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20.クードヴァンの高速人助け

 夜の街の片隅に、少年と犬が身を寄せ合っていた。

「寒いね……うう……」

「くうーーん……」

 その姿を見たゲスコーンこと、今は人間のクードヴァンは目を光らせながら近づいてきた。

「こんな真夜中に、どうしたんだい2人とも?」

「家が焼けて……唯一の家族だった、おじいさんも死んでしまって……」

「そういう時は教会を頼ろう……こんなところにいてはだめだよぉ?」


 クードヴァンは少年と犬を教会にまで案内すると、少年たちに言った。

「ここまでくればもう大丈夫。後は中の人に事情を説明すればいい」

「あ、ありがとうございます……」

 少年が深々とお辞儀をすると、クードヴァンは彼らに背を向けて歩き出した。もちろんその顔はゲス顔をしているのだが、少年たちにはわからないだろう。



 続いてクードヴァンは、路地裏でたった独りで身を震わせている火打石売りの少女を見つけた。

 彼女は、鼻水を垂らしながら火打石を叩いて、音だけでも暖かくなろうとしている。

「ああ、今日は……クリスマス、ああ……美味しいチキンが見える……」

「今は春先だよ。季節が5か月くらいずれてる」


 そう言いながらクードヴァンは現れると、火打石の少女は「だ、誰?」と質問してきた。

「僕はユニコーンだよ。いまは気まぐれで人助けをしている」

「あ、あなたこそ……大丈夫ですか?」

 火打石の少女は、本当に心配そうにクードヴァンを見つめていたが、本人はどこ吹く風という様子で答えた。

「こういう時には教会を頼ろう……こんなところにいてはだめだよぉ?」


 そう提案すると、火打石の少女は悲しそうに視線を下げた。

「わたしには、父がいるので無理ですよ……今日も飲んだくれて、全然働かないダメ親父ですが……」

 クードヴァンは、にんまりと笑った。

「それは~い~~け~~~な~~~~い~~~~~ねぇ~~~~~~」


 間もなく、火打石売り少女の父親は、叫び声をあげながら逃げ回っていた。

 なんとクードヴァンは一角獣リットーゲイルに姿を戻し、少女を咥えながらダメ親父を追いかけ回していたのである。

 家も町外れにあったため衛兵が来ることも遅れ、火打石売り少女の父親は汗だくになりながら、壁に追い詰められていた。

『児童虐待を続けたければ続ければいい』

「へ?」

 父親は、すっかり酔いが冷めていたようだ。リットーゲイルは目を赤く光らせながら言う。

『女の子を苦しめた分だけ、後でお前を制裁する……留意するように』

「は、は……はい……」



 こうして火打石売り少女と別れたリットーゲイルは、続いては山奥へと行った。

 その小さな山小屋には、おばあさんが住んでいるはずだったが、縛られてクローゼットに監禁されていた。

 そして、乗り込んできたと思しき狼男は、残忍な笑みを浮かべて言う。

「へっ……本当に何もない家だが、お前には孫娘がいたな」

「そ、そんな……孫だけには、孫だけには手を……」

「うるせぇババア! ごちゃごちゃ抜かすと、今すぐにテメーを人間ソーセージにしちまうぞ!」


 この狼男は、凶悪犯として知られている男だった。

 男のぎらついた目を見て、おばあさんは今にも泣きそうな顔で孫娘の命乞いをしたが、男の心には届いていないようだ。

 だからこそ、この牡が意味を持ってくるのである。


『こんばんわ~ 私、赤い覆面と赤の優勝レイがトレードマークの……赤ユニコーンですぅ』

「両方とも真っ白じゃねーか、テメーは色がわかんねーのか!」

『目の前に……手ごろな絵の具がありますのでぇ……』

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」

 リットーゲイルはゲス顔をしたまま、狼男を咥えると夜の森へと駆け出した。

 1時間近くドライブを楽しんだ狼男は、怯え顔のまま逃げ去っていき、二度と人里には近寄らなかったという。



 このように、何人もの町の人々を救済したユニコーンだったが、もちろん理由があった。

 以前に脳内アナウンスがあった通り、人々を救済することで自分の角の長さを伸ばそうとしていたのである。

【リットーゲイル。貴方は今……多くの迷える仔羊たちを導きました。その勇気に敬意を表し……第3の力を授けたいと思います】


 ついに来たかと思いながら、リットーゲイルは自分の角を眺めた。

【固有スキル、リットーゲイル発動。貴方のクラスを……エメラルドユニコーンからシルバーユニコーンに昇格します】

 リットーゲイルの周囲には水塊が飛び交い、彼にとっての第3属性である水が使えるようになった。


 そして、人間であるクードヴァンに変身すると、馬の耳も尻尾もないという、完全な人間に変身できるようになっていた。

『やっぱり……炎だけでなく水魔法も覚えたことで、支援系の魔法もかなり充実したな』


 そこまで言うと、リットーゲイルは不敵に笑った。

『ここまで強くなれば、もう勇者たちと言えど怖くはない……決戦になっても勝つことができる!』



 ちょうどそのころ、勇者一行も着々と準備を整えていた。

 さすがの勇者も、すでにクードヴァンがリットーゲイルであることを見抜いているようである。両者の決戦は、間もなく始まろうとしていた。

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