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Lost Memories  作者: 恩人
第一章「始まりの邂逅」《かいこう》

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第一章 Episode2「運命の交錯《こうさく》』

俺は息を呑み《のみ》、足を止めた。


「……誰…だ?」


沈黙ちんもくの中、茂みの奥から一人の少年がゆっくりと現れた。

月光がその顔を照らす。

紅い瞳。闇を映すような黒髪。

年の頃は俺と同じくらい――だが、放つ雰囲気はまるで別格だった。


「……人間、か?」


敵意は感じない。だが、空気が違う。

まるで世界そのものが、彼を中心に回っているような圧を感じた。


「君は?」

恐る恐る問いかけると、少年は静かに口を開いた。 

「僕はルシア。」


名乗ったその声には、不思議な響きがあった。

懐かしいような、痛みのような、心の奥をえぐるような――。

「なぜ、こんな場所に?」


そう尋ねると《たずねると》、彼はわずかに微笑み《ほほえみ》、右手をかざした。


「確かめたかったんだ。……君が、本当に目覚めているかどうかを。」


そういうと彼は右手を地面に構えて…


「――我が魔力よ、形を成せ。

本能を宿し、牙を研げ。

いまここに、戦の幻獣として顕現けんげんせよ!」

《ファントム・ビースト!》


そう言うと、ルシアの足元に淡い光が広がった。

 ジジジ……ッと空気が震え、複雑な紋様もんようが地面を走る。

 魔法陣が静かに――しかし確実に、輝きを増していく。


 「――目覚めろ。」


 その言葉と同時に、ドンッ!と地面が揺れた。

  闇の中から、黒い影が跳び出す。

 銀の牙、闇よりも深い毛並み。

 「ダスクウルフ……!」


 「まさか……魔力で魔獣を具現化ぐげんかしたのか!?」

 思わず声を上げる俺に、ルシアは微笑みを浮かべる。


 「見せてみてよ。君の力を。」


 ルシアの声はどこか優しく、それでいて決して逃げ場を与えない響きをしていた。


 「……やるしかないのか。」

 手のひらに魔力を集中させる。バチッ、バチチ……!と小さな火花が散った。

 心臓がドクン、ドクンと鳴る。


「面白い……その瞳、やっぱり似てる。」

 ルシアが意味深に呟く《つぶやく》。

 「また会おう。――アス。」


 「っ!? な、なんで俺の名前を……!?」


 ヒュウウウ……と風が吹き抜ける。

 顔を上げた時、ルシアの姿はもうどこにもなかった。


 (ルシア……お前、一体……誰なんだ?)

 胸の奥がざわつく。けれど――


 「グゥゥゥ……!」

 ダスクウルフの低い唸り《うなり》が、思考をかき消す。

 ズズッ……と土を掻く《かく》音が響いた。


 ――今は考えてる場合じゃない。

 目の前の現実を、乗り越えるしかない。

次回Episode3「謎めいた少女」7月28日投稿予定

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