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第6夢「ムソウ→夢創へ継がれし想い」


気が付くと俺は薄暗い小さな部屋の中にいた

目の前にはテレビが1台

そしてそのテレビには俺の記憶が映し出されていた

これが夢か幻覚の類である事はすぐに気が付いた

だが夢でも幻覚でも何でも良い

もうそんな事はどうでも良かった


俺はテレビを見ながら

そーいえばこんな事もあったっけ

あぁこれはあの時の事か

映し出された記憶と共にその時の事をボンヤリと思い出す

そして画面は切り替わり

映し出されたのは

夢創忍軍の仲間達

そしてリュムール、主の顔だった


俺は守れなかった

10数年ぶりにようやく会えた仲間

幼い頃より共に育ち数々の死線をくぐり抜けたジンは

俺の目の前で息絶えた

そして親父まで敵になっていた


そして……その親父がリュムールを……

俺の体は震えていた

自分が不甲斐ないばかりに目の前で大切な物を失った

悔しかった、苦しかった

ただただ辛かった


どれくらい時間が過ぎたのかはわからない

だが突然目の前にカランと音がして何かが落ちてきた

それは俺が元の世界からこの世界に来た時に持っていた人形だった

そういえばこの人形っていったい何だったんだろうか、と不思議に思ったその時

人形を中心に空間がグニャグニャと波打つように歪み始めた

俺はその感覚に耐えきれず目を閉じる

しばらくするとその感覚は消え目を開けると

そこはさっきまでの部屋ではなく

周りを山に囲まれた森の中のようだった

視界の先には湖らしき所が見える

とりあえず俺はそこへ行ってみることにした


しばらく進むと視界が広がり

目前には切り立った山に囲まれた湖に

桟橋がありその先に船が括り付けてあった

そして桟橋の先端に1人のやや大柄な男が座って釣りをしているように見えた

俺がその男の元へ近寄ると男は俺に背を受けたまま話しかけて来た


「そろそろ来る頃だろうと思っていたぞ、どうじゃ?ここは良い所じゃぞ、少しゆっくりしていくが良い」


俺を誰かと間違えてるのかと思った


「あ、いや俺は……」


俺が言いかけると男は


「わかっておる、夢創の忍の頭であろう?ワシはお主を待っておったのだ」


そういうと男は振り返る

ニコッと笑ったその顔は50代〜60代くらいの中年と思わしき男だった


「どうして俺を?」


「まぁとりあえずここに座りなさい」


俺は男の隣に座る

しばらく無言の時間が流れた

男は何も喋らず俺はただひたすら目の前の湖面をじっと見ていた

水の色は透き通った青、まるで吸い込まれそうなくらい深い幻想的な色

見ていると落ち着くというか安心すると言うか

不思議な感覚になり

このままこの水と同化してみたい

そんな感覚を覚えた


「このままこの地の一部となりたい、そんな事を考えておるな」


そう男が言った

俺は驚いて


「え?なんで?わかった?あんたいったい誰なんだ?」


「ハッハッハ、お主の顔を見ればわかるわぃ、おっとそうじゃったワシの名を言うておらなんだな、お主も夢創の一族の者であるなら聞いたことくらいあろう、ムソウ、それがワシの名よ」


ムソウ……?

伝承に出てくるあのムソウ?

初代夢創忍軍の当主の?

いや、そんなはずは無い

だって俺よりも遥か昔に存在してた人物だ、こんな場所にいるはずもない

あれ?待てよ?そもそもここはいったいどこなんだ?

俺は夢を見ているはず

だったらこれも夢なのか?

