DAY1 ハゲ×ヲタ17人の仁義なき戦い!? ~愛は部室を救う!…のか?~
午前九時十二分。
国立天晴大学の旧校舎前に、パトカーが二台停まっていた。
「中にいる学生諸君! 落ち着いて、まずは話し合おう!」
拡声器を握った警察官が三階の窓を見上げる。
「だから、ぼくたちは普通に部活してるだけですってば!」
窓から身を乗り出したのは、軽音楽部の神谷莉央。
「では、なぜ入口を封鎖している!」
「勝手に荷物を持っていこうとするからです!」
「なぜ牛がいる!」
「それはぼくも知りません!」
莉央の肩越しに、巨大な茶色い頭がぬっと現れた。
「モォォォォ」
警察官が拡声器を下ろした。
「……牛だな」
「牛ですね」
隣の若い警察官が頷く。
「大学って、牛を飼っていいんでしたっけ」
「俺に聞くな」
窓の向こうでは、牛を押し戻す学生と、牛を撮影する学生と、牛にプロテインを飲ませようとする学生が入り乱れていた。
「ぐおぉおお! 上腕二頭筋が泣いてるぞぉ!!」
警察官は空を見上げた。秋晴れだった。
「……帰りたい」
彼はまだ知らない。
この立てこもりが、毎日午後五時にきっちり終了することを。
そして翌朝九時、何事もなかったように再開することを。
事の発端は、およそ一時間前に遡る。
* * *
午前八時十分 いつもの朝、のはずだった
「ふぁぁ……今日こそ早く帰ろ……」
莉央はギターケースを肩に掛け、大学の正門をくぐった。昨夜は新曲の練習に夢中になり、眠ったのは午前三時過ぎ。片手には朝食のおにぎりがある。
スマートフォンが震えた。
相手は同じ軽音楽部の夜乃さとみ(よの さとみ)。
『莉央ちゃん、大変』
『部室がなくなる』
『あと、なんか偉い人が来てる』
「……は?」
『どういうこと?』
『説明しにくい。早く来て』
送られてきた写真には、旧校舎の前に並ぶスーツ姿の男たちが写っていた。
その中央にいる人物の頭だけが、朝日を異様に反射している。
「……何あれ」
莉央はおにぎりを鞄に押し込み、走り出した。
国立天晴大学の片隅に建つ旧校舎は、壁に蔦が絡み、廊下の床がきしみ、雨の日には二階のどこかから水が滴る。大学案内のパンフレットでは、ほとんど紹介されない建物だ。
けれど、そこには十のサークルが集まっていた。
軽音楽部、科学研究会、筋力トレーニング研究会、アニメーション研究会、農業・畜産研究会、映像制作研究会、サバイバルゲーム研究会、投資研究会、テニスサークル、土木研究会。
花形とは言い難い。それでも、そこにいる誰もが、自分の「好き」を大真面目に抱えている。
莉央にとっても、歌って、笑って、ときどき喧嘩する、大切な居場所だった。
「ちょっと! どういうことですか!」
旧校舎の前で声を上げると、スーツ姿の一団から男が歩み出た。
男は副学長の禿山光。学生の間では、本人にとって実に不本意な「うおっまぶし!」と呼ばれている。
「君が莉央君かね。私は副学長の禿山光だ」
ちょうどそのとき、雲間から太陽が出た。
「うおっ、まぶし!」
莉央は反射的に目を覆った。
副学長のこめかみがぴくりと動く。
「……その呼び方はやめたまえ」
「呼んでません! 現象です!」
「なお悪い!」
副学長は咳払いして、一枚の書類を差し出した。
旧校舎使用停止および施設再整備に伴う退去通知
「この建物は老朽化が進んでいる。大学の発展のため、建て替えが決定した」
「決定したって、いつ?」
「昨日だ」
「昨日!? じゃあ、ぼくたちの部室は?」
「なくなる」
「楽器は?」
