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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第47話 魔法ではなく

 ソフィアは静かに文献を閉じた。


 そして、ここ数日間、リアネと共に過ごした時間を思い返す。


 市場。


 港。


 孤児院。


 鍛冶屋。


 教会。


 懇親会。


 どこへ行っても。


 リアネの周りには、不思議と穏やかな空気が流れていた。


 商談がまとまり。


 喧嘩は自然と収まり。


 病人は安心したように笑顔を見せる。


 子どもたちは無邪気に駆け寄り。


 大人たちも穏やかな表情で言葉を交わしていた。


 そのきっかけは、決して奇跡ではない。


 リアネの何気ない一言。


 相手を思いやる心。


 そして、自然な気遣い。


 すべては、その小さな優しさから始まっていた。


 ソフィアは静かに微笑む。


(リアネさんの周りは……)


(まるで文献に記されていた『安らぎの光』のようです)


 しかし。


 リアネは聖職者ではない。


 光魔法を扱う聖女でもなければ。


 奇跡を行使する大聖女でもない。


 一人の商人である。


 それにもかかわらず。


 人々は自然と安心し。


 笑顔になり。


 心を開いていく。


 ソフィアは窓の外へ視線を向けた。


 夜空には、静かな月が浮かんでいる。


(でしたら……)


(初代様の『安らぎの光』とは)


(本当に魔法だったのでしょうか)


 ふと。


 一つの考えが胸をよぎった。


(人を想い)


(人に寄り添い)


(誰かのために行動する)


(そのお人柄こそが、『安らぎの光』と呼ばれたのではないでしょうか)


 魔法だから、人々が笑顔になったのではない。


 優しさがあったから、人々は安心した。


 思いやりがあったから、人々は心を開いた。


 その結果として。


 まるで光魔法のように、人々へ安らぎが広がっていった。


 もし、そうだとしたら――


 初代大聖女エリアネの奇跡とは。


 魔法ではなく。


 人を想い、人を繋ぎ、人へ寄り添う。


 その優しさそのものだったのかもしれない。


 ソフィアは、そっと文献へ手を添える。


 そして、優しく微笑んだ。


(リアネさんは、今日も何も知らないまま)


(誰かの笑顔のために手を差し伸べているのでしょうね)


 その姿は、三千年前に人々を笑顔へ導いた初代大聖女と、どこか重なって見えた。


 夜風が静かに書庫の窓を揺らす。


 ソフィアは月明かりを見上げながら、小さく微笑むのだった。

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