俺は頭が混乱していた


「まぁ聞きなさい、ここはお主の住む世界とは別の世界、お主は今、魂の状態でこの地におる」


「魂?って事は俺は死んだのか?」


「そうでは無い、お主はちゃんと生きておる。ほれ、お主がその手に持っておるその人形、そやつがこの地へお主を連れてきたんじゃ」


俺は言われるまで全く気が付かなかったが

あの人形をずっと手に持っていたようだ


「この人形っていったい何なんだ?何か知ってるのか?」


「その人形はいわばお主の魂そのもの、魂に特別な力を秘める者が稀にそのような人形を持つことがあっての、どうやらお主は何か自分でも知らぬ何かを秘めておるんじゃろうて」


「その何かってなんなんだよ?」


「さぁのぅ、それはワシにもわからんわぃ、それはお主自身が己の目で見る事じゃ」


特別な何か、か

俺にそんな物があるとは思えないが


「話を続けるが、お主の事はバルシオンから聞いておった故に、そろそろ来る頃じゃろうかと思うてな、ここで待っておったのじゃ」


バルシオン?

ムソウの仲間として

伝承にたまに名前の出てくるあのバルシオン?


「ちょっと待ってくれ、バルシオン?何でそいつが俺の事を知ってんだよ?」


「なんじゃ?お主バルシオンを知らんのか?それとも気付いておらんだけか?お主なかなか鈍いのう」


いやまぁ確かに鈍いとか鈍感だとは良く言われてはいるが……?

その時俺は1人の顔がふと頭に浮かんだ


「あ……もしかして紫苑の事?」


「おぉそうじゃそうじゃ、そういえば人の世に下りるときはそのような名を名乗っておるとか言っておったのぅ」


思えば伝承に出てくる漆黒の衣を身に纏い漆黒の翼を持つ者として登場するバルシオンと普段から全身黒の服を着ていてカラスの様な翼を持ってる紫苑の特徴は一致していた

いや、普通そんな伝承に出てくる昔の人と目の前に居るのが同一人物って思うわけが無いだろ

つまり、俺は今魂の状態で

ご先祖様と会話してる、そして普段世話になってる人はそのご先祖様の仲間である、と

色々聞きたい事はあるが

わけがわからなさすぎて

なかなか理解が追いつかない


「話を戻すがワシがお主を待っていた理由、お主、何か迷うておるであろう?」


「んー、迷ってるというか何もわからなくなってると言うか、どうでも良くなってると言うか……」


「ハッハッハ、それを迷うておると人は言うんじゃよ、話してみなさい」


俺はこれまで起こった事を全て話した


「って訳で、ご先祖様には申し訳無いんだけど、俺の代で夢創忍軍は途絶えてしまったと言うか、終わらせてしまったんだよ、もう守るべき場所も帰る場所も無くなっちまったし、もしそれを悪い言うのならどんな罰でも与えてくれ」


ご先祖様はしばらく無言だった

あ、やっぱ相当怒ってるな

まぁそりゃそうだろうよ

一族を途絶えさせたんだからな

俺は色々覚悟した

さぁどんな罰が来るのか

だがその覚悟は無駄に終わった


「お主、なぜ謝る?ワシにはお主が悪い事をしたとは思えんがのぅ?」


「え、いやだってそうだろ?アンタが繋いで来た物を、守ってきた物を俺が終わらせちまったんだぞ?」


「ならば問おう、ワシがお主にそう頼んだのか?」


「いや、別にアンタに直接頼まれては無いけどさ、そういうもんだろよ?普通は」


「そのお主の言う普通とは誰が決めたんじゃ?ワシは息子達に一族を守れとか途絶えさせるなとは1言も言わなんだがのぅ?」


いや、アンタの息子達って俺から遡ると何年前なんだよ

んな事わかんねぇっての


「お主、物事の形に縛られ過ぎでは無いかの?それ故に形にこだわり過ぎ本質を見失う」


「だったら何なんだよ、全然わかんねぇよ、ガキの頃から掟や伝承を守れと教えられ、自分の意思を殺してでもやらなきゃならなくてただひたすら自分の心に仮面を付けて役を演じるだけの日々、そして挙句の果てにはこのザマだよ、どうすりゃ良かったんだよ!」


「そうは言うがのぅ、お主その掟とやらを気にせず己のままに過ごす日常を得たのでは無いのか?なのになぜまだ掟だの伝統だのに囚われておる?」


俺は何も言えなかった

確かに元の世界からこっちの世界に来てからは掟や使命などは無く全て自分の意思で動いてた


「だから囚われ過ぎと言っておるんじゃ、帰る場所が無ければ新たに作れば良かろう、仲間がおらぬなら作れば良かろう、人も物もいつかは滅ぶものじゃ、ワシだって元はただの根無し草じゃったわい、そこでいつしか守る場所や仲間や家族が出来ただけに過ぎんよ」