「各自で持ち帰りたまえ」
「練習場所は?」
「今後検討する」
「今後っていつ?」
「今後だ」
「何も決まってないじゃないですか!」
副学長は書類を指で叩いた。
「そもそも弱小サークルに、大学の貴重な施設を占有させる必要があるのかね。実績も乏しい。予算ばかり使う」
「ぼくたちは、ちゃんと活動してます!」
「ならば成果を示したまえ。大学の名誉に貢献するような、立派な成果をな」
莉央は唇を噛んだ。
音楽が好きだ。歌うことが好きだ。それが大学の名誉に貢献するかなんて、考えたこともない。
好きだから続ける。それでは駄目なのだろうか。
「では、一階の備品から運び出したまえ」
「ちょっと待ってください!」
莉央が職員を止めようとした、そのときだった。
「待つのはそっちだべぇぇぇ!」
扉を押し開けて飛び出したのは、農業・畜産研究会の熊田牛男。泥のついた長靴に作業着、手には太いロープを握っている。
「うっせぇべ! べこの糞くらわすぞ!」
「な、何だ君は!」
「ここにはオラたちの研究成果が詰まってんだ!」
「研究成果?」
牛男が胸を張る。その背後から、何かが顔を出した。
「モォ」
「……牛?」
「べこだべ」
「牛ではないか!」
「だからべこだべ!」
「なぜ校舎の中に牛がいる!」
「昨日からだべ!」
「昨日から!?」
莉央まで叫んだ。
「ぼくも初耳なんだけど!」
「安心しろ莉央! おとなしい子だべ!」
牛が一歩進み、副学長が二歩下がった。
「動物を近づけるな!」
「べこに失礼だべ!」
騒ぎを聞きつけ、旧校舎の窓が次々に開いた。
「朝から何だ!」
「筋肉に休息は必要だが、騒音は必要ないぞ!」
「カット! 今のやり直し!」
「でゅふふ……興味深い事態なのである!」
莉央は額を押さえた。
「……嫌な予感しかしない」
* * *
午前八時三十五分 まともな人がいない
旧校舎一階の共用部室に、騒ぎを聞きつけた学生たちが押し寄せた。
「つまり、我々の活動拠点が消滅するということか!」
筋力トレーニング研究会の「まっする」と呼ばれる田中真摺が腕を組んで叫ぶ。袖のないシャツから上腕二頭筋が盛り上がっていた。
「ぐおぉおお! 上腕二頭筋が泣いてるぞぉ!!」
「筋肉は関係ないでしょ!」
「関係ある! ここには我々の汗と涙とプロテインが染み込んでいる!」
「最後のは掃除して!」
隣では、アニメーション研究会の「ラブ」と呼ばれる込家羅武が巨大な抱き枕を抱えて震えていた。
「ま、待て……我が聖域が失われるということか……?」
「部室ね」
「『魔法少女可憐たん』の限定グッズが……!」
「持って帰ればいいじゃん!」
「家族に見つかったらどうするんだ!」
「知らないよ!」
窓際ではサバイバルゲーム研究会の「ロワ」と呼ばれる狼羽いやる(ろわ いやる)、自称「混沌の継承者」が空を見つめていた。
「ついに来たか……組織が動き始めたな」
「大学の話だよ!」
「俺の中の“もう一人”が目を覚まし始めている」
「寝かせといて!」
映像制作研究会の「アキ」と呼ばれる白澤秋は、すでにカメラを回していた。
「いいねぇ。自然な怒り。青春群像劇として完璧だ」
「撮らないで!」
「あっ、気にしないで続けて」
「気になるよ!」
さらに奥では、科学研究会の「ハジメ」と呼ばれる理科野発が工具箱を開いて何かを組み立てている。
「でゅふふ……この緊急事態に備えて準備していたのである」
「何を?」
「自動防衛装置!」
「しまって!」
「まだ何も説明していないのである!」
