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18.勇者の一角獣探し

 リットーゲイルは上手に身を隠しているため、当然ながら勇者一行の捜索は難航していた。

 もう、何日も成果が得られない勇者は、勇者事務所の中で今日も苛立ちを募らせており、貧乏揺すりを5回ほど行ったあと、その怒りの矛先を自分のパーティーの探索系能力者に向けた。


「おい、無能鳥使い! まだ、あのバカウマを見つけられねーのか!」

 そう言われた弓使いも、苛立った様子で睨み返した。

「そもそも、あんたが虐めてたから逃げちゃったんじゃない!」

「俺様のせいだっていうのか、このクソ女!」

「勇者なら勇者らしく一角獣に好かれなさいよ……この無能勇者!」

「てめえ!」

 2人が取っ組み合いのケンカを始めたら、格闘家、戦士、修道士の3人が止めに入った。


 幸いにも、すぐにケンカは収まったが、勇者と弓使いの仲は険悪そのものとなり、勇者は気に入らなそうに弓使いを睨んだ。

「てめえも、あのウマのようにクビにしてやろうか!?」

「その態度が一番の原因でしょう! そんなこともわかんないバカなら、こっちから出ていくわ!」


 弓使いが激昂した様子で叫ぶと、他の仲間3人が大いに慌てていた。

 格闘家は勇者に言った。

「よく考えろ、アーチャー以外に一角獣を探せるヤツがいるのか!?」


 修道士も弓使いに言った。

「今の時代は、再就職もなかなか難しいのです。一度冷静になりましょう」


 勇者と弓使いは、いったん黙ったものの、お互いの目が合うと再び睨み合った。

「なにじろじろ見てるんだブス!」

「そっちが見てるからでしょ、このバカ!」

「なんだと無能!」

「ニセモノバカ勇者!」

「ぶっ〇すぞてめえ!」


「だから、やめなさい2人ともっ!」

 修道士が叫ぶと、勇者と弓使いは同時に叫んだ。

「お前こそ黙れ、エセシスター!」

「なんですって!?」

 2人の発言に怒りを露にした修道士も口論に参戦。

 勇者、弓使い、修道士はまさに三つ巴の大喧嘩を始めたのである。遂に頭に血が上ったらしい勇者は近くにあった灰皿を弓使いに投げたら、弓使いは払い除け、飛んで行った灰皿は戦士の頭に当たった。

「おい、何しやがる!」


 戦士が弓使いや勇者を睨むと、2人は即座に言った。

「あんなのが当たるなんて、修業が足りないんじゃないの?」

「そんなところで突っ立ってるテメーが悪いんだよ!」

「修行が足りない……わかったよ、鍛錬の成果を見せてやるよぉ!」


 怒った戦士は、その怪力で石製テーブルを持ち上げると、勇者や弓使いの場所へと投げつけた。

 地面にたたきつけられた石製テーブルは大小合わせて4つに割れ、勇者もまた青筋を走らせながら戦士を睨んだ。

「て、てめえ……これは、俺様が買ったテーブルだぞ! よくも……」

「俺様の鍛錬の成果が見れて良かったな。高い授業料になったが……」

 笑っている戦士に、勇者が殴り掛かると、戦士もまた勇者と乱闘を始めた。

 弓使いも戦士と勇者を殴ろうとしたら修道士に止められたが、弓使いは修道士にターゲットを変更し、女の子2人で場外乱闘をしている。


 唯一、冷静な格闘家は、滅茶苦茶になっていく勇者事務所を眺めており、頭を抱えていた。



 そして2時間後。

 勇者、戦士、弓使い、修道士の4人はボコボコになった状態で座っており、格闘家は凄みのある表情のまま4人に言った。

「まだ殴られ足りない奴がいるのなら申し出ろ……俺が相手をしてやる」


 さすがの4人も、この状況で無傷の格闘家に勝てないことくらいはわかるらしく、大人しくしていた。

「第三者的に今回の件を考えてみたが、結論は覆水盆に返らずだ」


 戦士は小さな声で修道士に聞いた。

「おい、どういう意味だ?」

「一度こぼしてしまった水は、もうグラスには戻らない……ということです」

「おお、わかりやすい……確かにそうだ!」


 格闘家はにこりともせずに言った。

「今さらユニコーンのことを考えても仕方ない。もう、この件はここまでにして他の依頼をこなす……これでいいな?」

「なにテメーが仕切って……」

 勇者は悪態をつこうとしたが、すぐに格闘家が睨みを利かせると、さすがに表情を変えたが、続けて言った。

「俺様は、一度やると決めたことを変えるのは嫌いだ。止めたければテメーら4人で勝手に止めやがれ!」


 勇者がそう言って立ち上がると、他の戦士たちは勇者を見た。

「おい、まだウマを探すと言うのか!?」

「たりめーだ! 俺様はなんとしてもあのプラチナ100枚ヤローを見つけ出す!」

 修道士も意味がわからないと言いたそうに勇者を見た。

「なぜ、何が貴方をそこまでかきたてるのですか!?」


 その言葉を聞いた勇者は、不敵に笑った。

「あのバカウマは確実に一角獣になってる……だから、俺様が叩き潰す!」

「どうしてそう言い切れる!?」

 格闘家が質問すると、勇者は自分の頭を指さしてゲス顔をした。

「テメーらと俺様は、ここが違うんだよ……俺様が、そう感じたのなら、それが事実!」


 その言葉を聞いた勇者パーティーのメンバーは、目を丸々と開いてお互いを見合っていた。

 理屈になっていないし、単なる愚か者の独りよがりにしか聞こえない言葉だ。しかし、この男は嘘はつかない。

 ただの思い込みが激しいだけのバカなら、そもそもSランク冒険者になることもなければ、勇者などとも呼ばれないのである。


「てめえらもはっきりしろ。俺様の尻馬に乗るのか……黙って去るか!」

 パーティーメンバーは、ごくりと唾を呑んだ。


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