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16.まだまだ続くマウント合戦

 リットーゲイルとウォーターユニコーンは、にっこりと笑ったままお互いを眺めていた。

 第1ラウンド。角の長さではリットーゲイルの勝ち。7-4。

 第2ラウンド。先祖の偉大さではウォーターユニコーンの勝ち。0-2。

 そして今まさに、第3ラウンドが始まろうとしていた。


 ウォーターユニコーンは言った。

『では、次は群れの中での生活の巧さを競いましょう……貴方には何人の友人がいますか?』

 その言葉を聞いたリットーゲイルは険しい顔をした。

 親しい者と言えば、パーティーメンバーの3名と教会裏に住んでいる精霊くらいだ。

『……4人だ』

『天才と優秀な者には、妬みも多く集まるもの……しかし!』


 彼女は再びドヤ顔をした。

『私にはなんと、27頭もの友人がいます!』

 さすがのリットーゲイルも、ひきつった顔をした。

『そう……貴方の血を私が受け取って仔を成せば、実力もあり……さらにコミュ力まで備わった子供となる可能性があるのです! どうです、惚れたでしょう?』


 第3ラウンド。友人の多さ対決ではウォーターユニコーンの勝ち。4ー27。

 しかし、これくらいのスコアでは引き下がらないのが、我らのざまぁ職人であるリットーゲイルである。

『た、確かに……お前のコミュ力は認めよう。ただ……ユニコーンは戦闘力の高さも大事だ』

 その言葉を聞いたウォーターユニコーンは身構えた。

『で、では聞きましょう……貴方は一度の戦闘で、何人の敵を倒したことがありますか?』

 その言葉を聞いたリットーゲイルは、勝ち誇った様子でドヤ顔した。

『1対25。相手は全て人間だ!』


 その言葉を聞いたウォーターユニコーンは、なんですってと言いたそうな顔をした。

『な、なんてこと……私でさえも3対8だというのに……』

 第4ラウンド。倒した敵の数対決ではリットーゲイルの勝ち。25ー8分の3。


 その様子を見ていたフェリシアンは、手に汗を握って観戦していた。

「ま、まさに……一進一退の攻防戦だ。どっちが勝つんだこれは……?」

「いえ、隊長……2頭を止めてください……」

 冷静なイーヴィの言葉は、けっきょく却下され、戦いは第5ラウンドへともつれ込んだ。


『こうなったら、2000メートルを何秒で走れるのかを競いましょう……脚の速いウマこそ至高というもの!』

 その言葉を聞いたリットーゲイルは、満足に思いながら頷いた。

『いいだろう。言っておくけど僕は速いよ?』


 まもなく2頭はコースの下見を終えてから、森の獣道2000メートル走を行った。

 コースはもちろん泥道。コースは楕円形で坂道なし。重量負担なし。天候は晴れ。地面の様子は良好である。



 勝ったのはもちろんリットーゲイル。タイムは1分57秒4。遅れてゴールしたウォーターユニコーンは、馬の身体2つ分ほどの差でゴールし、項垂れた。

『どうして……こんなに速いの? まるで……貴方は……』

『なぜだろうね。君と競争していると……多くのウマたちと芝の上で熱い戦いをしていた時の記憶がよみがえってくる』

 そこまで言うと、リットーゲイルは笑った。

『その時の僕は、どんなに勝とうと頑張っても……勝てなかったんだ。不思議だよね。そんな体験なんてしたことないのに……』


 リットーゲイルは表情を変えた。

『いや、今の勝負は待ってくれ。このレースはフェアじゃない。牡と牝では身体の造りが違うのだから、公平を期すためにハンデを設けるべきだ』

 ウォーターユニコーンは、顔を真っ赤にして反論した。

『何を言っているの!? その理屈が肉食獣や人間に通用するとでも!』


 尤もな抗議を受けたリットーゲイルだが、真顔で答えた。

『良識のある人間なら通用する。ハンデは……そうだな、ウマの身体2つ分ということで、今回は引き分けとしよう』


 その言葉を聞いたウォーターユニコーンは、なんだかモヤモヤが晴れないような顔をしたまま言った。

『私が負けているから、何も言えないわ』


 リットーゲイルは、空に目をやると言った。

『そろそろ、我らは戻らなければならない。僕は人間に変身するけど……』

 そうリットーゲイルが言った直後、ウォーターユニコーンは、近くにいたデルフィーヌからタオルを借り、人間の少女の姿になっていた。

 そのボディも、完全に人間に変身しているため、変化魔法はリットーゲイルよりも上手なのがわかる。


「私のことは、アリーシャと呼んで」

 さも当然のように入って来たので、フェリシアンたちも断れなかったようだ。

「は、はい……」


『とにかく、毒消し草だったな』

 リットーゲイルはユニコーンホーンを光らせると、1株生えている毒消し草を53株ほどに増やし、残らずフェルシアンたちに摘み取らせた。


 依頼人は100を希望していたが、そうそう注文通りには行かないという、リットーゲイルからの意思表示だろう。

 彼はリットーゲイルから、人間のクードヴァンへと姿を変えると、すぐに冒険者ギルドへと帰還した。



 受付にはまだゾーイの姿があり、彼女は持ち帰ってきた53株の毒消し草の検品を、手慣れた様子で済ませた。

「クライアントさま、いかがでしょうか?」

 ゾーイは指を丸印を作りながら向けていると、やがてこちらを見た。

「依頼人も、満足して頂けたようです。こちらが報酬となります」

 銀貨5枚と銅貨9枚を謝礼として受け取っていると、通りかかった女性冒険者が言った。


「そういえばあんたたち、まさか……勇者御一行さまと揉めちゃいないだろうね?」

 その言葉を聞いたフェリシアンは、寝耳に水という様子で答えた。

「勇者御一行さまと!? 僕たちだって、そこまで無鉄砲てはありませんよ?」


 その女性冒険者は、少しだけ安心した様子で答えた。

「ならいいんだけど、連中……ゾーイさんに食い下がって……一角獣はどこだってしつこく聞いて来たの。あれはなんだったのかしら?」

 彼女はそう言うと、首を傾げながらギルドを後にした。

 まさか、勇者の調べがここまで来るとは……と言いたそうに、クードヴァンは険しい顔をしていた。



リットーゲイルの救済者 11頭目:ブルシエルアリシア

【作者からのお願い】

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