第72話 再会の約束
エリアネ大祭を終えた翌朝。
王都の城門前には、帰国の準備を整えた各国の使節団が集まっていた。
馬車へ荷物が積み込まれ。
騎士たちが出発の準備を進める。
リアネも見送りのため、ソフィアと共に城門を訪れていた。
「皆さん」
「お気を付けて帰ってくださいね!」
リアネが笑顔で手を振る。
すると。
エルヴィン、ボルド、ラグナスの三人が、静かにリアネの前まで歩いてきた。
三人とも、どこか穏やかな笑みを浮かべている。
エルヴィンが優しく微笑んだ。
「リアネ殿」
「また一緒に果実酒を飲みましょう」
「次は、我が里自慢の果実酒を持参いたします」
ボルドも豪快に笑う。
「がっはっは!」
「儂も、とびきり旨い酒を持ってくる!」
「今度は朝まで飲み明かそうじゃないか!」
最後にラグナスが一歩前へ出る。
「白竜族は、祭典代表を五年ごとの持ち回りで務めております」
「ですから……」
「私がお会いできるのは、五年後になりますね」
少しだけ寂しそうに微笑む。
「少々、寂しいものです」
リアネはにっこり笑った。
「大丈夫!」
「五年後も、お酒を用意して待ってます!」
その言葉に。
三人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「ええ」
「楽しみにしております」
「約束じゃぞ」
三人はリアネへ向かって深く一礼する。
その姿は。
まるで、旧友へ別れを告げるようにも見えた。
リアネは首を傾げる。
(あれ……?)
(三人とも)
(なんだか、知ってるような……)
一瞬、不安になる。
(もしかして……)
(バレちゃった?)
三人は何も言わない。
ただ穏やかに微笑み。
馬車へ乗り込んでいく。
そして。
ゆっくりと動き出した馬車の窓から、ラグナスが小さく呟いた。
「また、お会いいたしましょう」
その声はリアネには届かなかった。
エルヴィンも。
ボルドも。
誰一人、「エリアネ様」とは呼ばない。
それが。
三千年ぶりに再会した友人へ贈る、三人なりの優しさだった。
リアネは最後まで首を傾げたまま、大きく手を振る。
「また来てくださいねー!」
その笑顔を胸に。
三種族の使節団は、それぞれの故郷へ向けて帰路についた。




