第67話 精霊の民
燃え盛る炎を見つめながら、ソフィアは静かに考え込んでいた。
「火の魔粒子だけを刺激する魔導装置……」
「本来であれば、この程度の規模になるはずがありません」
炎はなおも勢いを増し、王都中へ燃え広がっていく。
その時だった。
「……そういうことですか」
ソフィアは何かに気付いたように顔を上げた。
リアネが首を傾げる。
「ソフィアさん?」
ソフィアは集まった人々へ向き直る。
「皆様」
「魔素とは、火・水・風・土の四つの魔粒子が集まってできています」
その場にいた者たちは静かに耳を傾ける。
「そして」
「竜族、エルフ族、ドワーフ族」
「この三種族は、人族とは根本的に異なる存在です」
ラグナスたちも静かに頷いた。
ソフィアは続ける。
「三種族は『有身精霊』」
「人へ友好的だった精霊が、長い年月を経て肉体を得た種族です」
「そのため、肉体の半分は魔素によって構成されています」
騎士たちから驚きの声が上がる。
「身体の半分が……魔素?」
「そのような身体だったのか……」
エルヴィンが静かに頷く。
「その通りです」
「我々長命種にとっては、広く知られた話ですね」
ソフィアは再び炎へ視線を向けた。
「今回は、エリアネ大祭です」
「四種族の代表だけではありません」
「この一週間、祭典へ参加するため、多くのエルフ族、ドワーフ族、竜族の方々が王都を訪れていました」
リアネも小さく頷く。
「そういえば、町中にいっぱい来てたね」
「宿屋も満室だったし」
ソフィアは静かに結論を告げる。
「その結果」
「王都全体の魔素濃度が、魔導装置の想定を大きく上回ってしまったのです」
その一言に、その場が静まり返る。
「つまり……」
「この炎は……」
ソフィアは頷いた。
「魔導装置が、想定を超える魔素へ反応し、暴走しています」
「魔素を燃料としながら、街全体へ燃え広がっているのです」
エドモンドはその場へ崩れ落ちた。
「そんな……」
「私は……」
「そこまで考えてなど……」
震える手で頭を抱える。
「エリアネ様……」
「信じてください……」
「私は、本当に……」
「こんなことをするつもりでは、なかったのです……」
誰も言葉を返せなかった。
その頃もなお。
王都では、魔素を喰らう紅蓮の炎が静かに勢いを増し続けていた。




