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友達を作っていただけなのに、三千年後には初代大聖女と呼ばれていました!?  作者: Atelier Lotus


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第20話 鍛冶屋と教会

 翌日。


 リアネとソフィアは、祭典準備の挨拶回りを続けていた。


 最初に訪れたのは、


 王都の鍛冶屋だった。


 工房の中では、


 カン、カン、カン――。


 力強い槌音が絶え間なく響いている。


 祭壇へ飾られる燭台。


 儀式用の香炉。


 四種族友好の紋章が刻まれた祭具。


 職人たちは汗を流しながら、一心不乱に槌を振るっていた。


 リアネは工房へ入るなり笑顔で声を掛ける。


「親方!」


「今年もめっちゃいい仕事してますね!」


 親方は金槌を肩へ担ぎ、豪快に笑った。


「はははっ!」


「当たり前だ!」


「年に一度の大仕事だからな!」


 リアネはベル商会の店員から木箱を受け取る。


「皆さんの分、飲み物を持ってきました!」


「冷たい果実水とお茶です!」


 職人たちの表情が一気に明るくなる。


「おお!」


「ちょうど欲しかったんだ!」


「ありがとう!」


「助かるよ!」


 リアネは嬉しそうに笑った。


「無理しすぎないでくださいね」


「祭典まで、あと少しですから」


 親方は果実水を一口飲み、


 満足そうに息を吐く。


「ぷはぁ!」


「生き返るな!」


「よーし!」


「もうひと踏ん張りするか!」


 工房中へ笑い声が広がった。


 ◇


 続いて二人は教会を訪れた。


 ベル商会の荷馬車から、


 店員たちが次々と荷物を運び込んでいく。


 食料。


 日用品。


 そして、


 祭壇を彩る色とりどりの花々。


 白百合。


 マーガレット。


 カスミソウ。


 祭典を迎える教会を、美しく飾るための花束だった。


 神官たちは笑顔で迎える。


「リアネ様」


「今年もありがとうございます」


 リアネも深く一礼した。


「こちらこそ」


「いつも孤児院や困っている方々を支えてくださって、本当にありがとうございます」


 神官は花束を優しく受け取りながら微笑む。


「毎年、このお花を楽しみにしている巡礼者の方が大勢いらっしゃるのです」


「祭壇が華やぐと、皆様も自然と笑顔になります」


 リアネは嬉しそうに頷いた。


「お花を見ると心が明るくなりますから」


「少しでも皆さんに笑顔になっていただけたら嬉しいです」


 神官は穏やかに頷く。


「私たちだけでは、とてもここまでできません」


「ベル商会の皆様のお力添えがあるからこそです」


 リアネは首を横へ振った。


「そんなことありません」


「商会だけでも駄目ですし」


「教会だけでも駄目です」


「皆さんが頑張ってくださるから、私たちも頑張れるんです」


 神官たちは優しく笑みを交わした。


 鍛冶屋でも。


 教会でも。


 リアネは相手の立場によって態度を変えることはなかった。


 職人にも。


 神官にも。


 誰に対しても自然に笑い、


 心から感謝を伝える。


 一方。


 その姿を見つめるソフィアは、


 静かに胸の内で呟く。


(この方は……)


(身分で人を見ていない)


 鍛冶屋では職人へ。


 教会では神官へ。


 市場では商人へ。


 港では港湾労働者へ。


 孤児院では子どもたちへ。


 誰に対しても分け隔てなく接する。


 けれど。


 皆に同じ接し方をしているわけではない。


 職人とは豪快に笑い合い。


 神官とは礼節をもって語り。


 子どもたちとは一緒になって遊び。


 年配の方には自然と手を差し伸べる。


(その人を見ている)


(その人の性格を見て)


(その人に合った距離感で接している)


 しかも、


 それを意識している様子はない。


 呼吸をするように。


 あまりにも自然に。


(だから皆さんは)


(リアネさんを慕っているのですね)


 ソフィアは優しく微笑んだ。


 リアネという少女は、


 誰かに優しくしようとしているのではない。


 それが、


 この人にとっての当たり前なのだ。


 その当たり前こそが、


 何より尊いものなのだと、


 ソフィアは静かに感じていた。

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