381話 メスガキ御用達ショップに行こう 2
若年女性向けのファッションビルの107の中に店を構えるリトル・ガーリッシュチーキー、そこに灰川たちは入店する。
愛純や由奈たちは若年女性だから別に何とも思わないが、灰川としては腰が引ける思いだ。そもそも107の中に居る時点で腰は少し引けている。
「いろんな物が売ってるのね! 雑貨もいっぱいあって面白そうなお店ね!」
「そうですよ~、生意気っぽい服とか雑貨がいっぱいなんですっ」
店内には、衣服、アクセサリー、コスメ、雑貨、書籍など様々な商品が所狭しと並び、ピンクや白や黒とかの『いかにも!』というような色合いの物が多く置かれている。
可愛い感じのキャラ物商品も多く、商品の大部分に何か言い知れない生意気さみたいなものが感じられた。
ここは生意気女子、いわゆるメスガキ的な性格を持つ女子たちに人気な店であり、界隈ではメスガキの聖地の一つとして知られているようだ。
流石に店内に『メスガキ』というような掲示は見られず、生意気女子という字に置き換えてポップなどを出しているが、販売されている商品や関連書籍、客層は正にソレ状態である。
「あっ、コレは! 漫画の“生意気マリちゃんのザコ飼育理論”でマリちゃんが持っていたバッグと同じモデルのバッグです!」
「萌え袖パーカーのコーナーがあるわね! オリジナルデザインで生意気さアップって書いてあるわ!」
「う~ん、なんだかよく分からん。でも愛純ちゃんも由奈も楽しそうに見てるな」
愛純はこの店には何度か来ており、ある程度は詳しい。由奈は初めての来店だが、カラフルで生意気な可愛さのある商品に目を引かれて楽しそうにしている。
「わぁ!このネイルチップはスゴいや! 現代式アマルガム・コーティングソードの製造技術と同じテクノロジーが使われているね!」
「これ見てアーちゃん! 生意気女子専用の缶詰めセットだって!すごーい!」
「こっちはもっと何言ってるか分かんねぇや…」
灰川には分からない部分も多い界隈だが、この店にはメスガキ属性とか生意気女子に関するグッズが売られている。
他にも客は居て、佳那美とアリエルがキッズモデルだと分かった客も居るようだが、ここでは特に何もなく買い物が出来ていた。店内には暗黙の了解みたいな何かがあるのだろう。
「うっわぁ~、あの男の人って冴えない見た目なのに、すっごいカワイイ子4人も連れてる~」
「実原エイミと織音リエルっしょ? 事務所のマネージャーに頼んで連れて来てもらったんしょ、みんな顔とか口とか小さ!カワイイ~」
「後の2人も所属者なん? 売り出し中の期待の新人ってカンジ? ツインテの子カワイイ!セミロの子は優しそうなカワイイ系の感じだけど隠し切れない生意気さあるぅ!」
見るからに生意気な性格と分かる女子、普通の見た目の女子、生意気さを隠しているけど隠しきれていない女子など、店の中には何名かの子達が居る。
4人の可愛さ、とりわけ佳那美とアリエルはメディア露出の事もあり注目を集めるが、そこは声を掛けたりせず買い物を楽しむというスタンスを取ってくれた。
灰川はあまり目立たないように店の皆が見える隅の位置に居座り、買い物が終わるまで待つ事にする。
だが、そんな灰川の元にショップ店員が近付いて来た。
「あの、すいません。ユニティブ興行さんですよね? 実原エイミちゃんと織音リエルちゃんのマネージャーさんですか?」
「えっ? 知ってるんですか? あ、はい、マネージャーです」
「お声掛けちゃってすいません、でも安心して下さい。ショップにはキッズタレントの子とかも来ますし、渋谷では珍しい事じゃありませんから」
声を掛けて来たのはショップ店長であり、20代後半の女性であった。
「えっ?20代なんですか? でも張り紙には出店10周年って…」
「私は2代目の店長なんですよ、初代は今はここの管理も含む総合アパレル経営をしています」
「そういう事だったんですか! なるほどっ」
「ユニティブ興行さんの事は写真家の佐伯夫妻から聞いて、私も凄い逸材が出て来たって感じましたよ。お2人が表紙モデルになった号のアグリットは私も買っちゃいました」
