第35話 口は災いの元
教皇サンセリテの話を終えた後も、
二人は祭典会場を並んで歩いていた。
ソフィアはふと足を止め、
優しく微笑む。
「リアネさん」
「はい?」
「リアネさんとお話しするの、とっても楽しいです」
思いがけない言葉に、
リアネは目をぱちくりさせた。
「え?」
そして照れくさそうに笑う。
「ありがとう」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
ソフィアも嬉しそうに笑みを返した。
「知らないことを、たくさん教えてくださいますから」
リアネは頭を掻く。
「えへへ」
「でもね」
「昔からなんだよ」
「思ったこと、すぐ口にしちゃうの」
懐かしそうに笑いながら、
何気なく続けた。
「オルド様にもね」
「『口は災いの元』って」
「『思いつきで喋りすぎる』って」
言い終えた瞬間。
リアネの笑顔が凍り付く。
「あ。」
(しまったぁぁぁぁ!!)
(またやったぁぁぁ!!)
リアネはその場で硬直した。
「あ、あの!」
「ことわざですよ!」
「ほら!」
「『口は災いの元』って、よく言うじゃないですか!」
「きっと白竜皇オルド様も、そういうことを仰る方なんじゃないかなぁって!」
「は、ははは……」
乾いた笑いだけが響く。
ソフィアは何も言わなかった。
ただ、
穏やかに微笑む。
(リアネさん……)
(本人は言い訳をしているつもりなのでしょうけれど)
(全然、言い訳になっていないんですよね)
それでも、
問い詰めるつもりはなかった。
(それにしても……)
(どうして、そんなに焦っておられるのでしょう)
まるで、
知られたくない秘密を必死に隠そうとしている子どものようだ。
その姿が、
どこか微笑ましく映る。
(ふふっ)
(焦っているリアネさんも、可愛らしいですね)
一方。
リアネは冷や汗を流しながら、
心の中で頭を抱えていた。
(もう駄目だぁ……)
(私、絶対怪しまれてるよぉ……)




