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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第46話 安らぎの光

 リリア教会大図書館。


 一般信徒が立ち入ることのできない、教会最奥の古文書庫。


 ここには、教会創設以前から伝わる数多の古文書が厳重に保管されている。


 リリア王国は、初代大聖女エリアネの生まれ故郷。


 そのため、世界で最も多くエリアネに関する文献が残されていると言われていた。


 薄暗い書庫の中。


 ソフィアはゆっくりと本棚の間を歩く。


(もしかしたら……)


(初代様の『安らぎの光』についても、何か記されているかもしれません)


 やがて一冊の古い文献を手に取る。


 革張りの表紙には、静かに題名が刻まれていた。


『初代大聖女エリアネ』


 ソフィアは慎重に頁を開く。


 古びた羊皮紙には、初代大聖女の功績が丁寧に書き記されていた。


 四種族融和。


 各地での魔物退治。


 各国歴訪。


 そして――。


『安らぎの光』


 その文字を見つけたソフィアは、思わず息を呑む。


 ゆっくりと読み進める。


『人々の心を癒やし』


『争いを鎮め』


『世界へ平穏をもたらした奇跡』


 その一文を読んだところで。


 ソフィアの手が止まった。


(……おかしい)


 小さく呟く。


 光魔法とは、魔素を魔粒子へ分解し、その力を利用して発動する魔法である。


 浄化。


 治癒。


 結界。


 そして、魔を討つための攻撃魔法。


 長い年月をかけて体系化され、その理論は現在まで受け継がれてきた。


 だからこそ。


(精神へ直接干渉する光魔法は……存在しません)


 人の心を癒やす。


 争う意思そのものを鎮める。


 そのような術式は、現在の光魔法理論では説明できなかった。


 ソフィアはもう一度、文献へ目を落とす。


『安らぎの光』


 その名だけが、まるで答えを知っているかのように静かに記されている。


(でしたら……)


(『安らぎの光』とは、一体何だったのでしょう)


 ソフィアは静かに本を閉じた。


 そして、今日一日の出来事を思い返す。


 壊された祭壇。


 誰よりも先に駆け出したリアネ。


 町人。


 巡礼者。


 エルフ。


 ドワーフ。


 白竜族。


 誰も命じられてはいなかった。


 それでも皆が自然と集まり、笑顔で助け合っていた。


 まるで、一つの光に導かれるように。


 ソフィアは窓の外に浮かぶ月を見上げる。


(もしかすると……)


(『安らぎの光』とは)


(魔法ではなく――)


 そこまで考えたところで、ソフィアは小さく首を振った。


「……まさか」


 文献は、奇跡の名を伝えているだけだった。


 その正体は。


 三千年という長い時の中で、誰にも分からなくなってしまっていた。

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