「佐伯 泰三さんと佐伯 康江さんが社長さんのお知り合いなんですか、アグリットも読んでもらえたようで嬉しいです」
ユニティブ興行は事務所名はともかく所属者は少しづつ名前が広がって来ており、以前にエイミとリエルのモデル撮影をしてくれた佐伯夫妻も方々に語ってくれていたらしい。(278、279話)
もし良かったらエイミとリエルのサインを店に飾らせてくれないかと頼まれ、2人に聞いて了承を取って後から実原エイミと織音リエルの初サインをする事になったのだった。
「エイミちゃんとリエルちゃん、とっても可愛いですね。アグリットで見た時の何倍も可愛く見えますよ、もちろんツインテールヘアの子とセミロングの子も可愛いです」
「ありがとうございます、ゆっくり選ぶ事になると思うので、しばらく品定めさせてあげて下さい」
「はい、マネージャーさんも気負わずに店内を見て頂けると助かります。ゆっくりどうぞ」
2代目店長は初代が居た時にはスタッフだったそうで、今は商品デザインやリトガチーキーで売れそうな商品の入荷なども担当してるとの事だ。
髪は染めているものの割と落ち着いた感じの雰囲気で、メスガキ属性だった感じはあまりしない。仕事も真面目にやっていそうな感じだった。
社長は現在は少し派手目な婦人服や海外メーカーの衣服の輸入販売などもしているようで、流行に敏感で中々に商売上手な人らしい。
店長は去って行き、皆の買い物は時間掛かりそうだし、少し書籍でも立ち読みさせてもらうかと思う。
灰川は近くにあった棚に目を向け、佳那美たちから目を離し過ぎないよう気を付けながら面白そうな本がないか探してみる。
置いてる本は当然のように生意気女子とかメスガキなんて文字が表紙に並び、愛純が言っていた漫画とか、その他にも『俺の幼馴染はメスガキだ』『生意気言葉辞典』『月刊リトガブック』とかが置いてあった。
そんな中で灰川は1つの非売品と書かれた本に目を引かれて手に取る。
シュウヤ先生と私の出来事
「先生てキッモ! 暗いし目付き悪いし、声もボソボソしてるしぃ、マジで陰キャの3軍負け組男子だったってカンジ? きゃははっ」
「そうですか…どうでも良いですね…、では授業を終わります…」
「コミュ障キモ~イ! なんで教師になったか分かんないんですけど~! JC好きだからぁ?きゃははっ」
私の名前はカズミ(仮名)で、担任教師はシュウヤ先生という人です。見るからに陰キャ男子だったのが分かる感じの人で、私は大嫌いでした。
独身男性でモテない雰囲気がマシマシで、中学生視点で授業もつまんなかったし良い所が見つかりません。
私は大人を完全に舐めている女子でしたし、特にモテない男はイジるためだけの存在くらいに思っていたんです。
シュウヤ先生はそんな私のからかいを完全スルーしていて、それもムカついていました。何を言っても無表情で、まるで自分にも他人にも全く興味がないという素振りです。
「ねえカズミ、前にK中学の男子と肝試しで行ったんだよね? 写真見せてよ、あははウケルー!」
「あん時って太一君が墓石とかバットでボコボコに殴ったんだよね! マジで引いちゃったよ!」
当時の私たちは肝試しで幽霊が出るという噂の廃墟や、前に誰かが亡くなった場所なんていう噂がある場所に行くのが常態化していました。
カラオケとかテーマパークとか行くのはお金が掛かるし、無料で行ける心霊スポット巡りは中学生の私たちには丁度良い遊びだったんです。
そんなある日、突然に私は誰からも粗雑に扱われるようになりました。家族や友達、街ですれ違う人達、あらゆる全ての人達からです。
お母さんは私の分だけご飯を作ってくれなくなり、何を話してもお父さんは『お前が悪い』と言うだけ。
コンビニで何かを買おうとしたらテキトーに商品を投げ入れられ、本社にクレームを入れたら話す前に電話を切られます。
友達からはキモイから話し掛けるなと言われ、街ですれ違う人と肩が当たったらゴミを見るような目で見られました。
