落ちていく

あぁ……もうボク死んじゃうのかな?

せっかく楽しくなってきたのにな……

目の前に色んな景色が浮かんでは消えていく

あ、これって死ぬ前にみんな見るってやつ?

走馬灯っていうんだっけ?

懐かしい光景が映し出された


雨が降ってる街の路地裏でボクはボーッとしていた

なんでそこに居るのか、自分が誰なのか全然思い出せなくてボーッと雨を見ながら考えてると

黒い影みたいなのが近づいてきて

その影が話しかけて来たんだよね

自分が誰か知りたいのならば来なさいって

その時は考えもしなかったけど

今考えるとなんでボクが記憶が無いって事知ってたんだろ?

付いて行くとドリメアがいて

車に乗せられて

アジトに連れてかれたんだよね

そこで夢想水晶ってのを奪うために倒さなきゃならない奴がいるから手伝えって言われて

嫌だって言ったらいきなり何人か襲いかかってきて

気が付くとやっつけちゃってて

ボク強いのかな?って思ったら何か楽しくなっちゃって

もしここに居たら退屈しなくて済むのかな?って思ったから結局手伝ってあげることにしたんだっけ

それから毎日毎日色んな奴と戦ってやっつけて

しばらくそんな日々を過ごしてた時に

アイツと出会ったんだよね


アイツは今までの相手よりはまだ強かったから

ボクはつい楽しくなっちゃって

本当はボクの方が強かったんだけど

やっつけちゃうともう遊べなくなるから手加減してたんだっけ

そして何回か戦ううちについ自分の事喋っちゃったんだよね

自分の名前と種族以外の記憶が無いって

そしたら何か急に悲しい顔するんだよ

それからは本気で戦ってくれなくなったからちょっとつまんなくなっちゃって

色んな手段で本気出させようとしてたんだよね

敵同士なのにボクがちょっと苦しいフリすると心配してきたり

お腹が減って動けない時はオヤツくれたり

というかお人好し過ぎるでしょ

絶対戦う事に向いてないよねアイツ

本当にからかい甲斐のある相手だったな

何回も同じ手に引っ掛かってはその度にプンプン怒るの

その顔がまた面白くて面白くて

いい加減学習しなよって何回も忠告してあげてるのに学習しないんだもん

そして同じ手に引っ掛かってはとんでもない失敗したりしちゃってさ

本当に面白いよねアイツ

それが本当に面白くてさ

アイツが消えちゃった後は毎日つまらなかったな

それでコシュマールメアを抜けてあちこちフラフラしてて

まぁ何年か経ってからメアナイトに見つかってまたアイツと再会したんだけどさ

でも本当に明日がどうなるかってわかんないよね

だって敵同士だったのにいつの間にか一緒にいるんだもん

まぁそれを提案したのはボクの方からなんだけど

そしたらさ

もしかしたらボクの親族かも知れない子と一緒にいるじゃん

しかもボクが王女様かも知れないって?

本当にびっくりしちゃったよね

もし本当にボクが王女様だったなら

大臣にしてあげるって約束したのにな……

約束守れなくなっちゃった

アイツ今頃泣いてるんじゃないかな?

もうアイツをからかえなくなっちゃったな……


ボクの意識はだんだんと途切れていく

そしてアイツとキュラウィン君の顔が浮かんだ

もう終わりかな?

そう思った時


「リュム姉様!リュム姉様!」


誰かがボクを呼ぶ

その声はキュラウィン君?

でも声が少し違うような?

声は何度もボクを呼び続ける

次第に意識がハッキリしてきた

ボクを呼び続ける何度目かの声で

ボクは目を開けた


「リュム姉様!良かったまだ生きてた、傷は大丈夫?」


ボクの目の前には

ボクと同じような耳が付いた見知らぬ男の人がいた


「え?キミ誰?どうしてボクの名前を?」


その男の人はこう答えた


「オイラ様だよ!キュラウィンだよ!」


キュラウィン君?

人の姿に戻れたの?

でもどうやって?

