第73話 もう目立ちたくない
四種族の使節団を見送り終えた帰り道。
リアネは大きく伸びをした。
「はぁ~~~~」
心の底から息を吐く。
「疲れたぁ……」
三日間にわたるエリアネ大祭。
葡萄酒騒動。
代表会談。
贈答品。
祭壇の事件。
犯人探し。
そして魔素火災。
思い返すだけでも目まぐるしい数日間だった。
リアネは満足そうに笑う。
「事件も終わったし!」
「もう目立ちたくない!」
両手を組み、大きく空を見上げる。
「今日は帰って、お酒飲んで寝よー!」
「最高!」
ようやく平穏な日常が戻ってくる。
そんな幸福感に包まれながら歩き出した、その時だった。
「リアネさん」
後ろからソフィアの穏やかな声が聞こえる。
リアネは振り返った。
「はい?」
ソフィアはにこりと微笑む。
「来年も、案内役をお願いいたします」
リアネは固まった。
「……え?」
しばらく瞬きを繰り返す。
「また私ですか?」
ソフィアは笑顔のまま頷いた。
「はい」
リアネはきょろきょろと辺りを見回す。
「えっと……」
「案内役のリアネさんって、他にもいたりします?」
後ろを見る。
左を見る。
右を見る。
誰もいない。
ソフィアはくすりと笑った。
「あなたですよ」
「リアネさん」
リアネは自分を指差した。
「……私?」
ソフィアは優しく頷く。
「はい」
「あなたです」
リアネはその場でがっくりと肩を落とした。
「えぇぇぇぇぇ……」
せっかく平穏な日常が戻ってきたと思ったのに。
どうやら、そう簡単には終わらせてもらえないらしい。
そんな予感が、ひしひしと胸に込み上げてくるのだった。




