第57話 最終日
エリアネ大祭最終日。
王城前広場には、四種族の代表をはじめ、各国の来賓や巡礼者、町の人々が大勢集まっていた。
祭典最後を飾る、友好の象徴――ロザリオ奉納式。
広場は厳かな空気に包まれ、その開式を静かに待っている。
やがて、司会者の宣言が高らかに響いた。
「これより、エリアネ大祭最終式典『ロザリオ奉納式』を執り行います」
大きな拍手が広場を包み込む。
人族代表であるソフィアは、静かに祭壇への階段を上り始めた。
その表情は穏やかだった。
しかし、その胸中は決して穏やかではない。
葡萄酒。
席順。
贈答品。
式典。
これまで四度にわたり起きた妨害工作。
そして昨夜。
祭壇で遭遇した黒いローブの人物。
ソフィアは胸の内で静かに呟く。
(必ず、この場へ現れます)
もし犯人の狙いが祭典そのものなら。
最大の儀式である、この奉納式を見逃すはずがない。
ソフィアは周囲へ注意を巡らせながら、一歩一歩、祭壇へ歩みを進めた。
その時だった。
「ソフィアさーん!」
明るい声が広場へ響く。
壇上の下では、リアネが満面の笑みで大きく手を振っていた。
「頑張ってくださーい!」
その無邪気な笑顔に、周囲の人々も思わず笑みを浮かべる。
ソフィアも小さく笑みを返した。
「……ありがとうございます」
リアネは満足そうに何度も頷く。
その姿を見つめながら、ソフィアは胸の内で静かに誓う。
(この笑顔だけは)
(私が必ず守ります)
大聖女として。
そして、一人の友人として。
ソフィアは静かに決意を胸へ刻み、祭壇の中央へと歩み出た。




