第19話 孤児院
次に二人が訪れたのは、
王都リリアにある孤児院だった。
ベル商会の荷馬車には、
食料。
日用品。
衣類。
祭典用のお菓子が積み込まれている。
毎年この時期になると、
ベル商会は孤児院へ寄付を行っていた。
門をくぐった瞬間だった。
「あっ!」
「リアネお姉ちゃんだ!」
「ほんとだ!」
「来るの遅いよー!」
「寂しかったー!」
子どもたちが一斉に駆け寄ってくる。
リアネは苦笑しながら一人ひとりの頭を優しく撫でた。
「ごめんね」
「祭典の準備で色々忙しかったの」
すると、
子どもたちはすぐに笑顔になる。
「そんなことより!」
「遊んで!」
「遊んで!」
「今日は何して遊ぶ?」
リアネは笑いながら尋ねた。
「何して遊びたい?」
「鬼ごっこ!」
「かくれんぼ!」
「縄跳びがいい!」
「私はお絵描き!」
次々と飛んでくる声。
「分かった分かった!」
「順番に遊ぼうね!」
「やったー!」
子どもたちは歓声を上げる。
リアネは子どもたち一人ひとりの名前を呼びながら、
「ルーク、転んじゃ駄目だよ!」
「ミーナ、お靴脱げてるよ!」
「ココ、そんなに走ったら疲れちゃうよ!」
自然に声を掛けていく。
その様子を見たソフィアは少し驚いた。
「リアネさん」
「子どもたち全員のお名前を覚えていらっしゃるのですか?」
「はい!」
「覚えてますよ?」
「大事なお友達ですから!」
あまりにも自然な返事だった。
ソフィアは目を丸くする。
しばらくすると、
ソフィアも子どもたちへ声を掛けられた。
「お姉ちゃんも一緒に遊ぼ!」
「えっ?」
「わ、私もですか?」
「うん!」
「一緒に鬼ごっこ!」
ソフィアは少し戸惑いながらも微笑んだ。
「ふふっ」
「では、ご一緒します」
鬼ごっこ。
かくれんぼ。
縄跳び。
気が付けば、
ソフィアも子どもたちと一緒になって笑っていた。
夕方。
帰り道。
夕焼けに染まる街を歩きながら、
ソフィアが静かに口を開く。
「リアネさん」
「はい?」
「本当に優しい方ですね」
リアネはきょとんと首を傾げた。
「そうですか?」
「はい」
「子どもたちのお名前を全員覚えていて」
「忙しい中でも必ず会いに来る」
「そして、一緒になって遊んで差し上げる」
「なかなかできることではありません」
リアネは照れくさそうに笑う。
「そんな大したことじゃないですよ」
「普通です」
「友達なんですから」
その一言に、
ソフィアは思わず足を止めた。
「友達……ですか」
「はい!」
「年齢なんて関係ありません」
「友達は友達です!」
そう言って笑うリアネは、
あまりにも自然だった。
ソフィアは胸の奥が温かくなるのを感じる。
(この方にとっては)
(本当に”普通”なのですね)
誰にでも手を差し伸べ。
誰とでも笑い合い。
身分も年齢も関係なく、
自然と友達になってしまう。
ソフィアは優しく微笑んだ。
(だから皆さんに慕われるのですね)
リアネはそんなことなど気付かず、
「今日は楽しかったですね!」
と、いつものように笑うのだった。




