第3話 四種族友好のロザリオ
五大竜王から託された五枚の竜王鱗。
その前へ、一人の青年が静かに歩み出る。
エルフ族の王にして精霊王。
精霊王アルディオン・エルヴェシア。
「では、次は私の役目です」
アルディオンは五枚の竜王鱗へ静かに手をかざした。
その瞬間。
森を渡る風が優しく吹き抜ける。
大気に満ちる魔素が、精霊たちの歌声へ応えるように集まり始めた。
古よりエルフ族だけが受け継いできた古代精霊魔法が、静かに発動する。
淡い光に包まれた五枚の竜王鱗は、ゆっくりと姿を変えていった。
白竜鱗は、アダマンタイトへ。
黒竜鱗は、黒曜鉄へ。
紅竜鱗は、ヒヒイロカネへ。
翠竜鱗は、オリハルコンへ。
碧竜鱗は、アポイタカラへ。
世界でも類を見ない、五つの伝説の金属が誕生した。
アルディオンは満足そうに微笑む。
そして、一つの木の実を取り出した。
「こちらも、お納めください」
それは世界樹の実。
世界に一本しか存在しない世界樹から実る、奇跡の果実だった。
エリアネは慌てて首を横に振る。
「えっ!」
「こんな大切なもの、貰えないよ!」
アルディオンは穏やかに微笑む。
「友へ贈る品に、惜しむ理由はありません」
「ありがとう……!」
エリアネは世界樹の実を胸へ抱くように受け取った。
すると今度は、一人の大男が豪快に前へ歩み出る。
ドワーフ族の王にして、鍛冶の頂点。
鍛冶王ガンドール・アイゼンハルト。
「最後の仕上げは俺に任せろ!」
ガンドールは五つの伝説の金属を炉へ入れた。
真紅の炎が激しく燃え上がる。
巨大な槌を振り上げる。
カァン――。
澄み渡る音が辺りへ響く。
もう一打。
カァン――。
さらにもう一打。
カァン――。
一打ごとに五つの金属は溶け合い、
一つの輝きへと姿を変えていく。
そして――
最後の一打が振り下ろされた。
カァァァン――。
眩い光が、その場を包み込む。
やがて光が静かに収まると、
そこには誰も見たことのない金属があった。
「これは……」
ガンドールは思わず息を呑む。
その金属は、
水晶のように透き通った無色透明だった。
しかし。
光を受ける角度によってのみ、
白。
黒。
紅。
翠。
碧。
五色の輝きが静かに浮かび上がる。
その場にいた誰もが言葉を失った。
「こんな金属……見たことがねぇ」
ガンドールが呟く。
アルディオンも静かに首を振った。
「私も初めて見ます」
オルドは透明な金属を見つめ、
穏やかに微笑む。
「友好が、新たな奇跡を生んだのであろう」
理由は誰にも分からなかった。
以来。
同じ合金が生まれることは、二度となかった。
その製法も。
素材も。
後の時代には失われる。
ガンドールは透明な合金を丁寧に加工し、
アルディオンから託された世界樹の実を中央へ納めた。
こうして、
世界で唯一つ。
四種族友好のロザリオが誕生した。