ご先祖様が何が言いたいのか俺には難しくて全てを理解する事は出来なかったが

何となくの言いたい事はわかった


「1つ問おう、正義とは、悪とは何じゃ?」


「正義は悪や人を悲しませたり泣かせたりする奴らや誰かを助けたり守ったりする事、悪は何かを奪おうとしたり誰かを悲しませたりする事、かな?」


「ならば、それは誰が決めた事じゃ?」


「誰がって知らねぇよ、いつからか決まってたんだよ、それが常識」


「お主、まだわからぬか?正義も悪も決めるのはそれを見た己自身、悪であろうがそれを正義と見る者もおる、逆もまた然りじゃろうて、例えばお主、ワシがここの水は嫌いじゃと言えばお主はそれを否定するかの?」


「いや、別にそれはアンタがそう思うんだったらそうだろうから否定はしないけどよ」


「それならばなぜ正義と悪は違うと言えようか?ワシがこの水を嫌いと言えばそれは聞く者によっては悪にもなり得るし正義にもなり得る、すなわちどちらも同じ事では無かろうかの?」


「つまりはそれをどう判断するかは自分次第、と?俺がそれを悪だと思えば悪であり、正義だと思えば正義になる、と?」


「その通りじゃ、ようやく理解したかのぅ?人は誰しも己の感性があろう、己の意思や信念もあろう、故に正義も悪も同じ事よ、それをどう捉えるか、どう動くか、どのような結末を迎えるのか、全ては己が決め、選び取る、それこそが物の本質じゃ。それにのぅ、何が悪で正義かなんて物は世界から見ればただの現象に過ぎぬよ、理性と言う物を持っておる者が起こす現象に過ぎぬわ。例えば、ほれそこの木、嵐によって倒れるか誰かが倒すか、嵐によって倒れるなら仕方が無かろうと思うじゃろ?じゃが人の手で倒されるのならばそれが善か悪かを問うであろう?世界から見ればただ木が倒れたに過ぎぬ事、それ以上でもそれ以下でも無い物よ、形ある物はいつか滅ぶ、そこに善と悪を問う意味などどこにあろうものか」


あー、何となく理解してきた


「お主、掟や常識と言っておったな、確かに掟や常識などと言うものは、守らねばならぬ事もある、じゃがのぅ、掟だから、常識だからと言ってただただ守るだけでは意味を成さぬ、なぜそうなったのか、なぜそうしなければならぬのか、そこを理解してこそようやく本来の意味を成す物よ、ワシはのぅ、そこにある想いが紡がれておるのであれば掟なんぞ別に無くても良いと思うておる」


まさかご先祖様からそんな言葉を聞くとは思わなかった

掟=絶対優先な環境の中で育った俺には不思議でならない


「お主言ったのぅ、一族を途絶えさせてしもうた、と。人は遅かれ早かれいつか死して体は滅ぶ、今回は運悪く世界ごと滅んでしもうた、それだけの事じゃろう」


「でも俺が何か出来ていれば助けられたかも知れないのに」


「お主に何が出来た?出来たのならなぜやらなんだ?お主まさかとは思うが自分が何もかも出来ると思うておるのか?だとすればとんだ自惚れじゃのぅ」


おっしゃる通り

何もわからないし何が出来たのかもわかってない


「全てを背負う必要なんぞどこにも無いんじゃ、ただ己の目の前にある物を守れば良い、いつか同じ志を持つ者が集まり目の前は大きく広がり結果として広い範囲に何かが出来るというものよ、1人の力なんぞたかが知れておるわぃ、神でも無い限り無理な話じゃて、お主もワシも限りのあるただの小さき人に過ぎぬのじゃ、己の身の丈を知り足りぬ物は他者から補う、そして他者に足りぬ物を己が補う、そういうもんじゃよ、それに人は間違う事もあるものじゃ、間違っても己の出来る範囲で考え、修正すれば良かろ、お主は色々と身の丈もわきまえずに背負いすぎなんじゃ」


