第53話 尋問ではありません
宝物庫。
先ほどまでの慌ただしさが嘘のように、
静かな空気が流れていた。
リアネは肩を落とし、
しょんぼりとうつむいている。
そんな彼女を見て、
ソフィアは思わず苦笑した。
「リアネさん」
「一応、お伝えしておきますが……」
「私、別に尋問していたわけではありませんからね?」
リアネは力なく頷く。
「……はい」
「気付いたら、自分で全部喋ってました」
ソフィアはくすりと笑う。
「ふふっ」
「そうですね」
「私も、まさかここまでお話しいただけるとは思っておりませんでした」
リアネは両手で顔を覆う。
「うぅ……」
「恥ずかしい……」
ソフィアは優しく微笑んだ。
「ご安心ください」
「私は、答えを知るために問い詰めたわけではありません」
「リアネさんが隠したいとお考えなら、そのお気持ちを尊重するつもりでした」
その言葉に、
リアネはゆっくりと顔を上げる。
ソフィアの瞳には、
疑いも、
責める色もなかった。
あるのは、
ただ相手を思いやる優しさだけだった。
「ですから」
「一つだけ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……はい」
リアネは小さく頷く。
ソフィアは静かに尋ねた。
「どうして、そこまで正体を隠したかったのですか?」
リアネは少しだけ考え込み、
静かに口を開く。
「私ね」
「ロザリオを首に掛けた時に、前世の記憶を思い出したの」
「その時、一緒に光魔法も使えるようになっちゃって」
ソフィアは黙って耳を傾ける。
「その瞬間に思ったんだ」
「これ、絶対に知られちゃ駄目だって」
リアネは困ったように笑った。
「だって……」
「教会に連れて行かれそうだもん」
その表情は、
世界中から崇敬される初代大聖女ではなく、
将来を心配する、
一人の十六歳の少女そのものだった。




