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17.勇者を欺く一手

 フェリシアン隊長のアパートに戻った後も、クードヴァンは難しい顔をしていた。やはり、かつて自分を酷い目に遭わせた勇者一行とは関わりたくないのだろう。


 その様子を察したガーディアンのデルフィーヌは、遠慮がちにクードヴァンに話しかけた。

「あの……クーさまはもしや、勇者の一件で悩んでいらっしゃるのですか?」

「うん。あまり連中には関わりたくないんだ。何か奴らの目を欺くいい知恵はないかな?」

 デルフィーヌは、少しだけ視線を上げた。

「それなら、フェリシアン隊長にお願いして、ユニコーン……それも御自身であるリットーゲイルさまを探す……という依頼をこなしてみては?」


 その言葉を聞いた、フェリシアン、イーヴィも名案だと言いたそうに頷いた。

「それ、いいアイデアかもしれないね!」

「まさか、自分自身を探す依頼を受けるなんてあり得ないもんね」


 盛り上がるパーティー一行だったが、話を聞いていたアリーシャは不思議そうに首を傾げた。

「でも、総都合よく……ユニコーンを探す依頼なんてあるのですか?」

 その言葉を聞いたイーヴィは、微笑みながら答えた。

「それがいるんですよ。ユニコーンを探すことに目が無いお貴族様が……」


 その貴族の名はサラブスキーという。

 伯爵の地位を持つ彼は、貴族の中でも無類のウマ好きとして知られ、屋敷の中にウマ用のトレーニングルームを持つほどだと言われている。


 ちなみに、東欧系の名前なので察しがついた人もいるかもしれないが、彼の領地はツーノッパ地方でも北東側にある。


 さて、この話では出番がないサラブスキー卿だが、彼のユニコーンの捜索依頼は、必ずと言っていいほど冒険者ギルドに出されており、受付嬢に聞けばまず斡旋してもらえる代物である。



 翌日もフェリシアン隊がむかうと、受付嬢のゾーイは他の受付嬢と共に仕事をテキパキとこなしていた。

「おはようございますフェリシアン隊長。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「クエストを受注したいんだ」

「でしたら、薬草収集の依頼などは如何がでしょう? 実は、依頼主様がとても喜ばれまして……直接、フェリシアン隊を指名したいと仰っていました」


 指名の話を聞き、フェリシアンはとても驚いていた。

 直接自分を指名する依頼人を持つことは、冒険者の中ではとても名誉なことだし、顧客満足度が高いことこそ一流冒険者の証である。

 一方、自分の弟子というかフロントが認められたことは、クードヴァンことリットーゲイルにとってはとても鼻の高い話だ。コイツは心の中ではすっかり得意になってゲス顔をしたくてたまらないようだ。

 

 フェリシアンは、頬を赤らめながら質問した。

「実は最近、森にユニコーンが姿を表すという話を聞き、調査してみたいと思っていたのですが、クエストを併用することはできますか?」

 受付嬢のゾーイは「少々お待ちください」というと、隣の受付嬢と少し相談した。


「お待たせしました。クエストの併用は、依頼主によって答えが違いますので確認してみるまでわかりません。ちなみに、どちらの依頼を併用なさりますか?」

 フェリシアンは依頼状を見ると、サラブスキー卿のユニコーン捜索依頼と、先程の薬草捜索の指名依頼を指さした。

「この2つをお願いします」

「畏まりました」


 ゾーイは頷くと、目をつぶって右手の親指と小指だけを立てて、特徴的な形を作った。

 これは、フェリシアンたちにはわからない電話ポーズである。これにピンと来るのは、異世界転生者か異世界転移者くらいだろう。

 もちろんゾーイ自身も、ツーノッパ人なのでこのポーズがどういう意味を持っているのかわかっていない。


「お忙しいなか失礼します。いまお時間はよろしいでしょうか……?」

 彼女はテレパシーを用いて、依頼人と話ができるようだ。

 ちなみに、過去にゴリモーリに捕まっていたときには、電話のポーズが取れなかったので、助けを呼ぶことが出来なかった。


 ゾーイは2人の依頼人と会話を済ませると、こちらを見た。

「許可が取れましたので、ギルドとしてクエストの併用を許可できます」

「ありがとうございます」



 こうして、2つのクエストを掛け持ちしたフェリシアン隊はギルドを出て、先日に向かったモルア湖畔へと向かった。彼らはまず、薬草の中でも生命力の強い株を探し出した。

 クードヴァンは、リットーゲイルへと姿を変えると、その生命力の強い株を品定めしていく。

『これほど生命力が強いのなら、軽く50以上の数に増やせそうだね』


 さて、今回の併用クエストは、すでに薬草回収の方は終わったも同然だが、お貴族様からの依頼であるユニコーン探索にどのような答えを出すかというところだ。

 依頼内容を改めて確認すると、どう見てもリットーゲイルを探していることは明らかだが、いきなり正体を現したりすれば、自分から面倒ごとに突っ込んでいくようなものだが、かといって収穫もなく帰ったとなっては、せっかく上がったフェリシアン隊の信用を落としかねない。


「問題は、もう一つの依頼ですね」

「うん、どうする……見つかりませんでした、という答えだけだと……さすがにマズいよね?」

 ガーディアンのデルフィーヌとイーヴィは、困り顔のままフェリシアンに話しかけると、彼もアゴに手を当てたまま「確かにそうだね……」と、悩ましそうな顔をしていた。


「情報を小出しにする……というのはどう?」

 その答えを出したのはアリーシャだった。今は人間の姿をしているとはいえ、小隊はウォーターユニコーンなので、何かと知恵が回るものである。

 リットーゲイルも、薬草の株を増やしながら「なるほど……」と呟いた。

『たてがみや尻尾の毛を差し出せば、依頼主も納得するかもしれない……ということか』

『その通りよ。さすがは私の夫になるべく生まれてきた一角獣ね』


 その言葉を聞き、デルフィーヌとイーヴィはジト目でアリーシャを見たが、彼女はどこ吹く風という様子だ。

 一方フェリシアンは、リットーゲイルのたてがみを撫でて、毛を何本も集めてから小さな布に包んだ。

「では師匠、このたてがみを提出……ということで依頼主様とは顔つなぎとしましょう」


『そうだね。これなら僕たちが一角獣リットーゲイルを本気で探していると、内外に向けて宣伝もできる』


 そう言うとリットーゲイルはゲス顔になった。

 このウマはざまぁ対象がいなくても、この表情が良く似合うから困るものである。

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