第14話 エリアネ大祭
王都リリア。
エリアネ大祭を目前に控え、
街は一年で最も賑わう季節を迎えていた。
大通りには色鮮やかな旗が飾られ、
屋台が立ち並ぶ。
香ばしい料理の匂い。
子どもたちの笑い声。
巡礼者。
各国から訪れた商人。
長い耳を持つエルフ。
屈強なドワーフ。
人の姿へ変身した竜族。
普段は不可侵・不干渉を貫く四種族も、
この祭典だけは一堂に会する。
まさに世界最大の祭典だった。
「去年も素晴らしいお祭りでしたが」
「今年も活気がありますね」
ソフィアは街並みを眺めながら微笑む。
「はい!」
「私、このお祭りが大好きなんです!」
二人はゆっくりと街を歩く。
祭壇では最後の飾り付けが進み、
子どもたちは完成を待ちきれない様子ではしゃいでいた。
しばらく歩いたところで、
ソフィアが優しく尋ねる。
「リアネ様」
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「はい?」
「リアネ様は」
「エリアネ様のどのようなところを尊敬していらっしゃるのですか?」
リアネは少し考え、
笑顔で答えた。
「全部です!」
「全部?」
「はい!」
「種族なんて関係なく友達になったところ」
「王様だからとか」
「偉い人だからとか」
「そんなこと関係なく仲良くなったところ」
「四種族みんなを仲良くしたところ」
「本当にすごいなぁって思います」
「私もそんな人になりたいんです」
ソフィアは静かに頷いた。
「私も同じです」
「エリアネ様は」
「私にとっても憧れのお方です」
「種族という壁を越え」
「世界で初めて四種族の友好を築かれました」
「私には、とても真似のできない偉業です」
「心から尊敬しております」
リアネは思わず照れ笑いを浮かべる。
「いやぁ」
「照れますね」
「それほどでもないですよー」
沈黙。
ソフィアがきょとんと首を傾げた。
「……え?」
「それほどでも?」
「…………」
リアネの笑顔が固まる。
(しまったぁぁぁ!!)
慌てて両手をぶんぶん振る。
「あっ!」
「違います違います!」
「それほどすごいなぁって!」
「改めて思ったんですよ!」
「ですよね!」
「えへへ……」
乾いた笑いが漏れる。
ソフィアは少し不思議そうな表情を浮かべたものの、
やがて優しく微笑んだ。
「ふふっ」
「そういう意味でしたか」
「はい!」
「もちろんです!」
(危なかったぁぁぁ!)
(危うく自分から正体バラすところだったよぉぉぉ!!)
胸を撫で下ろすリアネ。
その時だった。
広場では、
人族の子どもと、
エルフの子ども、
ドワーフの子ども、
人の姿になった幼い竜族が、
一緒になって楽しそうに遊んでいた。
ソフィアはその光景を見つめ、
静かに微笑む。
「三千年経った今でも」
「エリアネ様が遺してくださった友好は」
「こうして世界中の人々を笑顔にしているのですね」
リアネは思わず足を止めた。
目の前には、
自分が三千年前に夢見た景色が広がっている。
(……そっか)
(ちゃんと続いてたんだ)
胸の奥が、
ほんの少しだけ温かくなる。
しかし次の瞬間。
(いやいや!)
(感動してる場合じゃない!)
(本人だってバレたら全部終わるからね!?)
リアネは慌てて首を横へ振る。
そんな彼女を見て、
ソフィアは不思議そうに首を傾げるのだった。