そんな環境に毎日を泣きながら過ごしていた私に、シュウヤ先生が話し掛けて来たのです。
「…一条さん、今日の放課後に神社に行きましょう…。嫌でしたら構いませんがね…」
「…………」
もう誰からも相手にされない状態になっていた私は無言で頷き、放課後に先生と電車に乗って、街から離れた場所にある神社に行きました。
その神社は大きくも小さくもなく、駅からも離れた場所にある森の中にあります。先生の親戚が神主を務めている神社との事です。
「うわぁ、祟られてるねぇ! 君が今まで人に向けて来た不寛容と無関心、それと他者への軽視や侮蔑といった精神の発露が自分に返ってきとるんよ。ははっ」
「キリカ姉さんは言葉がキツイね…俺の生徒なんだから少しは優しくしてもらえると助かるよ…」
「まあ何だ、普通の祟りじゃないな。明らかにアレだろ。アレの祟りの形は色々とあるけど、これは自分がやった事が酷くなって返ってきて、終いには~…」
「…そこまでにしてあげてキリカ姉さん…、まあ…なんでも良いか…」
シュウヤ先生の親戚の神社は神主さんが居ない神社のようで、巫女であるキリカさんという人が切り持っている神社なんだそうです。神主が居ないのは大昔からで、事情があるそうなのですが教えてもらえませんでした。
キリカさんは良く言えば大らかな人という感じで、悪く言えば雑な性格という感じに見えました。生意気で人を小馬鹿にする私とは違ったタイプの変な性格です。
「祟りって…そんな祟られるようなこと、私はしてないんですけど…、言い掛かりじゃん…オカルト…?」
「墓石をボコボコに殴ったって、それ立派に祟られる要因だろ? あははっ、そんな事も分かんねぇ馬鹿ガキとか面白いじゃん」
「バットで殴ったのは知り合いの男子ですよ! 私は何もしてない!」
「止めもしなかった上に大した罪悪感も持たなかったんなら同罪だね、まあ別に墓石を殴らなかろうが関係ナシに祟られていただろうけどね」
「はぁ? 殴んなくても祟られてたってコト? ホントに意味わかんないんですけど! ってか詐欺とかでしょ!? 教育委員会とかにチクってやる!」
「だから今のお前がチクった所で誰も話なんか聞いちゃくれないんだっての、はっはっは! マジで馬鹿じゃんコイツ!」
この時はキリカさんに凄く腹が立っていましたし、祟りとかも信用してなくて詐欺とかカルトだと思ったんですが、直後に背筋が凍るような指摘をシュウヤ先生から受けました。
「○○市に墓場はありませんよ…あの地域は、ある事情で墓地を作れませんからね…」
「え…? あれ…? そ、そういえば…街にお墓って無い…っ!」
私の街にはお墓が無いのです、神社やお寺は少しあるんですが、墓地は隣町にあったりするという変わった地域なんです。
肝試しに行った墓地は確かに市内にありました、家からも行ける距離だったんですが、私の住んでいる市にはお墓が無いのです。今はそのお墓があった場所も何故だか思い出せません。
「それとですが…K中学校に太一という生徒は居ません…。同姓同名の生徒が20年前に在席していましたが…亡くなっていますので…」
「え……?」
「昔の学校行事の写真を入手してあります…カズミさんが会ったのは、この生徒ですか…?」
「う、うそっ…! ウソ言ってるんでしょ! 私がいつも先生をバカにしてるから、腹いせでこんなことっ…!」
見せられた写真は確かに一緒に肝試しに行った他校の男子生徒の太一という生徒で、先生には話していないのに何故か個人まで特定されていました。
「はぁ…やっぱ木戸 太一か、生前の行いのせいで成仏も出来ず、穢れのせいで祖霊にもなれず、そのまま悪霊になって今は鬼火墓を守る存在か、ったく」
「キリカ姉さん…どうやら客人のようだね…、鬼火墓はいつでも墓の中に入る者を見逃さない…。墓地にはカズミさんの名前が彫られた墓もあったんだろうね…」
とても、とても悪い気配が神社の中に漂いました、たったの数分の間で酷く纏わり付くような空気が神社の中に充満していたのです。