「だったら教えてくれ、俺ほんと難しい話とか頭悪くて理解出来なくて、もう頭ぐちゃぐちゃでわかんねぇよ」


「ハッハッハ悩め悩め、それこそ己を知る最も近道よ、じゃがワシから言うてやれるのは、お主はまだ生きておる、生きておるならばまた新しい命を紡ぐ事も出来るじゃろうて、お主がおる限り一族はまだ終わりではない、終わってはおらぬぞ」


俺はしばらく考えた

ご先祖様の言った意味は全部理解は出来なかったけれど

何となく自分がどうすべきか、どうあるべきか、どうありたいか

というのがおぼろげに見えた気がした

そこで俺はある疑問が浮かんだ

夢想水晶、夢創忍軍の当主が守り続ける掟、それはいったい何だったのか


「なぁご先祖様、夢想水晶ってあれいったい何なんだ?」


「ワシにもわからぬ、水晶は使う者に望む力や必要な物を与えてくれる不思議な石じゃ、じゃがワシはそれを悪しき物が使いワシの周りの者を悲しませぬよう、誰にも知らせず頭にのみその事実を伝え、守るようにしただけじゃ」


そこで俺は思い出した

俺が気を失う前に夢想水晶がリュムールと主を包んで消えた事に


「ご先祖様……ゴメン…。夢想水晶どっかに消えちゃった…。」


俺はその時の事を説明した

するとご先祖様は


「ハッハッハ、ならば水晶は有るべき場所へ行っただけの事じゃのぅ、お主が気負う必要なんぞ無いわ、あの水晶は意思を持っておる、ならばその意思に従い動いただけの事じゃろうて、お主の元を得て、その猫達に必要だと水晶が思うただけの事じゃろ、そしてその猫の娘は命を落としたと言うたのぅ、水晶がその者達と消えたのならその猫の娘は無事じゃろう、もしかするとお主の願いを聞き届けたのやも知れぬ、お主が無意識のうちにその者達の無事を願ったのじゃろうな」


リュムールが無事かも知れない?

その言葉を聞いて俺は少し安心した

そして涙が止まらなかった


「よほどお主にとって大事な者達じゃったんじゃな」


確かに大事だったのかも知れない

違う世界から来た者同士が偶然出会い

成り行きで一緒に過ごす事にはなったが

毎日楽しかった

考えた事は無かったけれど

主やリュムールとの生活はいつの間にか俺には無くてはならないほど大切な物になっていたらしい


「でも、どこへ消えたんだろう?」


「お主が元の世界から来た時と同じような消え方をしておるのならば、その者達が帰る場所へと水晶が導いたのやも知れぬ」


「そっか……元の世界に帰れていれば良いな」


主は家族と会えただろうか

リュムールは記憶を取り戻せるだろうか

もし主の母親の妹がリュムールなのだとしたらリュムールも家族と会えてると良いな

二度と会えなくても良い

2人が無事に生きてくれている事を俺は強く願った


「ちょっと付いてきなさい」


ご先祖様が立ち上がり歩き出す

森の中に入り少し歩くと小さな祠があった


「この祠は祈った者の祈りを人にでも神にでも届けてくれる力がある、お主その猫達へ祈ってみるか?」


俺は祠に手を合わせた

2人の無事を、2人の幸せを強く願った

しばらくすると祠が光り始め

その光が天に昇りやがては消えていった

俺はその光をしばらく眺めていた


「やはりお主、その身に水晶の力を宿しておるようじゃの」


ご先祖様が俺をじっと見つめる


「え?どういう事だよ?」


「つまりは水晶が無くとも水晶の力を使えると言うことじゃ、水晶がお主の願いに応えたのはお主もまた水晶に選ばれたと言う事じゃろう、かくいうワシも水晶の力を宿しておる者じゃ」