そこでボクは気付いた


「あれ?ここどこ?一斗は?」


ボクは意識を失う前の事を思い出す

確かボク達は建物の屋上にいて

ボクやられちゃったんだよね?

そしてそのまま目の前が真っ暗になって

気が付くと知らない草原にいる

するとキュラウィン君は周りを見渡して


「ここはカロタッス王国みたいだよ、僕達帰ってきたみたい、それより傷!早く手当てしなくちゃ!待ってて今お城からお医者さん連れてくるから!」


「待ってキュラウィン君、その必要……無いみたい」


ボクは刺されたはずの場所を確認する

不思議な事に傷口はどこにも見当たらなかった


「本当だ…でもなんで?」


「ねぇキュラウィン君、ボクが意識失ってからその後どうなったかわかる?」


「リュム姉様が動かなくなった直後、一斗の懐から夢想水晶(レイブクリスタル)が出てきて光がピカーってなってオイラ様達を包んだんだよ、そして気が付いたらここに居た」


キュラウィン君は続ける


「そっか…カロタッス王国に帰ってきたからオイラ様は人の姿に戻れたんだ。リュム姉様立てる?1度お城に帰ろうと思うんだけど」


まぁここに居ても仕方ないし

動けそうだったのでボクは立ち上がった

そしたら何か落ちてきた


「これって夢想水晶じゃん?何でボクが持ってるの?」


それは青いオカリナ

一斗が持っていた夢想水晶


「それがオイラ様達をここへ連れてきてくれたのかな?そういえば一斗が元の世界から来た時も夢想水晶が光ったって言ってたような?」


「そっか、それじゃとりあえずは、ありがとう、だね」


ボクは夢想水晶を懐にしまう


「とりあえずお城に向かおう、この道を行くとマタービタウンがあるはずなんだ、そこでお城の人に連絡取れるから迎えに来てもらおう。でもオイラ様は何年も居なかったからどうなってるかはわからないけれど」


