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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第40話 贈答品

 祭典二日目。


 四種族代表会談を終えた午後。


 王城では、四種族代表へ贈る贈答品の贈呈式に向け、実行委員たちが最後の準備を進めていた。


 その時だった。


「大変です!」


 一人の係員が血相を変えて駆け込んでくる。


「贈答品がありません!」


 一瞬、場の空気が凍り付く。


 責任者は慌てて保管庫へ駆け込んだ。


 しかし、本来そこに置かれているはずの木箱は跡形もなく消えていた。


「総員、捜索だ!」


「王城中を探せ!」


 衛兵、実行委員、騎士たちが一斉に走り出す。


 だが、どこを探しても見つからない。


「式典開始まで、あと三十分です!」


 係員の報告に、責任者は頭を抱えた。


「間に合わない……。」


「贈答品がなければ、四種族に対して失礼になってしまう。」


 その時だった。


「大丈夫です!」


 明るい声が響いた。


 リアネだった。


「リアネさん……?」


 責任者が振り返る。


 リアネはにっこりと笑った。


「贈答品なら用意できます!」


「そんなことが可能なのですか?」


「もちろんです!」


「私、皆さんが喜ぶものを知っていますから!」


 その一言で、ベル商会が動き出した。


「倉庫を開けてください!」


「在庫を全部確認します!」


 さらに町へ知らせが飛ぶ。


 祭典の贈答品が足りない。


 その知らせを聞いた商人や職人たちが、自慢の品を抱えて次々と王城へ集まってきた。


「リアネちゃん!」


「これを使ってくれ!」


「いや、こっちの方が出来がいいぞ!」


 木工職人。


 陶芸職人。


 鍛冶師。


 画家。


 彫刻師。


 町中の人々が、祭典のために力を貸してくれる。


 リアネは運ばれてきた品々を一つひとつ丁寧に見て回った。


 最初に手に取ったのは、美しい木目が浮かぶ木製のスプーンとフォーク。


 そして、素朴な温もりを感じる陶器の器だった。


「こちらはエルフ族の皆さんへ。」


「自然を大切にされる方々ですから、人の手仕事が感じられる物を喜んでくださいます。」


 木工職人たちは嬉しそうに頷いた。


 続いてリアネは、名工が鍛えた工具と細工の美しい短剣を選ぶ。


「こちらはドワーフ族の皆さんへ。」


「職人の魂が込められた作品を、とても大切にされます。」


「きっと喜んでくださいますよ。」


 鍛冶師たちは胸を張った。


「任せろ!」


「一番の出来だ!」


 最後にリアネは、一枚の風景画と繊細な陶芸品、木彫り細工の前で足を止める。


「こちらは白竜族の皆さんへ。」


「白竜族の皆さんは、人間の文化がお好きなんです。」


「派手な宝石よりも、その時代、その土地でしか生まれない芸術や文化を、とても大切にしてくださいます。」


 画家も陶芸家も驚いたように顔を見合わせる。


「そんな風に見てもらえていたなんて……。」


 責任者は感嘆の息を漏らした。


「そこまで種族ごとの好みをご存じだったのですね。」


 リアネは少し照れくさそうに笑う。


「昔から、いろいろ教えていただいたんです。」


 その言葉に、その場の誰もが納得したように頷いた。


 町全体が一つになり、贈答品はあっという間に揃っていく。


 その時だった。


「見つかりました!」


 衛兵が息を切らして駆け込んでくる。


「祭典資材倉庫です!」


「贈答品を発見しました!」


 全員が倉庫へ向かった。


 そこには教会の封印が施された木箱が静かに積まれていた。


 管理責任者は安堵の息を吐く。


「誰かが間違えて運び込んだのでしょう。」


「これで安心です。」


 しかし、リアネは町の人々が持ち寄ってくれた贈答品へ目を向けた。


「せっかく皆さんが祭典のために心を込めて用意してくださいました。」


「今日はこちらを贈りませんか?」


 責任者は少し驚く。


「よろしいのですか?」


 リアネは力強く頷いた。


「はい。」


「こちらには、町の皆さんの想いが詰まっています。」


 その一言に、職人たちも商人たちも自然と笑顔になった。


 責任者も静かに頷く。


「分かりました。」


「本日の贈答品は、こちらを代表の皆様へお贈りしましょう。」


 歓声が上がる。


 町の人々は互いに顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。


 一方。


 ソフィアだけは、資材倉庫へ戻された木箱を静かに見つめていた。


(違います……。)


(先ほど、この倉庫も捜索しました。)


(あの時、この木箱はありませんでした。)


 つまり。


(誰かが戻したのですね。)


 懇親会。


 四種族代表会談。


 そして贈答品。


 三つの事件は一本の線で繋がり始めていた。


 ソフィアは静かに木箱へ視線を落とす。


(祭典を混乱させようとしている者がいます。)


(ですが……。)


 その視線の先には、町の人々へ何度も頭を下げ、感謝を伝えるリアネの姿があった。


 誰も責めず。


 誰も見捨てず。


 人と人を繋ぎ、笑顔を生み出していく。


 ソフィアは小さく微笑む。


(リアネさん。)


(あなたがいる限り、この祭典はきっと大丈夫です。)

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