第50話 言い訳
リアネの視線が泳ぐ。
右へ。
左へ。
きょろきょろと落ち着きなく動き回る。
(やばい……)
(やばいよぉ……)
必死に頭を回転させる。
「えっと……その……」
「た、多分、そうなのかなーって……」
「そうなのかな?」
「うん、そうそう!」
「だって透明な金属ですよ?」
「普通、透明な金属なんてありませんよね?」
「だから、アダマンタイトとか、オリハルコンとか、伝説の金属を全部混ぜたら、そうなるのかなーって!」
ソフィアは穏やかに頷く。
「なるほど」
リアネは心の中で安堵した。
(よしっ!)
(誤魔化せた!)
しかし。
ソフィアは優しい笑みを浮かべたまま、
静かに首を傾げる。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「は、はい」
「そもそも……」
「竜王鱗は金属になるのですか?」
「そ、それは……」
「そうっていうか……」
「そうじゃないっていうか……」
「えっと……」
「た、多分?」
冷や汗が頬を伝う。
「予想というか……」
「想像というか……」
「て、適当に言っただけですよ?」
ソフィアは変わらず穏やかな表情のまま、
もう一つだけ尋ねる。
「では――」
「なぜ、アルディオン様が精霊魔法で金属へ精製され、ガンドール様が鍛えられたことまでご存じなのですか?」
「あっ……」
リアネの思考が止まる。
「えーっと……」
「その……」
みるみる顔色が青ざめていく。
やがて、
青を通り越して土色になった。
(ど、どうしよう……)
(言い訳が思いつかない……)
必死に考える。
考える。
考える。
そして――
「……ごめんなさい」
ぽつりと、
小さな声が漏れた。
ソフィアは優しく微笑む。
「何を謝っておられるのですか?」
リアネは半泣きになりながら、
再び必死に脳を回転させる。
「い、いえ!」
「その、ごめんなさいっていうのは……」
「適当なこと言っちゃって、ごめんなさいっていうか……」
「えっと……」
「違うんですよ!」
「違うんですけど……」
「何が違うのかって聞かれると、その……」
言葉が続かない。
口を開いては閉じ、
また開いては閉じる。
最後には力なく肩を落とした。
「……やっぱり、ごめんなさい」
その姿を見たソフィアは、
思わず小さく笑みをこぼした。




