第27話 友情
懇親会が終わる頃には、
先ほどまでの騒動が嘘のように、会場には穏やかな空気が戻っていた。
各国の使節団も満足そうな表情で帰路につき、
ベル商会の店員たちも後片付けに追われている。
リアネも空になった酒樽の片付けを手伝い、
ようやく一息ついた。
その時だった。
「リアネさん」
振り返ると、
ソフィアが静かに歩み寄ってくる。
そして。
深々と頭を下げた。
「本日は、本当にありがとうございました」
「リアネさんのおかげで助かりました」
リアネは慌てて両手を振る。
「だ、大聖女様!」
「頭を上げてください!」
しかし、
ソフィアはなおも頭を下げたままだった。
「教会を代表して、お礼を申し上げます」
「もしリアネさんがいらっしゃらなければ、懇親会はどうなっていたか分かりません」
「本当にありがとうございました」
リアネは困ったように笑い、
そっとソフィアの肩へ手を添える。
「だから、頭を上げてくださいって」
「私たち、お友達じゃないですか」
ソフィアはゆっくりと顔を上げた。
リアネは照れくさそうに笑う。
「困った時はお互い様ですよ」
「今日は私が助けましたけど」
「今度は私が困ったら、ソフィアさんが助けてください」
「それでいいじゃないですか」
ソフィアは少し目を丸くした後、
ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「……はい」
「ありがとうございます」
その笑顔は、
大聖女として人々へ向けるものではなく、
一人の友人へ向ける優しい微笑みだった。
リアネもつられて笑う。
「今日は色々ありましたね」
「そうですね」
ソフィアも小さく笑った。
「ですが、とても忘れられない一日になりました」
二人は並んで夜空を見上げる。
満天の星が、
静かに王都を照らしていた。
大聖女と商家の娘。
身分も立場も違う二人だったが、
この日、
その距離はまた少しだけ近づいていた。




