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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第45話 安らかな時間

 祭典最終日を翌日に控えた夜。


 ソフィアは自室の窓を開け、小さく息を吐いた。


 夜風が頬を優しく撫でていく。


 先ほどまでの出来事が頭から離れない。


 黒いローブの人物。


 逃走。


 そして、残されたボタンと足跡。


(眠らなければ……)


(明日は朝から式典です)


 そう思って目を閉じても、不思議と眠気は訪れなかった。


 ソフィアは苦笑しながら部屋を出る。


「少しだけ、夜風に当たりましょう」


 王城の回廊は静まり返っていた。


 窓から差し込む月明かりだけが、石畳を淡く照らしている。


 静かな夜だった。


 歩きながら、ソフィアは自然とここ数日を思い返していた。


 市場。


 港。


 教会。


 懇親会。


 四種族代表会談。


 式典。


 どこへ行っても。


 リアネの周りには、不思議と穏やかな空気が流れていた。


 誰かが困っていれば手を差し伸べる。


 争いが起きそうになれば、自然と収まる。


 笑顔は笑顔を呼び。


 人は人を繋いでいく。


 気付けば、その場は温かな空気に包まれていた。


 まるで――


 春の日差しの中にいるようだった。


(本当に、不思議なお方です)


 ソフィアは小さく微笑む。


 気付けば、自分もリアネと過ごす時間を心待ちにしていた。


 一緒に歩き。


 一緒に話し。


 一緒に笑う。


 それだけで、張り詰めていた心が自然と解けていく。


 不思議と安心できる。


 そんな時間だった。


 その時。


 一つの言葉が、ふと脳裏をよぎる。


『安らぎの光』


 初代大聖女エリアネ。


 教会へ伝わる数多の光魔法の中でも、文献に名だけが残る幻の奇跡。


 人々の心を癒やし。


 争いを鎮め。


 四種族へ平穏をもたらしたと伝えられる、固有光魔法。


(そういえば……)


(どのような光魔法だったのでしょう)


 ソフィアは幼い頃から光魔法を学び。


 大聖女となった今も、なお研鑽を積み続けている。


 しかし。


 その魔法だけは、一度も見たことがなかった。


 伝承に名前だけが記される、不思議な光。


 ソフィアは静かに立ち止まる。


(もしかすると……)


(教会最古の文献なら、何か記されているかもしれません)


 胸に芽生えた小さな疑問。


 それを確かめたいという気持ちは、もう抑えられなかった。


 ソフィアは静かに歩き出す。


 夜の静寂に包まれた回廊を抜け。


 その足は、教会大図書館へ向かっていた。

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