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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第69話 初代の奇跡

 魔素火災は、なおも王都を飲み込もうとしていた。


 人々は避難し、騎士団は必死に誘導を続ける。


 教会関係者も怪我人の救護へ走り回っていた。


 それでも。


 炎は止まらない。


 膝をついたソフィアを見つめながら、リアネは小さく息を吐いた。


(普通の女の子として暮らしたい)


 その願いに嘘はない。


 三千年前の初代大聖女ではなく。


 一人の商人として、友達を作って、笑って暮らしたい。


 それが今のリアネの願いだった。


 それでも。


 不安そうに炎を見つめる町の人々。


 泣き出す子どもたち。


 そして。


 祭典で仲良くなったエルフ族、ドワーフ族、白竜族。


 皆、不安そうな表情を浮かべている。


(……そうだよね)


(せっかく友達になれたのに)


(みんなの、こんな顔は見たくないよね)


 リアネは少しだけ肩をすくめた。


「まったく」


「しょうがないなぁ」


 一歩前へ出る。


「私がやるわ」


 ソフィアが驚いて顔を上げた。


「リアネさん……?」


 リアネは苦笑する。


(光魔法、光魔法って)


(伝説の魔法なんて言われてるけど)


(前世の記憶を取り戻した時、一番驚いたのはそこなんだよね)


(そんなにすごい魔法だったの!?)


 思わず笑ってしまう。


(魔王を倒せる伝説の魔法、みたいに言われてるけど)


(まあ、旅の途中で魔物に襲われたら、光の剣でやっつけてたけどさ)


(じゃないと、一人旅なんて危ないし)


 そして、首を傾げる。


(どっちかって言うと)


(外で宴会してる時に、虫とか獣とか魔物が入ってきたら邪魔じゃない?)


(そのための魔法だと思ってたよ)


 リアネは静かに両手を広げた。


 その瞬間。


 王都全体を包み込むような、柔らかな光が溢れ出す。


「――聖光結界セイクリッド・サンクチュアリ


 光は空高く昇り。


 やがて巨大な結界となって王都を優しく包み込んだ。


 暖かな光だった。


 誰も傷つけない。


 誰一人拒まない。


 ただ優しく、街全体を抱きしめるような光。


 燃え盛っていた炎は、それ以上広がることがなくなる。


 リアネは穏やかに微笑んだ。


「ごめんね」


「ちょっとだけ、静かにしてね」


 両手を胸の前でそっと重ねる。


 そして、静かに告げた。


「――聖域化(リストレーション)


 優しい光が、王都中をゆっくりと流れていく。


 暴走していた魔素は抵抗することなく分解され。


 穏やかな光へ包まれながら、本来あるべき姿へ戻っていく。


 その光は。


 精霊を祖とするエルフ族も。


 ドワーフ族も。


 白竜族も。


 誰一人傷つけることなく。


 まるで「大丈夫だよ」と語りかけるように、優しく街を包み込んだ。


 そして。


 街を覆っていた紅蓮の炎は、一瞬で静かに消え去った。


 静寂が訪れる。


 その光を見た瞬間。


 ラグナスの瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。


「あの光は……」


 震える声が漏れる。


「この温かさ……」


「私は、忘れたことなどございません」


 エルヴィンも静かに目を潤ませる。


「間違いありません」


「三千年前と……同じ光です」


 ボルドは大きな身体を震わせながら、涙を拭った。


「儂も覚えとる……」


「エリアネ嬢ちゃんは」


「いつも、こんな優しい光で皆を包んでくれた」


 ラグナスは空を見上げ、涙を流しながら微笑んだ。


「エリアネ様……」


「やはり」


「あなた様が、今も私たちを見守ってくださっていたのですね」


 三千年前。


 四種族で酒を酌み交わした夜。


 共に旅をした日々。


 笑い合い。


 泣き合い。


 種族の垣根を越えて築いた友情。


 そのすべてが、昨日のことのように胸へ蘇る。


 長命種たちは皆、涙を流しながら。


 ただ静かに、その優しい光を見つめ続けていた。

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