まるで何年も供養されていない墓地に漂うような空気で、私はあまりの怖さで泣きそうになっていました。これから自分に悪い事が起きる、それが分かるのです。
誰でも良いから助けてと叫びたい気持ちでしたが、それが声に出ないくらい私は震えていました。
その間に鬼火墓?というのが昔の形から変化してしまったとか、祓いが難しくなったとかの話が聞こえた気がしましたが、その辺はあまり覚えていません。
「鬼火墓が鬼火墓地になっちまいましたなんて、胡桃名家が健在だったらボロクソに叩かれてただろうな…。シュウヤ、足止めは任せる」
「…分かったよ…アレを借りるよ…、鬼火墓の番人相手に素手だと分が悪いからね…」
シュウヤ先生は神社の祭壇のような所から棒のようなもの、槍を取り出したのです。
「カズミさん…この本殿から出ないようお願いしますね…、キリカ姉さんは結界をお願いします…」
「誰にモノ言ってんだ、良いからちゃちゃっとやって来い。…死ぬなよシュウヤ……?」
「なるべくそのように努めますよ…」
そこから何があったのかは詳しく話せませんが、扉の隙間から少しだけ見えたシュウヤ先生は怖さが麻痺してるかのような普段の無表情で、太一君の形を思わせる黒い影と槍を持って戦っていました。
キリカさんは祭壇に向かって何かを唱え続けて、私は無事に帰れたのです。
そこから私は周囲から変な扱いをされる事はなくなり、いつもの生活に戻る事が出来ました。
キリカさんが言うには私が行った墓地は、見てしまったら絶対に祟られるお墓がある場所だったそうで、そこで私は非常に悪い意味での生活の変化という祟りを受けてしまっていたそうなのです。
祟られるほど悪い事をした覚えはないと私は思っていましたが、冷静に考えるとお墓をバットで殴ってる人を見て少し引く程度にしか思わないなら、その内に酷い事をしてしまっていたと今は考えられるようになりました。
そして、この時にキリカさんと先生から言われた事を今でも私は忘れないようにしています。
「アンタが甘く見てる世の中はな、アンタが思ってるほど甘くない。戯言も生意気も見境なくほざいてると、次は誰も助けてくれないかもしれないからな」
「…カズミさん…君が私を嫌うように、私は君が嫌いです。ですが私は君の担任なのですよ…困った事があったら迷わず相談して下さい…それが仕事ですから…」
「あ~、カズミちゃんだっけ? シュウヤの言ってること気にすんなよ、コイツは人間全般が嫌いだからよ!はははっ!」
実は今も私の祟りは完全には祓えていないらしく、定期的にキリカさんの神社に行ってお祓いをしてもらっています。
だけど今はそれが私の密かな楽しみにもなっていました。その時はシュウヤ先生も一緒に来てくれるからです。
「シュウヤ先生ってさ、やっぱ暗くて目付きも悪いしキモイよねっ、あははっ」
「…カズミさん…人にそういう事は言わないようにしましょう…、…生意気もほどほどに……」
「今はこーいうこと言うのシュウヤ先生に対してだけだしっ、先生なんだから生徒の生意気くらい多めに見れるよね~?」
学校で先生の事を悪く言う事はなくなりましたし、今はシュウヤ先生が嫌いじゃありません。
ですが、神社に送ってもらう車の中ではどうにも生意気な部分が出てしまうんです。
先生は子供は生意気な部分があって当たり前と思って受け止めてくれていて、暗そうに見えるけど優しい人なんだなと今は感じています。
「…まあ良いでしょう……ですがキモイとかの言葉はどうかと思いますよ…」
「じゃあこういう感じなら良い? 先生キモ~い❤ ザコっぽいかも~❤ あははっ」
「まったく…これだから子供は…、…到着しましたよ…今日こそ鬼火墓に遭遇できると良いのですがね…」
まだお祓いは続いていますが、私はシュウヤ先生が居るから安心しています。
2年後に高校生になっても、その時にお祓いが終わっていても、私はシュウヤ先生に会いに中学校に来てしまう予感が今からしています。
「子供は生意気な部分があって当然か、そりゃそうだよな。俺だって似たような時期はあったんだしな」