「説明される前から嫌な予感がするの!」
莉央は大きく息を吸った。
「みんな、ちょっと黙ってぇぇぇ!」
部室が静まり返った。牛まで黙った。なぜ牛が部室にいるのかは、もう誰も追及しなかった。
「今、ぼくたちの部室がなくなろうとしてるんだよ!? なのに、なんでみんな自分のことばっかりなの!」
投資研究会の煎論益子が手を挙げた。
「こういうときこそ、共同出資による新施設建設ファンドを――」
「黙って!」
即座に却下された。
「何か、ちゃんとした方法を考えようよ!」
部屋の隅で図面を広げていた土木研究会の千堂俊雄が顔を上げた。
「そもそも建て替えの理由が気になるな。老朽化だと言うが、補修で使える可能性もある。現物を調べずに全面解体と決めつけるのは乱暴だ」
「じゃあ、建て替えなくてもいいかもしれないってこと?」
「調査次第だ。ただし――」
千堂は拳を握った。
「手抜きは爆発だぁああ!!」
「まだ誰も手抜きしてないから!」
莉央は椅子に崩れ落ちた。
「……もうやだ、この大学」
隣に座ったさとみが、そっとお茶を差し出した。
「莉央ちゃん。でも、みんな部室がなくなるのは嫌なんだと思う」
「言い方が変すぎるよ」
「うん。でも、ここが好きなんだよ。みんな」
莉央は騒がしい部屋を見回した。
筋肉を鍛える者。アニメを愛する者。妙な発明に命を懸ける者。牛を連れてくる者。そして、歌うことが好きな自分。
まとまりなんて、まるでない。
けれど、ここに来れば誰かがいる。くだらない話で笑って、喧嘩して、明日にはまた顔を合わせる。
「……そっか」
莉央は立ち上がった。
「じゃあ、守ろうよ。この部室。ぼくたちで守ろう!」
一瞬の静寂。
「よし! 筋肉で守るぞ!」
「可憐たんのためなら!」
「組織への反逆……面白い」
「記録映画にしよう!」
「べこも賛成だべ!」
「モォ」
莉央は目を閉じた。
……やっぱり少し不安だった。
* * *
午前八時五十分 自治会、参上
旧校舎の入口に三人の学生が現れた。
学生自治会執行部長の御坊千也真。
書記の剛田つよし(ごうだ つよし)。
そして副会長で、皆に「三重様」と呼ばれる三重晴美である。
「諸君! 静粛にしたまえ!」
御坊が胸を張る。だが、部室から出てきた莉央と目が合った瞬間、声が裏返った。
「あっ、り、莉央さん……!」
「御坊くん?」
「きょ、今日は、い、いい天気ですね!」
「今、それ関係ある?」
「そ、そうですね!」
三重様が鉄扇を開いた。
「御坊! 何をなさっていますの!」
「ひっ!」
「わたくしたちは遊びに来たのではありませんわ!」
三重様は莉央に向き直る。
「自治会としても状況を確認しに参りましたの。正式な決定を覆すには手続きが必要ですわ」
「手続きしてる間に荷物を持っていかれちゃう!」
三重様が言葉に詰まる。
剛田が一歩前に出た。
「まあ待て。オレ様も、学生の居場所を奪うやり方は気に食わねえ。だが、大学の決定に真っ向から逆らえば、お前らが不利になる。そこは考えろ」
「……じゃあ、どうすればいいの」
誰もすぐには答えられなかった。
そのとき、旧校舎の奥から金属音が響いた。
ガシャン。ガシャン、ガシャン。
ハジメが満面の笑みで現れた。
「でゅふふ……やっと完成なのである!」
莉央の顔から血の気が引いた。
「……何が?」
「自動防衛装置! 外部からの侵入を検知すると、出入口を自動で閉鎖する画期的な――」
ピピッ。
装置が鳴った。
旧校舎に入ろうとしていた職員が足を止める。
次の瞬間。
ガラガラガラッ!
