第31話 積み重なる違和感
その夜。
ソフィアは客室の窓辺へ立ち、
静かな夜空を見上げていた。
今日一日の出来事が、
頭の中で何度も繰り返される。
(些細なことです)
(きっと私が気にしすぎているだけなのでしょう)
そう思う。
そう思おうとする。
しかし。
一度気になり始めると、
リアネの言葉が次々と思い浮かぶ。
『それほどでもないですよ』
まるで、
本人が褒められたかのような返事。
『エリアネ様も見習うべきですよ』
自分自身を他人事のように語る、不思議な口ぶり。
四種族との宴会で、
酒を酌み交わしていたという話。
四種族それぞれのお酒の好みを、
まるで昨日聞いたことのように話したこと。
そして。
『昔は男も女も、みんな聖者だったみたいだね』
『当時も女性の聖職者は一応いたね』
『でも、今ほど発言権は強くなかったのかな』
三千年前の社会情勢を、
まるでその時代を見てきたかのように語ったこと。
(偶然にしては……)
(少し多すぎます)
ソフィアは胸へ手を当てた。
(リアネさん……)
(あなたは一体、何者なのでしょう)
ふと、
一つの考えが頭をよぎる。
(まさか……)
しかし、
すぐに首を横へ振った。
(いえいえ)
(さすがに、そんなことあるはずありません)
(何を考えているのでしょう、私は)
思わず苦笑する。
(前例を知っていますが……)
(まあ、偶然でしょう)
そして、
もう一つの答えへと思い至る。
(リアネさんは)
(エリアネ様を心から尊敬しておられます)
(非常に熱心で、教養のあるお方ですから)
(知っていても不思議ではありませんね)
それが、
一番自然な答えだった。
それでも。
胸の奥に残る小さな違和感だけは、
最後まで消えることはなかった。
リアネという少女への興味は、
静かに、
しかし確実に大きくなっていくのだった。