ボクとキュラウィン君はしばらく歩いた

周りには広大な畑が広がる道を30分くらい歩くと街が見えた

街に入ると商店街があり

そこを抜けるといくつかのビルが並ぶ大通りに出た

たくさんの人がいて、その中にはボクやキュラウィン君と同じような頭に耳が付いている人達もたくさんいた

キュラウィン君に聞いてみると

この世界はチスイネコと人間と吸血鬼が共存している世界なんだって

ボクはこの風景が

なんとなく知ってる風景のような不思議な感覚を覚えていたその時だった

1人の女の人が叫びながらこっちへ走ってきた


「キュラウィン君!もう!どこ行ってたのよ!心配したじゃない!」


息を切らしながら走ってきた女の人を抱きしめキュラウィン君は


「夢芽香(ゆめか)?本当に夢芽香だ!会いたかったぞ!何年も居なくてごめん!」


夢芽香と呼ばれた女の人は困った顔で


「何年も?キュラウィン君大げさだなぁ、はぐれてから3時間くらいしか経ってないじゃない?」


「3時間?そんなはずは無いぞ!夢芽香とはぐれてからオイラ様は違う世界に行って何年も帰って来れなかったんだぞ?」


「もうどうしたの?大丈夫?変な夢でも見たんじゃないの?」


そしてボクの方を見つめ


「そちらの方はキュラウィン君のお知り合い?」


「あ、そうだ!夢芽香、詳しい話は後でするけどママ様に会わなきゃ!ママ様はいまどこにいるかわかる?」


「多分お城にいるはずだけど、ちょっと待ってね電話してみるね、キュラウィン君が見つかった事も伝えなきゃだし」


しばらくして


「お義母さんが迎えを出すからお城に戻って来なさいって言ってたよ、ほら式典もさっきの地震で中止になっちゃったみたいだし、とりあえずここで待ってよっか」


よく見ると街中慌ただしく車が行き来していた

所々崩れたような場所もある

ボクがしばらく辺りを見回していると


「リュム姉様、こっちは夢芽香。前に話したオイラ様のお嫁さんになる人間なのだ。」


キュラウィン君が嬉しそうに紹介してくれた。


「はじめまして、夢芽香です。あのキュラウィン君がご迷惑おかけしませんでしたか?」


夢芽香ちゃんだっけ、可愛くて良い子じゃん。

まぁボクには及ばないけれどね


「ううん、大丈夫だよボクの事は気にしないで」


ボクは2人を見つめる

キュラウィン君、本当に元の世界に戻って来れたんだな

そんな事を考えていると目の前に大きな車が止まりボク達は車へ乗り込み

キュラウィン君の住んでいたお城へと向かった

道中キュラウィン君と夢芽香ちゃんは色々とこの世界の事を話してくれたけどボクにはいまいちピンとは来なかった

この世界はボクの住んでた世界じゃ無いのかも知れない

だけどキュラウィン君の母親にはボクと同じ名前の妹がいたらしいのでとりあえず会ってみたらもしかすると何かわかるかも知れない

そう思ってはいるものの

正直ボクは戸惑っていた

ちょっと前のボクならば

失った記憶や本来帰るべき世界の事になると些細な事でも知りたくてたまらなかったはずなのに

今はそこまで知りたいとかは思わなかった

目を閉じると浮かぶのは何故かアイツの顔


「……まったく、仕方無いなぁ。」


ボクは思わず声に出して呟いていた


「リュム姉様?どうしたの?」


不思議そうにこっちを見るキュラウィン君と夢芽香ちゃん


「あ、ごめんごめん何でもないよ」


ボクは窓の外に視線を移す

しばらく街中を走っていた車はいつしか郊外にあるとても広い敷地に入っていた

ここがキュラウィン君の住んでいたお城らしい

城門から入って更に数分後ようやくお城の入り口へと到着した

車を降りてお城を見上げた時

その大きさにボクは少し驚いた

想像の何倍も大きかったからだ

入り口を入ると出迎えてくれたのはコウモリのような翼を付けたカボチャだった

そのカボチャはパタパタと飛んでいる


「キュラウィン殿下、おかえりなさいませ。ご無事で何よりですじゃ、まずは国王陛下と女王陛下にご無事なお姿を見せてあげてくださいませ、お二人ともキュラウィン殿下の事をとても心配なさっておりましたぞ」