金属製のシャッターが勢いよく降りた。
「うわあああ!」
職員が尻もちをつく。入口は完全に塞がれた。
「成功なのである!」
「成功じゃなぁぁぁい!」
御坊は口をぱくぱくさせた。
「た、た、立てこもり……?」
「違うから! 事故だから!」
三重様が鉄扇を閉じる。
「今すぐ開けなさい!」
ハジメが装置を操作した。
ピピッ。
何も起こらない。
「……でゅふ」
「開かないの?」
「少々、想定外の事態なのである」
「開かないんだね!?」
「はい」
奥から牛男の声が響いた。
「おーい! べこが外に出たがってるべ!」
「今は牛どころじゃない!」
「モォォォ!」
アキがカメラを構えた。
「いいね……これは映画になる」
「撮影やめてぇぇぇ!」
誰かがスマートフォンを掲げた。
「これ、投稿したらバズるんじゃない?」
「やめなさい!」
三重様の制止は一歩遅かった。
数分後、学生向けSNSに投稿が流れ始めた。
『速報:旧校舎で学生が立てこもり。牛も参加』
そして午前九時十二分。
パトカーが到着した。
* * *
午前九時二十分 籠城犯は定時で帰る
「つまり……」
警察官は疲れた顔で事情を整理した。
「大学の施設使用を巡って揉めていたところ、学生が作った装置が誤作動して入口が閉まった」
「そうです!」
「中には牛がいる」
「います!」
「人質はいない」
「いません!」
「凶器は?」
「ありません!」
「危険物は?」
「……たぶん」
「たぶん?」
莉央はハジメを睨んだ。ハジメは目を逸らした。
「でゅふ……」
警察官は深いため息をつく。
「とにかく、危険なことはしないように。大学側とよく話し合いなさい」
「はい!」
警察官が帰ろうとした背中に、御坊が叫んだ。
「ま、待ってください! 彼らは大学の命令に背いて施設を占拠しているのですぞ!」
「君は?」
「学生自治会の御坊です!」
「じゃあ、君たちも大学と学生の間に入って、ちゃんと話し合ってくれ。頼んだよ」
ぽん、と肩を叩かれた御坊が固まった。
「……見事に仕事が増えましたわね」
三重様がため息をつく。
「はっはっは! 面白くなってきたじゃねえか!」
「剛田! 面白がらないでくださいまし!」
警察は、暴力も人質もないと確かめたうえで、大学側に事態の収拾を任せて帰っていった。
旧校舎に静けさが戻ったのは、わずか三秒だった。
「よーし! 筋肉でバリケードを!」
「床を壊さないで!」
「べこに餌やるべ!」
「廊下でやらないで!」
「可憐たんのグッズは最優先で避難させねば!」
「避難するの!? 立てこもるの!?」
「カット! 全員、もう一度最初から!」
「映画じゃなぁぁぁい!」
莉央は頭を抱えた。
旧校舎の退去通知は撤回されていない。副学長は怒ったままだ。シャッターも壊れたまま。
それでも、みんながここにいる。
莉央は窓を開け、外に向かって叫んだ。
「副学長!」
「何だ!」
「ぼくたち、ここから出ません! 部室がなくなるって話、ちゃんと撤回してもらうまで!」
「ふざけるな! そんなことが許されると思っているのか!」
「思ってません!」
「思ってないのか!?」
「でも、黙って出ていくのも嫌です!」
莉央は拳を握った。
「ぼくたち、ここが好きなんです!」
背後から学生たちが顔を出した。
「筋肉も好きだ!」
「可憐たんも!」
「我が闇の眷属たちも!」
「べこもだべ!」
「モォ」
「みんな、ちょっと黙ってて!」
外で剛田が吹き出した。三重様は額に手を当てる。
御坊だけは、莉央をじっと見つめていた。
「……莉央さん」
胸の奥が妙に熱い。だが、今はそれどころではない。
「よろしい! そこまで言うなら勝手にしたまえ! ただし大学としては一切認めん!」
「分かりました!」
「分かっておらん!」
莉央は窓を閉め、仲間に振り向いた。