「って事は俺、夢想水晶と同じように何でも出来るって事?つまりそれを誰かが知れば狙われる?」


「ハッハッハそういう訳では無い、扱えるのは水晶の力のほんの一部じゃ、どれちょっと試してみるか、場所を変えよう、こっちじゃ」


言われるままご先祖様に付いていく

森を抜け山を登る

山の頂上には小屋があった

頂上はかなり広い平地になっている

下を見ると先ほどまでいた湖の全てが見渡せた


「ここがワシの家じゃ、ここなら存分に試せよう、お主、戦う時は水晶を使っておると言うたのう?今それをやってみせよ」


「いや、夢想水晶が無いと変身出来無いんだけど?いつもは夢想水晶が変化した楽器を使って変身するから、オカリナって楽器わかる?笛みたいな楽器なんだけど?」


「はて、オカリナというのはわからぬが、笛と言うのはわかった」


やっぱりオカリナは通じなかったか

オカリナって和名なんだっけか?

いや、そもそもご先祖様の時代にオカリナってあったのか?

考え込んでいると


「良いか、それが今ここになくとも普段それをやってるように頭に思い浮かべよ、強く念じるのじゃ」


要はイメージしろって事か

とりあえず俺は普段通りイメージした

ただ手元に夢想水晶が変化したスレアリーバーが無く手元が寂しいのでとりあえず印を組んでみた


「レイブテクター!夢装(むそう)!」


すると夢想水晶は無いのに本当に俺の体をレイブテクターが包んだ


「ほぅ、それがお主の鎧か。なかなか良い鎧じゃのぅ、それじゃワシも久々に纏うてみるかのぅ」


ご先祖様は目を閉じ印を組み何やら呪文のような言葉を唱える

そして目を開き


「喝っ!」


叫びながら目を開く

するとご先祖様の体は光に包まれた

光が収まるとご先祖様は

赤い鎧を纏っていた


「これがワシの鎧じゃ、ワシは水晶鎧(すいしょうがい)と呼んでおる、お主と同じで水晶の力によるワシの鎧じゃ」


俺は驚いた

水晶鎧は伝承には度々登場しているので聞いたことはあった

だけど俺と同じように夢想水晶の力だったとは知らなかったからだ


「ワシが知る限り一族で水晶の力を使うたのはお主で2人目じゃ、1人目はワシじゃ。さて、まずは力試しじゃ、どこからでもかかって来るが良い、お主の力をワシに見せてみよ。」