「ありがとうカボちゃん、オイラ様ちょっとパパ様とママ様に会ってくるから、この人を応接間に案内してあげて」


カボちゃんと呼ばれたカボチャは

ボクの方に近づき


「お客様、ご案内致しますのでこちらへどうぞ」


「リュム姉様、応接間で待ってて、ママ様連れてくるから。あと何かあったらカボちゃんに言ってくれれば良いぞ」


そう言ってキュラウィン君と夢芽香ちゃんは奥にある大きな階段を上がり奥へと向かっていった

ボクはカボちゃんに付いていき

案内された部屋に入りキュラウィン君を待っていた

途中カボちゃんが飲み物とお菓子を用意してくれた

それはとても美味しくて今までに食べた事が無い味でボクは少し嬉しくなった

気付いたら全部食べちゃっててカボちゃんがおかわりを持ってきてくれた

そのおかわりも美味しく食べ終わった頃

なにやらドアの外から騒がしい音が近づいてきた


「ママ様!走っちゃダメだって!」


「お義母さん!あ!危ない!」


キュラウィン君と夢芽香ちゃんの声が聞こえた瞬間ドアが激しい音を立てて開き

その直後に人影が飛んできた

そしてその人影は盛大に転んで目の前にあったテーブルをなぎ倒す


テーブルの奥にあるソファーに座っていたボクは

その人影に近づいて手を差し伸べる

黒い髪、頭には黒の耳、着物と洋服を合わせたような服を着た女の人だった


「あー……だから危ないって言ったのに」


奥でキュラウィン君が呆れたように呟く声が聞こえる


ボクが差し伸べた手を掴み女の人は立ち上がる

そしてボクの顔を見るやいなや


「リュムちゃん?本当にリュムちゃんなのね⁉」


ボクの顔を両手で掴み顔を近づける

そしてその顔を見た

ボクもその人の顔を見る

その瞬間ボクにドーンと頭に雷が落ちたような衝撃が走った

目眩がするくらいの衝撃に耐えながら


「お姉ちゃん?リュカお姉ちゃん?」


ボクは無意識のうちに答えていた


「やっぱりリュムちゃんだわ~!」


お姉ちゃんはボクを強く抱きしめる

そしてそのままボクは気を失ったらしい

気が付くとボクはベッドに寝ていた

目を開けるとキュラウィン君とお姉ちゃん、夢芽香ちゃんにカボちゃん、そして白髪で口髭を生やしたチスイネコがボクを見ていた

後から聞いたんだけどこの白髪の人がカロタッス国王なんだって


「リュムちゃん気が付いた?良かった」


お姉ちゃんは泣きながらボクの胸に顔をうずめる

ボクはまだ朧気な意識ではあったもののハッキリと自分の事を思い出した

そして意識がハッキリして落ち着いた時に

みんなにその事を話した


ボクはカースマイス王国の第2王女として生まれ育った

両親やお姉ちゃんはボクを大事にしてくれていた

ボクもお姉ちゃんが大好きで

いつも一緒に遊んでいたっけ

お姉ちゃんが王女様になったらボクが騎士団長になってお姉ちゃんを守るって決めて毎日一生懸命鍛錬に励んでいた

そしてあれはボクが8歳の誕生日を迎えた日

ボクはお姉ちゃんと一緒に

カースマイス王国のお城の庭で遊んでいた時の事

お姉ちゃんが庭の植え込みに何かいると言い出して

植え込みの方に走っていった

植え込みはボク達の背より高く

ボクはお姉ちゃんを簡単に見失ってしまった

お姉ちゃんを探して庭をさまよっていると1人の男の人がボクの前に現れた

全身はマントで覆われ

顔はフードを被っていた

その顔には左目の眉から頬にかけて縦に傷があり左目は見えていないようだった

その男の人はボクをしばらく見つめると


「セイア……ここでは王女様か」


そうボクに言った


「ボクはリュムールだよ?あなたは誰?」


「私はただの旅人ですよ、それより君には大事な使命があります。私と一緒に来てくれますか?」


「嫌だ!行かないよ、ボクはお姉ちゃんを探すんだもん」


ボクはその男の人に背を向けお姉ちゃんを探した

しばらく探していた時


「キャー助けてー」


お姉ちゃんの叫ぶ声が聞こえた

ボクは声の方に走るとさっきの男の人がお姉ちゃんを捕まえていた


「お姉ちゃんを離せ!」


「この子を離して欲しければ私と来なさい」


お姉ちゃんの声を聞いて城の兵士が集まって来る

兵士の1人はボクの前に立ち

ボクを守ろうとしていた


「ザコに用はありません、失せなさい!」


そいつは腕を軽く横に振る

それだけでたくさんいた兵士達はみんな吹き飛ばされた


「お姉ちゃんを離せ!」


ボクは立ち向かって行った

爪を出し

そいつに振りかざす

