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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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5. 鳴帝の力

 私の部屋は一階の右。ロキシアの隣にした。ゼロは二階の左。

 驚いた事に、水道も電気も通ってる。これは嬉しい誤算だ。


「しかし、ルカさんにしては優しいな。彼ならば魔物が暮らす中で野宿しろとか言いそうだが」


 浜辺でイージアがアパートをしげしげと眺めていた。

 そういえば、ルカさん(、、)って言った? イージアが誰かに『さん』を付けることは珍しい。神様が相手でも君とか呼ぶのに。なんでだろう。


「サーラ。今日は何するんだ?」


 ゼロが不意に尋ねてきた。

 ルカ師匠の直接指導は二日後。たしかに、それまで何をすればいいのかな。


「うーん……アンタはイージアと訓練でもすれば?」


「イージアかあ……たしかに強いけど、何回も手合せしてるしな。たまに俺たちで一本取る時もあるし。ちょっと飽きたぜ」


 私とゼロの会話を横で聞いていたイージアは、心外だという表情を浮かべた。


「飽きたとは……言っておくが、私は本気を出していないぞ。君たちに合わせて加減しているだけだ」


「えー? ほんとかよ? じゃあ本気で勝負してみてくれよ」


 たしかに、本気は見てみたいかも。

 『八重戦聖』の一人なんだから強いんだろうけど……身近な人だからか、いまいち凄さが分からない。


「……良いだろう。ロキシアも含めて、三人で掛かってこい」


「えっ……わ、私もですか?」


「ああ。全力で来てくれ」


 イージアは私たちから距離を取って、一本の土槍を生み出した。

 ……槍? 剣じゃないの?

 あとイージアの適正属性って風じゃない? 適正外の属性で武器を作れるようになるには、かなりの鍛錬が必要だ。


「よっしゃ! 二人とも行こうぜ!」


 ゼロは剣を抜いてやる気に満ち溢れている。

 ロキシアも恐れながらも近づいて行く。流石にルカ師匠に師事してるだけあって、強くはなりたいようだ。臆病だけど。

 私は後ろの方で杖を構える。魔導士だから立ち回りは後ろで。

 フェルンネ師匠は二階のベランダから、私たちの方を退屈そうに眺めていた。下手な弱さを見せると、後々の指導が厳しくなる。全力でやろう。


「来て……【救いの刃】」


 ロキシアがどこからともなく、黒い剣を生み出した。黒い靄が一本の剣の様に形成されていく。

 それを見たイージアの目が開かれる。光がないから怖い。


「ロキシア……その刃は……君の異能か?」


「はい。先祖代々受け継がれる異能で……【救いの刃】って言うらしいです」


「……そうか。君がラーヤの……」


 彼は私たちへ向き直り、槍を構えた。


「さて、始めようか」


 やっぱり槍を持ってるのは違和感があるなあ……本気の時は槍なの?

 万全に準備を整えた私たち。先頭に立つゼロは、今にも飛び出しそうだ。連携を取る気なんてさらさら無いみたい。


「行くぜっ!」


「我が身に宿れ──『不敗の王』」


「うおっ!?」


 ゼロの吶喊と同時。イージアから爆発的な覇気が放出。気だけで砂塵が舞い、旋風が巻き起こる。

 もちろんゼロも吹き飛ばされ、私の足元まで転がって来た。


「やば……アレ、近付けんの?」


「俺が先陣を切る!」


 ゼロは再び立ち上がって、イージアへ向かって行く。馬鹿だなあ。


「やる気は認めるがな……」


 イージアは呆れた様子でつま先を浜辺に叩き付けた。

 瞬間、私の視界は宙を舞っていた。──浮いてる!? 

 吹き飛ばされたんだ……私だけじゃなく、ゼロとロキシアまでが回転していて……


 イージアの身体がブレた。そして私たちが地面へ衝突すると同時に、持っていた武器が手を離れて浜辺に突き刺さる。

 まさか、今の一瞬で動いた……? 嘘でしょ……


「な、何が起こったんですか……?」


 ロキシアは自分の手を離れた黒い剣を見て、唖然としている。

 そりゃそうなるよね。『八重戦聖』って、こんな規格外なの……?

 なんだか今まで手合せしてたイージアが夢みたいに思える。同じ六花の将なのに、ここまで差があるなんて。


「す、すげー! どうやったんだよ?」


「私の権能、『不敗の王』。自らの戦意を力へと変える術だ。君たちが相手だからあまり戦意は滾らなかったが」


 ……なんかむかつく言い方。少しでも強くなって追いついてやろう。


「もしかしてイージアって、ルカ師匠より強い?」


「……どうだろうな。分からない」


 彼は複雑な表情をした。

 不安なような、寂しいような、何とも言えない表情。仮面をしてる時は分からなかったけど、意外と感情の起伏がある。それとも、最近感情を表すようになったのかな。


 槍を使うまでもなかったイージアは土槍を分解する。

 適正属性の件といい、彼は本当に分からない人物だ。出生も、年齢も、種族も、どうして仮面を被っていたのかも。今度機会があったら色々と聞いてみたい。

 昔はあまり自分のことを話したがらなかったけど、今なら話してくれるかも。


「ふあぁ……ねえイージア。お腹空いた。なんかお菓子買ってきて」


 フェルンネ師匠が欠伸をしてイージアに命じた。

 そういえば、彼女はイージアの覇気を受けても動じなかった。師匠に任じられるだけあって、すごく強い人なのかな。

 それにしてもイージアが不憫だ。パシリじゃん。


「……君の好みが分からないから、一緒に来てくれないか?」


 あ、また叩かれるのを怖がってるみたい。

 それとなく理由を付けて、叩かれるのを回避しようとしてる。


「私が動きたくないから言ってるんだけど」


「……そうだな」


 めっちゃかわいそう。


「……でも、たしかにその通りね。私も行くわ」


「あ、ああ……ありがとう」


 うーん、二人の関係がよく分からなくなってきた。

 主従関係のような、友達のような……とりあえずイージアはいいように扱き使われている。

 アタシもそうなるのかな……ますますフェルンネ師匠に師事するのが億劫になってきた。


 結局、その日はロキシアとゼロと訓練することになった。

 ロキシアは正直ゼロよりも剣士としての熟練度は高い。

 いい訓練相手になりそうだ。


 明くる日、ルカ師匠によるロキシアへの訓練が始まることになる。

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