第36話 繋がる点
その夜。
ソフィアは一人、
客室の机へ向かっていた。
目を閉じると、
リアネとの会話が次々と思い浮かぶ。
(落ち着いて整理しましょう)
(感情ではなく、事実だけを)
ソフィアは静かに思考を巡らせる。
最初に引っ掛かったのは、
『それほどでもないですよ』
初代大聖女エリアネを褒めた時、
まるで自分が褒められたかのように返した一言。
次に。
『エリアネ様も見習うべきですよ』
本人を他人のように語る、
不思議な口ぶり。
そして。
四種族との宴会で酒を酌み交わしていたという話。
各種族それぞれの酒の好み。
人族は葡萄酒。
ドワーフ族は麦酒。
エルフ族は蜂蜜酒。
白竜族は蒸留酒。
まるで、
昨日一緒に酒を酌み交わしたかのような自然さだった。
さらに。
昔は聖女ではなく、
男も女も『聖者』と呼ばれていたこと。
当時、
女性の聖職者には今ほど発言権がなかったこと。
人喰い竜と恐れられていた時代があったこと。
サンセリテ様が、
エルシオン王国の宮廷筆頭魔導士だったこと。
そして。
白竜皇オルド様の口癖まで。
どれも、
一つだけなら偶然で済ませられる。
しかし。
一つ、
また一つと積み重なるたび、
偶然では説明がつかなくなっていく。
(ここまで一致するものでしょうか……)
ソフィアは静かに息を吐いた。
リアネの話し方は、
文献を読んだから知っているというものではない。
誰かから聞いた昔話とも違う。
まるで、
自ら見て、
自ら経験した出来事を懐かしむように語っている。
(ですが……)
ソフィアはゆっくりと首を横へ振る。
(まだ証拠はありません)
すべては、
私の推測に過ぎない。
けれど。
リアネが語った数々の話は、
歴史書や文献だけでは知り得ないものばかりだった。
そこには、
当時を知る者だけが持つ実感があった。
(どうして……)
(リアネさんは、そのようなことをご存じなのでしょう)
答えは分からない。
ただ一つだけ、
確かなことがあった。
リアネは、
存在しないはずの記憶を持っている。
ソフィアは静かに目を閉じる。
(その理由を……)
(私は知りたい)