だけどボクの攻撃はまるで効果が無かった


「やれやれ……子供とは言えやはり戦闘力は大した物ですね。……良いでしょう、あまりこういう手は使いたくはありませんでしたが仕方ありませんね」


そう言うとそいつはお姉ちゃんの首にナイフのような物を突き付けた


「もう1度だけ言いますね?私と一緒に来なさい、拒めばこの子がどうなるかわかりますよね?」


お姉ちゃんを助けなきゃ

ボクはその事で頭がいっぱいになり

考えるよりも先に体が動いていた

ボクは飛びかかる

だけどそいつはただただボクの攻撃を軽くあしらうだけでボクの攻撃が届く事は無かった


「あなたにあまり手荒な真似はしたくないのですが………仕方ありませんね!」


飛びかかった所をボクは弾き飛ばされた

それでもボクはお姉ちゃんを助ける為に何度も何度も飛びかかっていく

けれど大人の力にかなうはずも無くボクは何度も叩き落とされた

やがてボクの意識が朦朧とし始めた頃

そいつはお姉ちゃんを離し

ボクを持ち上げる


「あなたが大人しく私と来るならばこれ以上誰にも危害は加えるつもりはありませんよ」


「リュムちゃーん!」


そのお姉ちゃんの声がボクが最後に聞いた声だった

気が付くと

ボクはベッドの上に寝かされていて

何かの注射を打たれた

その注射はボクの戦闘能力を飛躍的に向上させる物らしかった

ただボクの戦闘能力は飛躍的に向上はしたものの

その能力と引き換えに時々激しく喉が渇くようになる

チスイネコでは稀にある吸血衝動を発症した

そしてボクは戦闘訓練を受ける事になる

そこにはボク以外にも色んな子供達が集められていた

戦闘訓練を拒めばお姉ちゃんや王国を滅ぼすと脅され仕方無く従うしか出来なかった

いつか力を付けて強くなってら

逃げ出そう

そう思い続けボクは日々の訓練に耐えた

15歳になった時初めて外に出てある施設を破壊するという任務についた

任務は難なく終わったがその途中仲間が数人犠牲になった

それからは時折任務として表に出て暗殺、破壊など様々な任務に就いていた

それから更に10年ほど過ぎた

いつしかボクはその組織の中で最強と呼ばれるくらいには力を付けていた

そしていつ逃げ出す計画を実行しようかと考えていた時

ある任務がボクに与えられた

それは吸血鬼の王国であるプンヴァー王国にて科学者が時空を超える装置を完成させようとしているからそれを破壊しろといった内容だった

ボクは装置を破壊し、その騒動に乗じて姿を消そう、そしてカースマイス王国に帰ろうと決めた

そして装置を破壊した時

空間が歪み始めた

そこでボクは意識を失い

気づいた時は記憶を失っていた


全てを話終えた時


「そう、そんな事があったの……でもリュムちゃんがどんな形であれ帰ってきてくれて良かったわ」


お姉ちゃんが優しく微笑んでくれた


「お姉ちゃん、今までごめんね」


ボクとお姉ちゃんは抱き合ってしばらく泣いていた


それからしばらくボクはカロタッス王国に滞在した

今カースマイス王国は今は国王が不在の国でカロタッス王国が代わりに統治しているらしい

国王であったボクの父親は6年前、女王であった母親は5年前に亡くなってしまったとお姉ちゃんから聞いた

そしてボクは両親のお墓参りに行く事にした

朝、ボクは支度してお姉ちゃん、キュラウィン君、夢芽香ちゃんと車に乗り込む

お姉ちゃんの旦那さんのカロタッス国王は執務が忙しく来れなかった

両親が眠る墓地へは車で2時間程で到着した

カースマイス王国の王族達が眠る墓地

そしてボクは両親の墓前に手を合わす


「ねぇリュムちゃん?リュムちゃんの名前はどんな意味があるかわかる?」


「ボクの名前の意味?ううん、わかんない」


「リュムちゃんは、星に愛されるって意味なのよ」


「そうなんだ、お姉ちゃんは?お姉ちゃんの名前にも意味ってあるんでしょ?」


「私の名前は星に選ばれるって意味なの、生前お母様が教えてくれたの、リュムちゃんに教えてあげたくて」


「そっか、お姉ちゃんありがとう」


星に愛される、か

でもボクの手はもう汚れてしまっている

そんなボクが愛してもらえるはずも無いよね


「ねぇリュムちゃん?これからどうするの?まだどこにも行く場所を考えて無いのならカースマイス王国に帰ってみない?リュムちゃんなら立派な女王になれると思うわ」


ボクはその事をずっと考えていた

確かにそこはボクの家でもあるんだけれど

ボクはいくつか引っかかる事があった

それにボクが女王様?