ご先祖様は構えている

いや、かかって来いと言われても

スキが全く無いんだわ

アンタ本当に何者なんだよ


「なんじゃ?かかって来んのか、ならばワシから行くぞっ!」


一瞬過ぎて全くわからなかった

気が付いた時には俺は空を見ていた

そしてあちこちに痛みが走る


「なんじゃお主、この程度も見切れぬか、まだほんの小手調べなんじゃがの?ふむ、思ったよりお主弱いのぅ」


かろうじて起き上がるも起き上がるだけで手一杯

そんな俺を見て


「お主、しばらくここで鍛え直してゆけ、ワシが基礎からしっかり叩き込んでやるわぃ、ついでにいくつか術も教えといてやろうかのぅハッハッハ」


ご先祖様はどこか嬉しそうに言った

そこから俺はご先祖様に基礎から教え直された

そして今まで経験した修行がどれだけ生緩かったかを俺は思い知った

今までやってた修行なんて準備体操にもならないと思える程にご先祖様との修行は厳しかった

どれくらい時間が経過したかはわからない

疲れたら休む、気絶するように眠る時もあった、そして起きたらまた修行再開

その繰り返しだった

ここは時間の流れを感じなかった

日が暮れる事も無くまるで時が止まっているかのような世界

そんな中で俺はただひたすらご先祖様との修行に明け暮れた

いくつか俺の知らない術も教わった

肝心の対決は最初は手も足も出なかったが

慣れてきたのか少しづつご先祖様の動きも見えるようになり

かろうじて一発KOはしなくなった頃


「よし、もう十分じゃろ、お主はもう遥かに強うなっておる、もうワシが教えずとも後は己で磨いて行けるじゃろうて」


そして修行は終わりを告げた


「ありがとうございました!」


俺は深々と頭を下げた


「お主、もう迷いは消えたようじゃな」


いつしか俺は何も考えていなかった

過去や掟などに縛られず

広い視野で物事を見る

自分の思うままに生きても良い

ご先祖様は厳しい修行の中でそんな大事な事も教えてくれた


「そうじゃ、最後に面白い術を1つ教えてやろう、今のお主なら使いこなせるはずじゃろう」


「まだ知らない術があったとは、ご先祖様、いったいどれだけ術持ってんだよ……」


「良いか、この術は即座に移動出来る術、水晶の力を宿し、かつその力を十分発揮出来る者にしか扱えぬ、今のお主は十分にその力はあるじゃろう」


「それって一瞬で移動出来るって事?」


「そうじゃ。実はのぅ、この術は知らぬ世界へも行けるが、今のお主はまだ修行が足りぬ、じゃが、知った者のいる所へなら行けるじゃろう、今のお主の実力ならば、行けたとしてもここと自分の世界を行き来する程度であろうがの、戻ったら試してみるが良い」


「世界も移動出来る、それって使い方次第では主やリュムールのいる場所に行ける……?」


「それが出来るか否かは全てお主の力次第じゃ、十分に修行を積みなさい、なに使い方は簡単じゃ、術が発動すれば行きたい場所や相手の顔を思い浮かべ強く念じれば良い」


俺はその術の使い方を教わった

ひと通り教わった時

ご先祖様は優しい笑顔で


「いつでも来なさい、ここはお主の帰る場所じゃ」


その時だった

俺の持っていた人形が

宙に浮いてこちらに飛んできた


「どうやら帰る時が来たようじゃの」


人形が光り始める

ここに来た時のように空間が波打つ


「夢創忍軍第127代目当主、夢創一斗よ!ワシの想いは全てその手に託したぞ!また会おうぞ、我が最高の弟子、そして我が子孫よ!」


俺は何も言わず頭を下げた

そして俺は気を失う

気が付いた時そこは見知った部屋だった

俺は自分の部屋のベッドに横たわっていた

起き上がると体が重い

いったいどれだけ眠っていたのだろう

だがさっきまでの事が夢だとは思えなかった

夢から覚めた時の特有の感覚は無く、ハッキリと全て覚えていた

どうやら本当に俺は違う世界でご先祖様と会っていたらしい

重い体を引きずりリビングに出る

すると玄関が開いた音がして俺は玄関の方に向かう

するとそこには紫苑がいた


「お、ようやく目覚めたか。体は大丈夫か?」


「悪い、アンタがここに連れてきてくれたのか?」


「あぁ、お前ずいぶんと眠っていたぞ」


「俺、どれくらい寝てた?」


「ざっと2ヶ月ってとこだな」


2カ月!?

紫苑から聞いた話だとあの後俺をここに連れてきて定期的に様子を見に来ていたらしい

そしてメアナイト達はあの後ピタリと動きを見せずにいるとの事

俺から分離したあのもう1つの俺も行方がわからないらしい


「だいたい現状は理解出来た、ありがとうな色々世話になっちまって、本当に感謝してる」


「まぁ気にするな、お前はお前のやるべき事をやってれば良いさ」


紫苑は笑いながら言う


「あ、そういえばご先祖様に会った、アンタの事も聞いた、てかアンタ何歳なんだよ?」


「ムソウのおっさんとは長い付き合いになるな、俺はある使命があってそこでムソウのおっさんと出会ってな、俺が何者かって?ただの死神だよ」


イタズラな笑みを返す紫苑

その時だった

黒くて重い気配を感じた

あの時のように


「一斗、感じたか?」


「あぁ、どうやら俺の気配を察知したんだろうな」


「まだ目覚めて体も重いだろう、いけるか?」


「わかんねぇ、でも紫苑、力を貸して欲しい、頼む今は1人でも頼れる仲間が欲しい」


「了解だ、その頼み引き受けた」


「じゃあ、行きますか」


俺は深く息を吐き顔をパンと叩いて気合いを入れる

そして俺と紫苑は外へ出た


……………続く

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