第74話 ベル商会の跡取り
リアネは呆然と立ち尽くしていた。
「また私……」
「目立ちたくないのに……」
そんなリアネへ、ソフィアは優しく微笑む。
「はい」
「ベル商会ご当主にも、ご両親にも、お話ししております」
「…………え?」
リアネが固まった、その時だった。
「聞いたぞ!」
「聞きましたよ!」
聞き慣れた声が後ろから響く。
振り返ると、そこには父と母の姿があった。
「お、お父さん!」
「お母さん!」
父は満面の笑みで大きく頷く。
「祭典での活躍、全部聞いたぞ!」
「事件を解決し」
「四種族の皆様を笑顔にし」
「その上、ベル商会の売上にも大きく貢献したそうじゃないか!」
母も誇らしそうに微笑む。
「今年は過去最高の売上になりそうですよ」
「お客様も皆さん、とても喜んでくださいました」
父は豪快に笑う。
「まさに三方良し――」
一度言葉を区切る。
「いや!」
「四方良しだな!」
「商会良し!」
「教会良し!」
「四種族良し!」
「皆が笑顔になった!」
リアネは照れくさそうに頭をかいた。
「いやぁ……」
「私はそんな大したこと――」
父はリアネの肩へ手を置く。
「さすが私の娘だ」
「ベル商会の次期跡取りとしても、立派な働きだった」
そして、真剣な表情で続ける。
「ソフィア様のお役に立ちなさい」
「もっとソフィア様に気に入っていただきなさい」
母も優しく頷く。
「その通りです」
「たくさん可愛がっていただきなさい」
リアネは目を丸くした。
「お、お父さん……」
「お母さん……」
二人は満面の笑みで頷く。
リアネは天を仰ぎ、大きな声を上げた。
「お父さぁぁぁぁん!!」
「お母さぁぁぁぁん!!」
その悲鳴にも似た叫び声が、祭典を終えた王都へ元気よく響き渡った。