「こうなったら徹底的にやるよ!」
「おおおお!」
歓声が上がる。
さとみが静かに手を挙げた。
「莉央ちゃん」
「何?」
「徹底的って、何をするの?」
「…………」
考えていなかった。これっぽっちも。
「そ、それは……これから考える!」
全員がずっこけた。
* * *
午後四時五十九分 衝撃の終業宣言
その日、旧校舎では実に多くのことが起きた。
まっするが筋トレ器具で廊下を塞ごうとして床を傷つけた。
ラブが限定グッズを守るために防湿庫を運び込んだ。
ロワが作戦会議を開こうとしたが、誰も集まらなかった。
アキは三時間分の映像を撮影し、すべての場面で莉央に怒られた。
牛男は牛の餌場を確保した。
益子は『旧校舎防衛ファンド』を立ち上げようとして三重様に止められた。
千堂は旧校舎の補修箇所を黙々と調べていた。
そしてハジメは、ようやくシャッターの修理に成功した。
午後四時五十九分。
「あ、もうこんな時間」
莉央はギターケースを背負う。さとみも荷物をまとめた。ほかの学生たちも、次々と帰り支度を始める。
外で様子を見ていた副学長が眉を寄せた。
「……何をしている?」
「帰ります」
「は?」
「五時なので」
「……は?」
「今日はもう終わりです」
「君たちは立てこもっているのではなかったのか!」
「立てこもってますよ?」
「ならば、なぜ帰る!」
「だって、夜は家で寝たいですし」
「…………」
「お風呂も入りたいし。明日も九時からやります!」
莉央は元気よく頭を下げた。
「お疲れさまでした!」
学生たちがぞろぞろと門へ向かう。
「お疲れ!」
「また明日だべ!」
「筋肉は休息も重要だ!」
「闇は夜にこそ深まる……」
「お前は普通に帰れ!」
副学長は立ち尽くした。
「……定時制の立てこもりですの?」
三重様が呟く。
「はっはっは! 最高じゃねえか!」
剛田は腹を抱えて笑った。
御坊は真剣な顔で考え込んでいる。
「……明日も莉央さんに会えるのか」
三重様の鉄扇が、御坊の頭に落ちた。
「何を考えていますの!」
「痛っ!」
午後五時。
こうして国立天晴大学史上初の、勤務時間制籠城事件の初日は終了した。
* * *
午後五時十五分 誰も知らない放課後
旧校舎の廊下は静まり返っていた。
窓から差し込む夕陽の中、ひとりの女性が入口に立っている。
売店の雨宮すみれ(あまみや すみれ)。少し謎めいたお姉さんだ。
すみれは手にした鍵を指先で回しながら、旧校舎を見上げた。
「あらあら……ずいぶん派手に始めちゃったのね」
背後から、穏やかな笑い声が聞こえた。
「ほっほほ……青春だのぉ」
白いひげを蓄えた老人が立っていた。
国立天晴大学の学長、「御来光」と呼ばれる照日富士夫。
「学長先生。今日は大変でしたね」
「ほっほほ。若い者は元気が一番じゃ」
「副学長先生は、明日の朝までに荷物を撤去するつもりみたいですよ?」
「ほう」
御来光は旧校舎の窓を見上げ、少しだけ目を細めた。
「それは困るのぉ」
すみれが微笑む。
「では、いつものように?」
「ほっほほ。頼めるかのぉ」
「もちろんです」
すみれは小さく会釈した。
御来光は、学生たちが去っていった道を眺める。
「……まだ、終わらせるには早いでのぉ」
その頃、副学長室では、副学長が電話を握りしめていた。
「何だと!? 今夜の搬出作業ができない!?」
受話器の向こうから、困惑した声が聞こえる。
「誰の指示だ! 私が副学長だぞ!」
相手の返答を聞いた瞬間、副学長の表情が変わった。
「……学長?」
窓の外では夕陽が沈みかけていた。
その最後の光が、副学長の頭頂部を一度だけ照らす。
「うおっ、まぶし!」
誰もいない副学長室に、彼自身の叫びが響いた。
* * *
DAY1 おわり
次回 DAY2へ続く