想像出来ないんだよね


「ねぇお姉ちゃん、ボクはこの手で何人も犠牲にしてるんだよ?いくら事情があったとしても、そんなボクが女王様なんてなれると思う?」


「リュムちゃん、生きてると誰しも失敗したり大切な物を失うものよ?それをどうするかは本人次第なんじゃない?大丈夫、リュムちゃんならきっと立派な女王様になれるわよ、カロタッスの女王が保証します」


ニコッと笑いながらお姉ちゃんはボクに言った


「お姉ちゃん、ありがとう。でもしばらく考えさせて」


その時だった


「リュム姉様!胸が光ってる!」


キュラウィン君が驚いたように声を上げる

懐にしまっていた夢想水晶が光っていた

ボクは懐から夢想水晶を取り出す

すると上空から光の玉のような物が降ってくる

そして夢想水晶の中に吸い込まれた

その時声が聞こえた


ーーリュムール、主、どうか2人が無事で幸せに過ごせますように……2人がどこにいても、もう2度と会えなくともずっと2人の幸せを願ってますーー


「リュム姉様!この声ってもしかして?」


「え?キュラウィン君にも聞こえた?アイツだよね……?」


「もしかして今の声の人ってリュムちゃんやキュラウィンちゃんを助けてくれた一斗さんって人?」


どうやらみんなに聞こえていたらしい

そしてお姉ちゃんはしばらく何かを考えた後に


「リュムちゃん、本当はリュムちゃんに側にいて欲しかったけれど、また一緒に過ごしたかったけれど、一斗さんの所に行ってきなさい。それに優しそうな声の人じゃない、お転婆なリュムちゃんにはちょうど良いんじゃないかしら?」


「ちょっとお姉ちゃん!そんなんじゃ無いって……アイツはボクの家来なの!」


「リュム姉様、オイラ様の家来でもあるぞ?」


「ハハハ、そうだね、ボク達の家来だよね。それに大臣にしてあげるって約束もしたから叶えてあげなきゃだし」


やっぱりボクはアイツの所に帰らなきゃ

ううん、帰りたい

でもどうやって?

アイツの顔を思い浮かべると

夢想水晶が放つ光は更に強くなった

すると空間がグニャグニャと歪み始めた

その瞬間光が弾けたような感覚がした

ボクはとっさに目を閉じた

そして目を開けると

知っている場所にいた


「あら?ここはどこかしら?」


お姉ちゃんがそう言った

ボクは周りを見ると

キュラウィン君、夢芽香ちゃん、そしてお姉ちゃんがその場にいた


「ここ、一斗の家だよ」


キュラウィン君がそう答える


「あら?ここがそうなの?綺麗なお家ねぇ」


お姉ちゃんは驚いていない様子だった


「あ、あの……私達まで来ちゃって良かったんでしょうか?って言うか本当にここ私達の世界と違う場所なんですか⁉」


夢芽香ちゃんが驚いたように聞いた


「んー?まぁ来ちゃったものはしょうがないんじゃない?今アイツ居ないみたいだし、ボクちょっと探してくるね、お姉ちゃん達はくつろいでて良いよ」


「そう?わかったわ、いってらっしゃーい、気を付けてねー」


お姉ちゃんが見送ってくれた


「待ってリュム姉様、オイラ様も行く」


「よし、それじゃ一緒に探しに行こっか?アイツ今頃きっとボク達がいなくて泣いてると思うからビックリさせちゃお」


アイツに夢想水晶も返さなきゃ

ボクは手に持っていた夢想水晶を見る

すると夢想水晶が変化している事に気づいた

ボクが持っていた時は青いオカリナだったはず

なのに今ボクの手の中には

赤い水晶と小さい紫の水晶に変わっていた

少し考えてみたけれど

ボクにはさっぱりわからないので

とりあえず懐にしまいこんだ

そしてキュラウィン君と2人で外へ出る


「ねぇリュム姉様、一斗はオイラ様の姿を見てオイラ様って気付くかな?」


キュラウィン君は人の姿のままだった


「多分わかんないんじゃない?ほら、アイツかなり鈍感だし?」


「そうだよね、どんな反応するか楽しみなのだ」


「でもキュラウィン君、もし戦闘になったらすぐ逃げるんだよ?」


「はーい、わかったよ。ねぇ一斗は今どこに居るかわかる?」


「なんとなーくだけど、河川敷の方だと思うよ」


ボク達が河川敷へと到着した時

数百メートルほど先に5つの人影が見えた

どうやら戦ってるようだった

キュラウィン君にその場で待機するように言ってボクはその方向へ向かった


……………続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。