第22話 懇親会
エリアネ大祭前夜。
リリア王国王城では、
四種族友好大祭の開催を祝う懇親会が開かれていた。
人族。
エルフ族。
ドワーフ族。
そして竜族。
各国の王侯貴族や使節団が一堂に会し、
明日から始まる祭典の成功と、四種族の友好を願う伝統ある宴である。
今年、竜族代表として訪れたのは、
白竜皇国アルカ=ヴェルの使節団だった。
会場には豪華な料理が並び、
各国自慢の酒樽が飾られている。
ベル商会の支援もあり、
最高級のおもてなしが用意されていた。
リアネもベル商会代表として、
ソフィアは教会代表として出席している。
開宴を待つ間、
リアネは目の前に置かれた葡萄酒を見つめ、
嬉しそうに頬を緩めていた。
「葡萄酒だぁ……」
思わず声が漏れる。
その様子を見て、
ソフィアがくすりと笑った。
「お好きなのですか?」
「大好きです!」
リアネは満面の笑みで頷く。
「今年やっと成人したので!」
「今日が人生初の本格的な葡萄酒なんですよ!」
「しかも!」
「ローズフィールド王国産ですよ!」
興奮気味に杯を見つめる。
「今回取り寄せたのは、最高級の葡萄酒なんです!」
「こんなの普通じゃなかなか飲めません!」
「もう楽しみで仕方なくて!」
ソフィアは少し困ったように微笑んだ。
「私は、お酒ではなく林檎ジュースですが」
リアネは思わず目を丸くする。
「林檎ジュースですか?」
「はい」
「一応、聖職者ですので」
「それに、お酒の匂いが少し苦手なのです」
そう言って、
ソフィアは自分の杯を見せた。
中には透き通った黄金色の林檎ジュースが注がれている。
「えぇっ!?」
リアネは思わず声を上げた。
「人生、損してますね!」
ソフィアは目をぱちぱちと瞬かせる。
「そうなのでしょうか?」
「そうですよ!」
「美味しいお料理に、美味しいお酒!」
「これ以上の幸せって、なかなかありませんよ!」
力説するリアネに、
ソフィアは思わず吹き出した。
「ふふっ」
「そこまで仰るなら」
「いつか好きになれる日が来るのでしょうか」
「もちろんです!」
「その時は、おすすめのお酒をいっぱいご紹介しますね!」
「ありがとうございます」
「ですが、その前にお酒の匂いへ慣れるところから始めないといけませんね」
「確かに!」
二人は顔を見合わせ、
思わず笑い合った。
その時。
壇上へ一人の神官が姿を現す。
リリア教会で本日の幹事を務める神官だった。
神官は静かに一礼した。
「皆様、本日はお忙しい中、四種族友好懇親会へご臨席いただき、誠にありがとうございます」
「本日の乾杯のお飲み物は、ローズフィールド王国産の葡萄酒をご用意いたしました」
「お料理は、リリア王国自慢の料理人たちが腕によりをかけてお作りしております」
「どうぞ心ゆくまで、四種族の親睦を深めていただければ幸いです」
神官は杯を掲げる。
「それでは」
「四種族の友好と、エリアネ大祭の成功を願って――」
「乾杯!」
「乾杯!」
会場中で一斉に杯が掲げられた。
リアネも笑顔で杯を手に取り、
待ちに待った人生初の最高級葡萄酒を口へ運ぶ。
「いただきま――」
その瞬間だった。




