第48話 素材不明
エリアネ大祭、最終日。
夜明け前。
祭典最大の儀式――
『四種族友好のロザリオ奉納の儀』が執り行われる日である。
祭壇へ奉納するため、
ソフィアとリアネは教会最奥の宝物庫を訪れていた。
幾重にも施された結界。
歴代教皇より受け継がれてきた封印。
ソフィアは静かに祈りを捧げ、
一つずつ封印を解いていく。
やがて、
重厚な石扉が静かに開いた。
部屋の中央。
一つの木箱が静かに安置されている。
ソフィアは両手でそれを持ち上げ、
ゆっくりと蓋を開いた。
その中には、
水晶のように透き通ったロザリオが眠っていた。
朝日を受け、
白。
黒。
紅。
翠。
碧。
五色の輝きが静かに浮かび上がる。
リアネは思わず目を細めた。
(やっぱり……)
(綺麗だなぁ)
三千年前。
大好きな友達から贈られた、
世界でたった一つのプレゼント。
旅をする時も。
宴会をする時も。
眠る時でさえ。
肌身離さず身に着けていた、
大切な宝物だった。
それが今もなお、
三千年という悠久の時を超え、
綻び一つなく大切に守られている。
その事実に、
胸が熱くなる。
(みんな……)
(ずっと大切にしてくれてたんだね)
自然と笑みがこぼれた。
ソフィアはロザリオを見つめながら静かに口を開く。
「このロザリオだけは」
「三千年経った今でも、その素材が判明していません」
「現代魔法学をもってしても解析できず、未知の合金とされています」
リアネは思わず頷いた。
「あー」
「そうだね」
「五大金属全部混ざってるからね」
「五大竜王様が、それぞれ竜王鱗を一枚ずつ出してさ」
「アルディオン様が精霊魔法で金属へ精製して」
「最後にガンドール様が全部鍛えてくれたんだよ」
「でも、誰も見たことのない透明な合金になっちゃって」
「みんな、すっごく驚いてたんだよね」
そこまで話して、
リアネはぴたりと口を閉じた。
数度、
ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「あ」
ゆっくりと、
顔から血の気が引いていった。
(……あれ?)
(今の話って……)
(三千年前の話じゃん)
(やっちゃったぁぁぁぁ!!)
一方。
ソフィアは何も言わなかった。
ただ、
穏やかに微笑みながら、
静かにリアネを見つめていた。