「そうですね、ですが現代は子供の生意気さも昔とは変わり、大人が受け入れづらい生意気さを持った子も増えていますから、一概に当然とは納得できない部分もありますね」
「ですよね~、って、うわっ! 店長さんっ、いつからそこに!?」
灰川は立ち読みしていた非売品の書籍『生意気女子の恐怖体験集』という本を落としそうになるが、どうにか持ち直した。
「子供の生意気さが昔とは変わったですか、確かにそうかもですね。俺も大学とかで聞いた覚えがあります」
「はい、昔は子供の反抗なども直接的な言葉や態度でされる事が多かったようですが、今は反抗の手段が陰湿な言動だったり酷い見下しをするという形になっている子も多いと聞きますから」
いつの間にか横に居た店長と灰川は話し、現代における子供の生意気さについて語られる。
「社会環境の変化とかで子供を取り巻く環境も昔とは違くなったようですしね。子供が感じるストレスの質も昔とは違くなった結果として、生意気さの変化なんかも現れているんだと個人的に思います」
「そうですよね、お客の子の中にもストレスが生意気さに繋がってるように見える子も居ます」
生意気な子供というのは昔から居たが、メスガキ属性というようなカテゴリーは昔はなかった。
厳密に言えば昔にも居たのだろうが、明らかに昔とは違った生意気さを持つ子供が増え、現代は生意気さというもの自体が昔とは変わりつつあるという感覚が店長や社長にはあるらしい。
生意気な子供は今も昔も居るし、それを受け入れるのも社会や大人の役目だった。しかし社会は子供の生意気さを受け入れなくなり、手の掛からない『良い子』を求めるようになった部分があるように灰川は感じている。
都合の良い存在を求める社会に対する子供たちの無意識下での集合的な答えの1つがメスガキ属性なのか、単に今まで隠されていた子供という存在に宿っていた精神の一つなのか、それは分からない。
「あの、失礼かもですが、店長さんって何でこの店の店長をやってらっしゃるんですか? 見た感じではメスガ……生意気女子って感じには見えないんですが」
「あはは、そうですよね。仰る通りで私は10代の頃とかでもメスガキ属性じゃありませんでした」
「そうなんですか? だったら何でこういうお店に…」
「私は生意気な子が好きですからね、自分はメスガキじゃなかったけど、そういう子達って可愛いと思ってしまうんですよ」
店長は女性だがメスガキ属性の子達が好きであり、そういった子達が適度に適切に生意気さを発露できる文化や風潮を守りたいのだと語る。
「でも無闇やたらに人を煽るような子になれば嫌われるだけで本人が苦労しますからね、そうならないよう店の出版物や配信を通して、正しく適度に煽る生意気さを持つよう啓蒙していたりもするんですよ」
「少し変わった信念と言うか、想いを持って仕事されてるんですね。なんだかこのお店を見る目が変わりましたよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですね、生意気さは子供の可愛さの1つです。私としては特に女子の生意気さに対する可愛さの気持ちは譲れないですから」
変な店に見えて確かな意思の下で経営されているそうで、リトル・ガーリッシュチーキーは今も多数の人から強い支持を得ているそうだ。
子供は社会を映す鏡であり、生意気さも然りという意思を店長や社長は持っている。
自分たちが可愛いと思える生意気さを広め、そこに可愛さというアクセントを付けて価値ある生意気を発信する。それがこの店なのだそうだ。
「優しい人は怒らないから雑に扱って良いとか、人の優しさを攻撃しても大丈夫だというサインと取らないよう、生意気さから繋がりがちな悪い精神のダサさなんかも発信していますよ」
「そうなんですか、何だか思っていたよりずっと良い店なんですね」
灰川としてはこの店に対する見方が凄く変わった、店主も社長も凄く考えて商売や活動をしているのだと思い知らされる。
街を行く人の数だけ人生があるし、その数だけ本気になってる事や、思想や行動があるのだ。
