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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第41話 かけがえのない友人

 贈呈式は盛況のうちに幕を閉じた。


 四種族の代表たちは、それぞれ贈られた品を手に、満足そうな笑みを浮かべている。


 リアネはその様子を見届け、ほっと胸を撫で下ろした。


「よかったぁ……」


 誰にも聞こえないように、小さく呟いた、その時だった。


「リアネ殿」


 穏やかな声に振り返る。


 そこには、エルフ族代表エルヴィンが立っていた。


 その手には、贈られた木製の食器が大切そうに抱えられている。


「この贈り物……」


「あなたが選ばれたのでしょう?」


 リアネは慌てて両手を振る。


「い、いえいえ!」


「町の皆さんが協力してくださったので!」


「私は少しお手伝いしただけですよ!」


 エルヴィンは優しく微笑んだ。


「隠さなくても結構です」


「あなたの顔を見れば分かります」


 リアネは思わず苦笑する。


「あはは……」


 エルヴィンは木製の器をそっと撫でた。


「木の温もり」


「人の手仕事」


「自然への敬意」


「このような贈り物を選んでくださる方は、そう多くありません」


 懐かしそうに目を細める。


「昔――」


「エリアネ様も、同じようなお方でした」


 その一言に、リアネの心が小さく揺れた。


「あなたを見ておりますと、不思議と、あのお方を思い出します」


 リアネは目を丸くする。


(あ)


(この人……)


(三千年前、エルシオンで会った人だ)


(元気だったんだ)


 懐かしい記憶が胸をよぎる。


 その時だった。


「がっはっは!」


 豪快な笑い声が響いた。


 ドワーフ族代表ボルドである。


「嬢ちゃん!」


「こっちの工具も、お前さんが選んだんだろ?」


「えっ?」


「ち、違いますよ!」


「本当に町の皆さんが――」


 ボルドは腹を抱えて笑った。


「嘘つけ!」


「顔に書いてある!」


 周囲から思わず笑いが起こる。


 ボルドは贈られた工具を手に取り、嬉しそうに眺めた。


「昔、エリアネ嬢ちゃんが言ってくれたんだ」


『職人さんの作品には、作った人の心が宿ってるんだね!』


「たった一言だった」


「だが、その一言が嬉しくてな」


「儂ら職人は、今でも語り継いどる」


 そう言って、リアネへ向かって力強く頷いた。


「ありがとな」


 リアネは照れくさそうに笑う。


(あ、この人も)


(鍛冶場でよく一緒に飲んだっけ)


(本当に変わらないなぁ)


 そして最後に、一人の白竜族が静かに歩み寄ってきた。


 白竜族代表ラグナス。


 彼はしばらく何も言わず、贈られた風景画を見つめていた。


 やがて静かに口を開く。


「人間の文化」


「その時代にしか生まれない芸術」


「我ら白竜族にとって、これほど価値ある贈り物はありません」


 リアネは嬉しそうに微笑んだ。


「喜んでいただけて何よりです」


 ラグナスは、ゆっくりとリアネへ視線を向ける。


「あなたを見ておりますと……」


「昔のエリアネ様を思い出します」


 リアネの表情がわずかに止まる。


 ラグナスは懐かしむように微笑んだ。


「エリアネ様は、どの種族に対しても分け隔てなく接してくださいました」


「相手を知ろうとし」


「相手が何を喜ぶのかを考え」


「誰よりも楽しそうに笑っておられました」


 そして静かに空を見上げる。


「人間の皆様からすれば」


「エリアネ様は神話の存在なのでしょう」


 一拍置いて、優しく微笑んだ。


「ですが、私どもからすれば違います」


「エリアネ様は――」


「かけがえのない友人でした」


 一筋の涙が、静かに頬を伝う。


「もし叶うのであれば……」


「もう一度、お会いしたいものです」


 リアネは、その姿をじっと見つめていた。


(……あ)


(思い出した)


(この人)


(オルドの側近だった人だ)


 三千年前。


 白竜皇オルドの隣で、いつも穏やかに微笑んでいた青年。


 旅へ出るたび見送ってくれて。


 宴会では酒を酌み交わし、他愛もない話で何度も笑い合った。


(よくしてもらったな)


(また会えたね)


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


 けれど。


 今はまだ、自分がエリアネだと名乗ることはできない。


 だからリアネは、いつものように優しく微笑み、そっと頭を下げた。


「今後とも、よろしくお願いします」


 ラグナスも深く一礼する。


「こちらこそ」


「よろしくお願いいたします」


 二人は穏やかに笑みを交わした。


 その様子を見守っていたソフィアは、不思議な感覚に包まれていた。


(どうしてでしょう……)


(あのお二人は)


(まるで、三千年ぶりに再会した旧友のようでした)


 その答えを知る者は――


 リアネ、ただ一人だけだった。

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