自分の知らない所で自分の知らない事に本気になっている人達の存在を改めて実感し、なんだか自分も頑張らないとなと思える出来事だった。
「それにしても実原エイミちゃんと織音リエルちゃん、もの凄く可愛いですね…! それにツインテールの子と優しさの中に確かなメスガキ感がある子も、もの凄く可愛いですよ…!」
「ありがとうございます、今度に実原エイミと織音リエルが出演するドラマが~…」
「あの子達が煽ったりしたら破壊力抜群ですね…! うふふふっ…!」
「て、店長さん…?」
どうやら店長は灰川が思っていたより生意気女子が好きなようであり、実原エイミと織音リエルの可愛さや、由奈と愛純の生意気さの良さを語る。
あの子達の煽りが見たい、キッズモデルの2人がメスガキを精一杯に演じる姿が見てみたいとか言い始めるが、仕事もあるため灰川の所から去って行く。
由奈たちは今もワイワイ言いながらショッピングを楽しんでいた。
「誠治! このパーカーって私に似合うかしらっ? なんだか凄く可愛い感じがするのよね!」
「ハイカワっ、このラビットポーチってカワイイよね!? でもボクに似合うかなぁ…」
「灰川さん、灰川さんっ、生意気な子ってカワイイのっ? 私もメスガキのお勉強してみよっかな~、えへへっ」
「むむっ、今月号のリトガブックは新情報がありますねっ、これは買いですっ!」
時に皆から話し掛けられたりするため、新しく客が入って来ても不審者を見る目では見られないのが救いだ。
やがて4人の買い物が終わり、由奈たちは新たな世界を知って、愛純は来週に開かれる大会に必要な物を購入した。
灰川もメスガキ属性や現代における生意気というものに対する認識が少し変わり、見識が少し広がったのだった。
佳那美とアリエルは店長に頼まれて色紙にサインをして凄く喜ばれ、特別に店の限定グッズを灰川も含めた5人に渡された。
渋谷107を出て車に乗って事務所に戻る、その車中でも話は弾んだ。
「来週こそ私のようなメスガキ属性の本番というものです! 今から腕がなるってものですね!」
「どんな大会なんだか知らんけど、良い戦績が残せたら活動にも良い影響あるかもだから頑張ってね愛純ちゃん」
「ボクとカナミも来週は大事なファッションショーだからガンバるよ! レッスンでウォーキングテクニックも身に付いているしねっ、くふふっ」
「由奈ちゃんと仲良しのテブクロちゃんと福ポンちゃんカワイイよ~! 私も由奈ちゃんみたく一緒に遊びたいっ」
「もちろん良いわよ佳那美ちゃん! テブクロと福ポンも佳那美ちゃんになら懐くと思うわ! わははっ!」
その後は皆で事務所で皆に頼まれて上から猫たちを連れて来て事務所内に解き放ち、愛純や佳那美も動物と触れ合って癒されたり楽しんだりした。
こうして日曜の時間も過ぎて行き、引っ越しだったり事務所移転だったりとバタバタした1週間が終わる。来週にはハッピーリレーとシャイニングゲートも同じビルに入る事になるだろう。
ちなみに由奈とアリエルには、他の人が居る時に彼氏だ彼女だとか口に出すのはナシという事になっている。バレたら色々な意味でヤバイ。
佳那美にも秘密だが勘が良い子なので、何かしら勘付いているのかも知れない。
事務所に帰って来て今日も楽しかったと灰川が思っていた時に、由奈とアリエルが近付いてきて、佳那美と愛純には聞こえない声で語り掛けてくるという一幕もあった。
「誠治っ、今度はちゃんと彼女としてデートがしたいわねっ。その時はママから教わった色んなことを誠治にしてあげたいわ! わははっ!」
「ハイカワって生意気な女の子も好きなんだねっ? 上手くやれるか分からないけど、期待に応えられるように生意気なお願いしちゃおうかなっ? くふふっ」
「お、おう。由奈は程々にな? アリエルも別に無理して生意気なこととか言わなくて良いからなっ」
デートと言うには難があるお出掛けだったが、2人は満足だったらしい。
灰川としては由奈とアリエルとは流石に女性として見るのは今は無理があると感じているが、2人とも凄く可愛いと思っているし、こういう事を言われた時には嬉しい気持ちがあるのだった。




